なぜか“母親”が2人いる大家族…父1人に母が2人、そして子供が6人という家族の生活に密着したドキュメンタリーが、フジテレビ『ザ・ノンフィクション』で、『家族のカタチ ~ふたりのお母さんがいる家~』と題し、31日(13:40~ ※通常より20分繰り上げ、関東ローカル)に放送される。

芸能人の不倫が大きなスキャンダルとして取り上げられる昨今、「どうしたらそんな生活ができるの?」「女同士の嫉妬はないの?」「子供たちはどう思ってるの?」…などなど、次々に疑問がわいてくるが、実際にその姿を見てきた番組スタッフは何を感じたのか。オルタスジャパンの榎本雪子ディレクターに、話を聞いた――。

  • (左から)ゆかりさん、裕子さん、嘉克さん (C)フジテレビ

    (左から)ゆかりさん、裕子さん、嘉克さん (C)フジテレビ

■ポリアモリーの中でも次元が違う

近年、マイノリティーだったLGBTが日本でも浸透してきたが、同じように“好き”のあり方をめぐって「ポリアモリー」という言葉がある。日本語で「複数愛」と置き換えられ、男性1人&女性1人のカップルや夫婦が当たり前という考え方に対し、1人が複数の人を好きになることを肯定する人たちだ。

「“好きの質”っていろいろあるんじゃないかと思ったんです。広い意味では、恋人がいてもずっと幼なじみだった異性が好きじゃなくなるわけじゃないし、私自身、恋愛をしようと両親に対する“愛”は変わらない。そういうことから、ポリアモリーの人たちに興味を持ちました」という榎本D(以下同)。

まずは、東京にあるポリアモリーのサークルを調べていた中、「私の先輩が、今回取材したお父さんの西山嘉克さんを知っていて、つないでもらったのが事の発端です」と経緯を明かすが、さまざまなポリアモリーの人々をリサーチする中で、西山さんを取材対象に決めた理由は「次元の違い」だという。

「自分がポリアモリーであることをオープンにしていない人が多いんですね。それと、お子さんの生まれた夫婦が、男女の関係からお父さんとお母さんの関係になってしまい、お母さんの新しい彼氏が居候してるというケースもあったんですけど、西山さんの家は、両方の奥さんの子供たちを自分の戸籍に入れて、1つ屋根の下で暮らして、ダントツに“地に足がついている”感じがしたんです。何度も伺ったんですが、お父さん1人、お母さん1人に子供がいるっていうのが幸せな形だと思われているけど、そうじゃなくても彼らが幸せなら、他人がとやかく言うことではないと思って。そんな感覚になったのは初めてでした」

■きっかけは衝撃の告白「好きになってしまった」

この西山家が形成された経緯は、嘉克さんが最初の妻であるゆかりさんに、結婚からわずか8カ月後、仕事の助手である裕子さんのことも「好きになってしまった」と衝撃の告白をしたのがきっかけだ。

それだけに、最初は「ゆかりさんが、今の状況を受け入れているというのが信じられないし、『絶対我慢しているはずだ』という先入観で西山家に行ったんです」というが、実際に対面して取材を始めると、「ゆかりさんは達観してるというか、そこの次元にいないんです」と感じたそう。

「『本当に嫉妬はないんですか?』って何回も聞くと、『ないですよ』って言うんですけど、それが無理してる感じがしないんです。もうゆかりさんは、“西山家”として生きていくという考え。今の形になるまで、話し合いやケンカはしたそうなんですけど、子供たちの存在が大きいんだと思います。自宅出産で、お互いのお産を手伝っていることもあって、自分が迷ったり後悔したりしたら、好きな人の相手である裕子さんが生んだ命に対して失礼だという気持ちを持っているんです」

また、嘉克さんが裕子さんとまだ男女の関係にならず、好きになってしまった時点で、率直な気持ちをゆかりさんに打ち明けたことも大きかったようだ。

「ゆかりさんが『自分の気持ちを隠すよりも、言って相談してくれたほうが、自分の理想の夫婦の形』ということを言っていたんです。私は結婚していませんが、今回70時間くらい撮影しても正直、ゆかりさんには今でも共感できないです…(笑)」