誰にでも、仕事をしているとき強い不安にとらわれてしまうことがあります。大きなミスをしてしまったり、周囲の期待にうまく応えられなかったり、責任の重さをプレッシャーに感じて、本来の力を出せなくなることもあるでしょう。

  • カリスマ心理カウンセラーが教える「不安」を力に変える方法。/心理カウンセラー・中島輝

そんなとき感じる不安に押しつぶされずに、うまく自分の力へと変えていく方法はあるのでしょうか? 自己肯定感の第一人者である心理カウンセラーの中島輝さんに聞きました。

不安と向き合うからエネルギーに変えられる

「仕事をうまく進めたいのに、なにから手をつけていいのかわからない」「上司や先輩との人間関係がうまくいかない」「すぐにプレッシャーを感じる自分ってメンタルが弱い?」多かれ少なかれ、多くのビジネスパーソンはそんな悩みや不安を抱えて過ごしています。

ただ、こんなとき、よく「悩んでいないでとにかく行動しよう!」などといわれませんか? たしかに、ネガティブな感情にとらわれていたら、不安はますます大きくなるばかり。でも、ポジティブになれといわれても、「急にできないよ……」という人もいると思います。

じつは、世間でよく見られる「ポジティブ信仰」には大きな誤解があります。なぜなら、どんなこともポジティブに考えるような極端な見方をしていると、「自分がいま抱えている不安」や「うまくいかなかったこと」に対して、ていねいに向き合うことができないからです。

たとえば、コップに半分入った水を「半分しか水が入っていない」と考えるよりも、「半分も水が入っている」とポジティブにとらえるほうが、一般的にはいいことだとされている。でも、この解釈を問うた経営学者ピーター・ドラッカーはこのように語っているのです。

世の中の認識が「半分入っている」から「半分空である」に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる。

そう、彼は「空の部分をどう使うか」と考えているのです。先の例に置き換えると、「自分がいま抱えている不安」や「うまくいっていない自分」を認識するからこそ、プラスのエネルギーに変えて、自分にイノベーションを起こすことができると見ることができます。

いま「自分が抱えている不安」と向き合い、ポジティブ、ネガティブ両面から検討する。そして、そこから行動を加速させていけるマインドを身につけることが大切なのです。

自信がなくなったら「チャンス」ととらえる

人が不安を持つのには、ふたつの大きな理由があります。ひとつめは、「過去の記憶に引っ張られてしまう」こと。「あのとき失敗した」「前はこうだった」。そんな経験の記憶に基づいて考えてしまうから、気持ちやものごとのとらえ方がネガティブになってしまうのです。

ふたつめは、「他人と比較してしまう」こと。「あの人よりも自分はできない」と思うと、自信がなくなって、ますます消極的な感情や考え方につながっていく。これには、過去の自分と比べている場合もよくあります。

不安は次の行動を消極的にさせます。なぜなら、自分が「無能」だと思われたくないために、あらかじめ自分に「言い訳」を用意し、ものごとに向き合うのを避けるようになるからです。誰でも、「昨日寝てないんだよ」「急に上司から別案件を押し込まれてさー」などと、口にしたことがあると思いますが、結果、行動が先延ばしになり、ますます悪循環に陥ってしまうのです。

大切なのは、「ものごとを達成するメカニズム」を知ることです。失敗は怖いしできれば避けたい。でも、行動しなければ、次のものごと自体が起こらないし、そうなれば原理的になにを達成することもできません。

そうであれば、行動するときに、まず「失敗してもほとんどの場合大したことは起こらない」と考えることが有効です。つまり、「怖い」「避けたい」という不安を感じたまま、むやみに行動するのではなく、ポジティブな感情やプラス思考を持ったときにはじめて効果的な行動ができるということ。

わたしの場合は、「自信がなくなったらチャンス!」と思うようにしています。

「自分が変えられること」「自分にいまできること」に集中する

不安にとらわれてしまうと自信が持てなくなって、ものごとを決断することが難しくなります。そこで、不安をある程度解消したあとは、「自分にとって最善の行動」をすることに集中してください。

どうすればいいのか? それは、「変えられるもの」と「変えられないもの」をタスク分けすることです。たとえば、ある仕事の案件で不安を抱えていても、100%自分だけの責任という仕事はほとんどありません。大抵の場合は、「自分の課題」「相手の課題」「共通の課題」というように、課題を分けられるはず。

たとえ面と向かって上司や先輩に指摘できなくても、少なくとも「自分の課題にさえ責任を持てばいい」と考えれば、不安は間違いなく和らいでいきます。すべてを自分で抱え、不安を増幅させることはないのです。

これは、心理学者アルフレッド・アドラーの理論のひとつで、「課題の分離」と呼ばれています。責任の所在をはっきりさせることで、「自分がやるべきこと」「自分がいまできること」を決断し、それに集中することができる。アドラーはこんなこともいっています。

まわりの顔色に合わせてものごとを選択する姿勢は、人生の責任放棄である。

ちょっと厳しい言い方かもしれませんが、変えられるものと変えられないものをしっかり分けることで、意思決定の力が身につき、自分の夢に向かって生きていくことができます。

いまは仕事だけでなく、新型コロナウイルスの流行によって、大きな不安を抱える人もいることでしょう。でも、これだって原理原則は同じこと。新型コロナウイルスは、「自分の力では変えられないこと」です。その事実をしっかり見据えたうえで、「自分が変えられること」に集中し、自分の未来を描いていく姿勢が大切です。

誰かにコントロールされるのではなく、不安やピンチのなかでも、自分で自分をコントロールしていく――。そんなセルフコントロールの力を若いうちに身につけておくと、将来の可能性がぐんと広がっていくはずです。

構成/岩川悟(slipstream) 取材・文/辻本圭介 写真/玉井美世子

中島輝(なかしまてる)

心理カウンセラー、メンタルコーチ、トリエ代表、肯定心理学協会代表。5歳で里親の夜逃げという喪失体験をし、9歳ごろから、HSP、双極性障害、パニック障害、統合失調症、強迫性障害、不安神経症、潰瘍性大腸炎、斜視、過呼吸、認知症、円形脱毛症に苦しむ。25歳で背負った巨額の借金がきっかけでパニック障害と過呼吸発作が悪化。10年間実家に引きこもり、自殺未遂を繰り返すような困難な精神状況のなか、独学で学んだセラピー・カウンセリング・コーチングを実践し続ける。10年後、「恩師の死」がきっかけとなり35歳で症状を克服。その後、30年間の人体実験と独学で習得したメソッドを用いたカウンセリングとコーチングを24時間365日10年間実践。Jリーガー、上場企業の経営者など15,000名を超えるクライアントにカウンセリングを行い、回復率95%、6カ月800人以上の予約待ちに。「奇跡の心理カウンセラー」と呼ばれ上場企業の研修オファーも殺到した。現在は、ニューライフスタイルを提案する資格認定団体「トリエ」を主催し、120以上のオリジナル講座を開発。

著書に『自己肯定感の教科書』『自己肯定感ノート』(ともにSBクリエイティブ)、『エマソン 自分を信じ抜く100の言葉』(朝日新聞出版)など多数。



『1分自己肯定感』(2020年:マガジンハウス)