順調に浸透しつつあるキャッシュレス決済。交通系電子マネーやスマホ決済の利用者が増加するなかで、「デビットカード」は未だにキャッシュレス化の波に乗り切らず、いまいち存在感が薄いままだ。

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が実施したキャッシュレス調査によると、デビットカードを「知らない、わからない」と回答した人は23.9%にも上るという。

一方、クレジットカードを知らないと答えたのはわずか2.9%にとどまり、交通系電子マネーでさえ「知らない」と答えたのは12.7%程度。単純な話、デビットカードは交通系電子マネーより2倍近くマイナーだと言えそうだが、それは決して「不便」であることとイコールではない。

むしろ、デビットカードにしかないメリットも多数ある。特に、クレジットカードを持てない若者や、ついついお金を使ってしまいがちな豪傑にはピッタリの、古くて新しい選択肢なのだ。

そもそもデビットカードって? 種類は大きく分けて2つ

クレジットカードの陰に隠れがちなデビットカードだが、その最大の特徴は、クレジットカードのようにレジやネットで決済した瞬間、自分の銀行口座から代金が引き落とされることにある。

デビットカードは大別して2種類に分かれる。

(1)ジェイ・デビット

普段利用している銀行口座のキャッシュカードを使用する方法が「ジェイ・デビット」だ。クレジットカードのように、支払い時に暗証番号を入力すれば決済は完了。ただし、こちらは国内加盟店でしか利用できない。

(2)ブランドデビット

VISAやJCBなど、国際的なクレジットカード会社が発行するのが「ブランドデビットカード」である。使用方法はジェイ・デビットと同じだが、例えばVISA利用者であれば世界中のVISA加盟店で利用できるので、使用範囲はケタ違いに広い。

デビットカードのメリットって?

決済してからしばらく後に引き落とされるクレジットカード決済やスマホ決済は、例えるなら「ツケ払い」に近い。他方で、銀行口座からダイレクトに近い形で支払うデビットカード決済は、例えるなら「現金払い」に通ずるものがある。デビットカードにはさまざまなメリットがあるが、この違いはそのままメリットとしても機能する。

いくつかメリットを挙げてみよう。

クレジットカードの使いすぎ防止

デビットカードは銀行口座からその場で引き落とせるので、口座残高がなくなれば、もう使用することはできない。クレジットカードは自分の支払い能力を超えた利用もできてしまうが、その点、デビットカードはセーフティネット機能が付いているとも言える。

キャッシュバックが現金でもらえる

現在、キャッシュレス決済のポイント還元キャンペーンが実施中だが、ジェイ・デビットで決済した場合は現金で付与されることになっている。会社にもよるが、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などは1ポイント1円換算として銀行口座に振り込むと明記。使用しにくい「ポイント」ではなく、現金で受け取れるのは大きなメリットだろう。

審査なしで作ることができる

支払い能力が問われないため、クレジットカードでは必須となっているカード審査がデビットカードにはない。各金融機関などが設定した年齢制限さえ満たせば誰でも作成できる。

ATMに行く必要なし、ネットショッピングにも使える

このキャッシュレス時代でも、残高管理の確実さなど、依然として現金の安定感は高い。銀行口座から即時に引き落とされるデビットカードなら現金に近い感覚で使用できるし、外出自粛の今もわざわざATMへ走る必要はなく、eコマースでのネットショッピングもできる。

デビットカード特有のデメリットというのはあまり見当たらないが、強いて言えばキャッシュカードによる現金引き出しには1日あたりの限度額があるのと同じく、決済でも利用限度額があることはお忘れずなく。

ただし、カード会社が与信枠を設定するクレジットカードと違い、デビットカードは自分で利用限度額を設定できる。セキュリティのリスクを踏まえつつ、適切な限度設定をしておこう。

オススメのデビットカードは?

では、どのように利用するデビットカードは選べばいいか。

もっとも手っ取り早いのは、すでに所持しているキャッシュカードを利用する方法だろう。基本的には、加盟店のレジでジェイデビットでの支払いを申請すれば、キャッシュカードの暗証番号を自身で端末に入力することで利用できる。

ただし先述したように、ジェイデビットは海外では使えないので、ブランドデビットカードの発行も視野に入れておくといいかもしれない。

VISAやMastercard、JCBなど各社それぞれ、さまざまなサービスを提供しているので、ポイント還元率などサービスを徹底的に比較し、熟考してから選ぶとよいだろう。

例えば、国際シェア率ナンバーワンのVISAでは、海外でも現地通貨をATMで引き出せるので、現金を使用する際も両替入らずでかなり便利。また、VISAデビットはスマホと連携することで、使ったらすぐに通知を受け取ることができ、その場で残高の確認も可能。不正利用された場合も、大ブランドならではのサポートが期待できるので何かと心強い。このキャッシュレス時代、デビットカードという選択肢も視野に入れて損はないはずだ。