――思い出に残るスタッフさんのお話を聞かせてください。

亡くなられた長石多可男監督もユニークな方で、印象に残っています。河原で撮影しているとき、いきなり助監督に「おーい、そこのザリガニ、ツケといて!」なんて叫んだんですが、最初は何を言ってるかわからなくて……。よく聞いてみると、ザリガニを"寄り"で撮りたいから、逃げないように瞬間接着剤で"着けといて"って言ってたんです(笑)。あと、撮影もけっこう進んでいる頃なのに、ファンガイアのことをずっと「ガンファイア」って間違えていたりして。カメラマンのいのくま(まさお)さんは慣れているから「ああ、ファンガイアのことね」なんて言ってスルーしてました。

そんな長石さんですが、画作りは絶品の腕前で、しかも桜がすごくキレイな日に当たったりして、"持ってるな~"なんて感心しました。さっきのザリガニもそうですけど、動物を撮るのも大好きで、「あそこの鴨、撮って! 撮って! ああ、鴨(向こうに)行っちゃった~!」とか(笑)、熱っぽくやられていました。田崎さん、石田さん、長石さんといった"名人"の方々と一緒に仕事ができたのは、自分にとって得がたい財産になっています。

――音也はゆりに惚れたことにより、彼女が属する「素晴らしき青空の会」にも深く関わっていきますが、そこで彼のライバル的存在になるのが、"野獣"のムード漂わせるハードボイルドな男・次狼(演:松田賢二)でした。中盤ではゆりをめぐって音也と次狼のいがみあいが時にコミカルに、時にシリアスに描かれて好評でした。

松田さんは最高でしたね! 松田さんとユウちゃんがいてくれたおかげで、音也のキャラクターが深まり、魅力を増していきました。松田さんの次狼とは最初こそ対立していましたが、やがて友情で結ばれるようになり、最後は息子(渡)の助けになってほしいという音也の"思い"を託すんです。最後に2人が交わした会話は最高ですよね。

――武田さん、高橋さん、松田さんたち「過去編」チームは、瀬戸さん、加藤さん、柳沢さんの「現代編」チームの芝居について、意識していましたか。

特に意識をしていたわけではありませんが、慶祐(名護)には「俺たち過去チームは勝手に面白くやっているんだけど、康史(渡)は立場的にハジけたことがやりにくいから、頼むぞ!」ってエールを贈ったことがありました。

――夏の映画『劇場版仮面ライダーキバ 魔界城の王』や、テレビシリーズ第44話などで渡と音也が対面するシーンがありますが、未来の"息子"役・瀬戸さんとの共演についてはどのような思いで取り組まれましたか。

音也はまだ父親にもなっていないのに、渡に対してやたらと父親ぶっていて、そのツッコミどころ満載感が好きです(笑)。現代編の時点で音也が死んでいることがわかっているので、過去編のラストは悲壮なものになると予測できますよね。だから、渡と音也の親子共演についても、どこか"切なさ"が感じられるんです。第46話で渡と音也が"お別れ"するシーンでは康史も僕も気持ちが入り込んで、本当の親子になったかのような、とてもいいシーンになりました。

――劇場版で武田さんは、マスクだけを解除した状態でイクサのスーツを身に着けていましたが、このときのお話をぜひ聞かせてください。

とにかく動きづらくて大変でした。あのスーツを着て、岡元次郎さんがものすごいパフォーマンスを見せていたのは、本当に凄いことだと改めて思いましたね。爆発を背にしてキバの高岩成二さんと並んで走るシーンがありましたが、リハーサルのときに成二さんが僕のことを気遣って「お前のスピードに合わせるよ」と言ってくれたのに、いざ本番で後ろからドカーン!と大爆発したとたん、ビックリして思わず全力疾走になってしまい、成二さんには苦労をかけました。いい経験にはなりましたが、信じられないくらい怖かった! 自分でスーツを着てみて、成二さんや次郎さんたちがものすごい身体能力でヒーローを演じられている"凄み"を実感しました。