「仕事が遅い」「消極的すぎる。やる気を感じられない」「なに考えてるか分からない」……職場でこんなことを言われて悩んでいるとしたら、あるいは、誰にも指摘されていないのに、自分の臆病さ・考えすぎ・口下手を直したいと思っているなら、あなたの性格は"内向型"かもしれません。

今回は内向型が会社でつらくならない手段を紹介します。

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コミュニケーション上手な外向型は評価されやすい

"内向型"とは、自分の感覚や考えにフォーカスしがちな性格のこと。逆に"外向型"は、他人や外の出来事に興味のベクトルを向けます。人にはこうした2つの傾向があると提唱したのは、1920年代の心理学者、カール・ユングです。そして実際に現代科学のニューロイメージングは、脳の反応が両者で異なることを見出しつつあります。

内向型コンサルタント・心理カウンセラーの堤ゆかりさんは、内向型と外向型には「4つの違い」があると説明します。

「それは、『刺激の容量』『元気になる方法』『好きなこと』『情報処理のスピード』です。内向型の場合、少しの刺激で満足したり、休みの日は家でくつろいでいたり、物思いにふける事が好きだったり、頭の中で話をまとめてから発言する傾向にあります」

ビジネスにおいては、こうした内向型の性格は評価されにくいと堤さんは続けます。

「自信に満ちて発言する人。テキパキと行動する人。人脈の広い人。こうした人たちほど、仕事がデキる人と思われますよね。今の社会は、外向的な要素に評価の比重を置いています。正直なところ、私もずっとうらやましいと思っていました。しかし、何よりも気を付けなければいけないのは、外向型の人に比べて、自分はダメだと思い込んでしまうことなんです」

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内向型の良さや強みを生かせる仕事もある

なんて自分は弱気なんだろう。コミュ障な自分が嫌になる。なんて自己否定していると、落ち込んでいくばかり。大事なのは、自分を客観視して、自分の良さを自覚すること。堤さんはそう強調します。

「私自身、接客業で接客をしていた時期は、いろんな人と会話することや臨機応変な対応が苦手で、自分には向いてないと思っていました。でも、いま振り返ると、丁寧に一組一組対応して、じっくり要望を聞いて、それで感謝もされていたんです。『どうせ自分は外向型になれないし……』と思ってばかりいると、自分の強みを見失ってしまうのです」

誰とでも話せること「だけ」がコミュニケーション能力に長けた証拠ではありません。相手の話にじっくり耳を傾け、深く受け止めてから言葉を発することも豊かなコミュニケーション。

学生時代や、会社での意思疎通のやり取りで、そういえばこんなことで評価されたな、という体験を思い出せれば、内向型ならではの自分の強みを自覚することができます。そして、それを発揮できる働き方を選べば、仕事上の悩み苦しみを解消することにつながります。

自分の感性とじっくり向き合える人なら、デザイン職。相手の立場で物事を考えられる人なら、営業職。世間を観察する力があるなら、マーケティング職。リスクを踏まえて現況を分析できるなら、経営企画職。内向型にもさまざまな強みと、それを生かせる仕事があるのです。

会社でつらくならないため

しかし、ずっと「外向型になりたい」と思ってきた人ほど、内向型である自分を受けいれるには時間がかかるものです。加えて、自分の望むような職場へすぐに異動や転職ができるとも限りません。

「いまの会社の中でつらくならない方法」はないものでしょうか?

堤さんはこんなエピソードを紹介します。

「例えば、『自分は内向型である』と上司に打ち明けた方がいます。とても勇気がいることだったと思いますが、意外にも『ああ、そうだったんだ』と理解を示してくれたそうです。自分を受け入れてくれる人が社内にいる。その安心感で、仕事はまったく同じでも、やり甲斐を強く感じることができるようになったと嬉しそうに話してくれました」

「それから、『周りに頼ってみる』ことを始めた方がいます。この方は、今さらこんなこと聞いたら迷惑だろうな、評価が下がるだろうな、と自分で抱え込んでしまっていました。でも、試しに相談してみたら、普通に教えてくれたそうです。そういうちょっとした積み重ねで、周りが見えてくるようになると、『あ、みんな100%完璧に仕事ができるわけじゃいんだ』と気付き、その方は劣等感を覚えることも無くなりました」

内向型の自分を受け入れたうえで、自らの強みを意識し、行動に移す。こうした実践ができるまで、半年以上かかる人もいるそうです。しかしそれは、じっくり半年かけて良い、ということでもあります。

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テレワークでのストレス対策

社会的な自粛が要請される今、自宅で働けるテレワークは、ある意味内向型向けの状況なのかもしれません。しかし、先行きの見えない暮らしがジワジワと続く状況はストレスフルなもの。不安を抱える人々に、堤さんはそっと呼びかけます。

「不安とか心配を感じるなら、それはそれでいいと思います。無理にポジティブになる必要はありません。ただ、分からない先のことを考えすぎると、ネガティブなループに陥ってしまいます。それよりも、短期的に、『今日』という日の過ごし方をもっと良くしてみませんか? 自宅の勤務スペースを飾ったり、お気に入りのドラマを一気見したり、おいしいご飯をテイクアウトしたりも良いでしょう。できる範囲で自分を甘やかしてみてください」

取材協力:堤ゆかり

内向型コンサルタント・心理カウンセラー。
自身が内向性を受け入れられるようになった経験と独自の分析力をもとに、Instagram・YouTubeなどで「内向型を直さず活かす生き方」を発信している。内向型の働き方コンサルティングを行い、年間の相談実績は300件を超える。