悩めるZ世代(何それ?)のみなさん!「天職探し」はやめて、小さな一歩から始めてみない?

「Z世代」。それは社会人デビューから数年間を疾走中のあなたたちのこと。誰が決めたのかZ世代とは、X世代(1960年~1974年生まれ)、Y世代(1975年~1995年生まれ)に次ぐ1996年~2012年生まれのデジタル新世代を指す。

  • 「自分は何者か」にこだわる新世代の若者たち。それがZ世代だ(1)

Z世代は「生粋(きっすい)のデジタルネイティブ」と言われ、「ブランドより質」「自分独自のスタイル」にこだわる(らしい)。2020年入社組は波乱の社会人デビューとなったが、やがてくるアフターコロナを生き抜くための処方箋について、ライフシフト研究所所長の豊田義博さんに聞いてみた。

「ビッグになる」から「オンリーワンの自分」へ

No.1じゃなくていい。あなたはもともと特別なOnly oneなのだから。2003年に大ヒットしたあの名曲は、それまでのみんなで競争してリッチになろう!という考え方から、1人ひとりのスタイルや幸せのカタチは違うのだから、それぞれの理想の姿を目指そうよ、という考え方へのシフトを象徴していたのかもしれない。若者文化に詳しいライフシフト研究所所長の豊田さんは次のように説明する。

「1980年代中盤以降の学校教育では、より主体的、創造的な人材を生み出そうと『個性重視』が叫ばれるようになりました。高度成長期やバブル時代には、『ビッグになる』『有名な会社に入る』ということが、個人の成功や幸福感に結びついていましたが、90年代以後になると『個性』という曖昧なもの、他にはない『何者か』になることを、みんなが追い求めるようになりました」

  • 君は何者?Z世代は迷い人

    君は何者?Z世代は迷い人

Z世代のあこがれのヒーロー像って?

これまでビジネス界ではホンダの本田宗一郎(敬称略、以下同)やソニーの盛田昭夫など戦後の立役者がレジェンドとしてリスペクトされてきた。平成時代ならソフトバンクグループの孫正義や楽天の三木谷浩史など、ジャパニーズドリームを叶えた人がビジネス界のヒーローとして名前が挙がるだろう。しかし、Z世代のヒーローはどうだろう?No.1であることや、スケールの大きさを誇るエネルギッシュな人物像ではなさそうだ。自分らしさを大切に、独自の理想を掲げ、社会貢献しつつ、しっかりとした地位を手にした人、そんなヒーロー像が浮かんでこないだろうか。

例えば岩手の気仙沼ニッティング代表取締役の御手洗瑞子(みたらい たまこ)さん。彼女は東京大学出身で、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、ブータンの初代首相の特別研究員(フェロー)を務めた人だ。ところが、御手洗さんは東日本大震災を機にエリートコースを離れ、気仙沼の復興プロジェクトに参加、まだ震災の爪痕が残る気仙沼で1着10数万円もする高級カーディガンを手編みする会社を起業した。

発売後、商品は予約待ちの状況となって、初年度から黒字化を実現する。社会課題に対してユニークな解決方法を提示した御手洗さんは、新しい社会起業家とし若者から絶大な支持を集めた。そんな御手洗さんは、Z世代が理想とする『何者か』を見つけた貴重なケースといえるかもしれない。

人は「個性的でありたい」と願っても個性的にはなれない

「個性的であることがいいことだ」と言われ続けてきたのがZ世代。自分も「何者か」にならなくては、というあせりがあなたにもないだろうか。しかし、個性は自分で意図して創り出せるものでないだろう。豊田さんはこう警告する。

「要領のいい人は『自分はこういう個性があって、それを活かしてこの会社でこうなりたい』という自分なりのビジョンを面接の場で語り、やる気満々の自分を演じることができます。しかし、その結果、自分が語った像に自分自身が縛られることになって、現実とのギャップに悩み、このままでいいのかとドツボにはまりがちです」

SNSの普及が、そうした行き詰まりの状況をさらに深刻にしていると豊田さんは言う。

「同世代で頑張っている人たちの成功体験や、身近な同級生でも最近いい感じで活躍できているといった情報がスマホからダダ洩れになっていて、見たくなくても入ってきてしまう。それが『盛った』情報であることも少なくないのに、自分自身の状況と比較して明らかに『俺ってイケてない…』と悶々とする。それが最近のZ世代の心模様だろうと思います」

情報のシャワーの浴びすぎにご用心!

あなたを取り巻く「情報過多」の状況は、リクルートワークス研究所の報告資料からも明らかだ。下の図は若手社会人の行動と情報についてのリサーチで、行動の量と情報の量を2つの軸に、対象者を4つのグループに分類したもの。通常、人は一定の情報を入手することで次にどう行動すべきかが見えてくる。実際に行動を起こす際には、さらにそのための情報を得ようとする。例えばテレビで旅番組を見ると旅に出たくなり、旅行先を決めたらその計画のためにまた情報を入手する。つまり、情報が増えると行動も増えるというのが通常のパターンだ。

  • 調査の結果

    調査の結果、ファーストキャリア(就職後3年)においては、グループ1は22.4%、グループ2は31.2%、グループ3は42.3%、グループ4は4.1%であることがわかった。出典:リクルートワークス研究所「“ありのまま”と“何者”のはざまで。若者キャリア論2020」

「行動量と情報量が連動している1と3が多くなるのはごく当然ですが、グループ4(行動量が多く、情報量が少ない)が極端に少なく、グループ2(行動量が少なく、情報量が多い)が30%超も存在することが、現在の20代の特徴を表しています。

情報のアンテナは高いが次の一歩がなかなか踏み出せない。人の話やSNSなどを見聞きして焦ることも多く、『ないものねだり』の状況に陥りやすくなる。自分には違う職種が向いていると思いながら日々働き、SNSなどで活躍している同年代の知人に『いいね!』をつけ、モヤモヤしている状況が想像できます」

日々情報のシャワーを浴びすぎて、あなたは何が正解かが見えなくなってしまっていないだろうか。少しでも思い当たる節がある方は、もうちょっとだけ豊田さんのアドバイスに耳を傾けていただきたい。

豊田義博(とよだよしひろ)

ライフシフト・ジャパン株式会社 取締役CRO/ライフシフト研究所 所長。リクルートワークス研究所 特任研究員。20代の就業実態・キャリア観・仕事観、新卒採用・就活、大学時代の経験・学習などの調査研究に携わる。著書に『なぜ若手社員は「指示待ち」を選ぶのか?』(PHP研究所)『若手社員が育たない。』『就活エリートの迷走』(ともにちくま新書)、『「上司」不要論。』(東洋経済新報社)などがある。