パワハラ、モラハラ、そしてスメハラ。これらはキャリアを重ねたミドル世代以降の問題だと思われがちである。ハラスメントは力の上下関係がある場所で起きやすいからだ。しかし、この中に例外が紛れていることに気付くだろうか。そう、「スメハラ」である。

「ニオイ=加齢臭」という先入観があって、若年層はどこかニオイ問題を他人事と思っているかもしれない。しかし、これからのジメジメした時季には汗もかきやすく、そこにタバコ臭などが加わった日には、もはや年齢など関係ない。確実に周囲を不快にするし、大事な商談だってブチ壊しになりかねない。

緊急事態宣言が解除され、オンライン会議ではなく、実際に取引先に訪問する機会も出てくるだろう。梅雨を前に、今一度「ニオイ」にまつわる衝撃的な事実をおさらいしよう。特に営業マンは必見だ。

初対面の印象を悪くする要因、1位は「不快なニオイ」

ビジネスパーソンであれば「第一印象は数秒で決まる」という話は耳にしたことがあるだろう。多くの関連書籍も出ており、今やビジネスの常識と言っていい。そして心理学的には、第一印象はその後の評価や好感度に大きな影響を与え、その印象を変えるのは容易ではないという。

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資生堂が集計したアンケートによると、「初対面の印象を良くする要因」として、「表情が明るい」(75%)、「服装に清潔感がある」(47%)、「言葉遣いが丁寧である」(47%)といった要素が上位に挙がっている。どれも商談へ向かう上では最低限のマナーだ。このあたりはほとんどのビジネスパーソンが意識しているだろう。

一方で、「初対面の印象を悪くする要因」として挙がったのは、「不快なニオイがする」(66%)がトップに君臨。3人に2人が深いなニオイと第一印象を結びつけていることがわかる。

ちなみに、その後は「言葉遣いが悪い」(54%)、「髪がぼさぼさである」(38%)と続くが、これらはさすがにマナーとしてクリアしている人がほとんどだと思われる。それに比べて冒頭で述べたよう、ニオイについて無意識な人も少なくないはずだ。ニオイ問題をめぐっては、自分と他人の間には大きなギャップがあると考えたほうがいい。

「不快なニオイ」を感じた場合、74%が「態度や行動に出てしまう」

加えて、資生堂のアンケートによると、90%以上の人が「不快なニオイ」の印象が2回目以降も続くと回答している。これは先ほど記したように、 第一印象がその後の評価や好感度に大きな影響を与えるという一般論をまさに証明する結果である。

ちなみに、「よい香り」の印象が2回目以降も続くと回答したのは73%に留まるというのも興味深い。要するに、不快なニオイのほうが相手の記憶に残りやすく、リカバリーが効きにくいということだ。なんともシビアな現実が浮き彫りになったものである。

ニオイの弊害はそれだけではない。初対面の相手から「不快なニオイ」を感じた場合、「態度や行動に出てしまう」という人がなんと74%にも上ることもわかった。

ここで言う「態度や行動」とは、例えば「笑顔がこわばってしまう」「話に集中できなくなってしまう」などなど。つまり、不快なニオイは、営業先での商談などにはまさにダイレクトに悪影響を与えてしまうのである。

ただ、よく考えてみればそれもそうだろう。営業先で少し表情や言動がぎこちなかったとしても、そもそも商談とは多少なりとも緊張が伴うものだし、その程度のことは相手も察してくれるだろう。誤解を恐れずに言えば、そんなことは大した問題ではない。

しかし、営業マンから不快なニオイがただよって来たとしたら、それは緊張うんぬんの問題ではなく、単なるケア不足。エチケットをわきまえていない人間として、社会人失格の烙印を押されてしまうのもやむなしである。

このほか、マンダムの調査によると、不快なニオイがする取引先の人とは「一緒に仕事をしたくない」と答えた人が32.9%にも上るという。残念ながら、「ニオイに気が回らないくらい、仕事に一生懸命なんだと思う」と考えてくれる聖人のような人は5.3%しかいないので、淡い期待などゆめゆめ抱いてはいけない。

特に喫煙者は細心の注意を

さて、ニオイの原因で真っ先に思い浮かぶのは、やはり「汗」だろう。

しかし、実は汗そのものは基本的に無臭だと言われている。悪臭の原因にはニオイ物質を生み出す細菌などが挙げられているが、このあたりは個人差もあるので個別の対策が求められる。他方、喫煙者に関しては一様に、タバコを要因とする体臭の悪化に見舞われている可能性がある。

まず、言うまでもなく、喫煙で身体にまとわりついたタバコ臭は不快なニオイの代表例だ。喫煙者は気付きにくいだろうが、タバコ臭には、腐乱臭の硫化水素、尿の刺激臭であるアンモニアを始め、数千もの悪臭成分が含まれているとされている。営業先を訪れる予定がある場合はタバコは吸わないようにしたほうがいい。どうしてもという場合は、紙巻と比較しニオイの少ない低温加熱式のタバコにするなどの配慮が必要だ。

また、喫煙によって体内の活性酸素が皮脂を酸化させ、体臭の原因となる「過酸化脂質」を作り出すと言われている。喫煙による肝機能の低下が体臭や口臭を引き起こしているケースも往々にしてあるようだ。不名誉なことに、喫煙者であるというだけで、スメハラの加害者たるポテンシャルは十分に備えてしまっているのだ。

せっかく身だしなみを整えても、不快なニオイを発していては台無し。まさに「身から出た錆」で泣きを見ないよう、明日から意識を高めてみよう。


【資生堂の調査概要】
調査期間:2017年2月13日~14日
調査対象:20~40代 有職男女500名(性別均等割付)
調査方法:インターネット調査

【マンダムの調査概要】
調査期間:2017年5月
調査対象:東京、大阪で働く25~49歳の男女1,028名(男性525名、女性503名)
調査方法:インターネット調査