――岡田さん自身、特に以前と変わったと思う点はどんなところですか?

カッコつけなくなったところです。もちろん、今でもカッコつけたいし、「カッコよく撮ってください」という思いはありますが、最近は、“カッコ悪いところを見せるカッコ良さ”がいいなと思うようになってきました。僕のまっすぐさが好きだと言ってくださる人もいるとは思いますが、良くも悪くも人は変わっていくんだろうなと。

毎日細胞も生まれ変わっていくし、落ち込んでいる時の自分とうれしい気持ちでいる自分も全然違うので、僕の記事を読んだみなさんが「ああ、岡田くんが変わった」と思わないように、どうかよろしくお願いします(笑)。僕は楽しく元気にやっていますので。

――肩の力が抜けてきた感じがいいですね。

おそらく以前は、カッコつけていることを隠していたんです。見栄の見栄を張っていたという時期もあったけど、もうその必要なないかなと。そこから大きな舞台に立たせてもらい、自分にとってブレーキになっていたものを取り払い、自分を開放したら、すごく楽になれました。こうやって取材を受けていても、「ああ、僕はこう思っていたのか!」と発見できることもたくさんあるので、すごく楽しいです。

――今、役者として目標にされている方はいますか?

綾野剛さんです。現場では、生命力に満ちあふれていて、本当にすごいです。きっと綾野さんは作品を通じて、何を伝えたいかをハッキリと用意していて、それを実践されているんだろうなと。僕もそうやって自分自身がやっていることに対して情熱を持って臨んでいきたいです。

■役者を志した自分に「よくやった!」

――『中学聖日記』で取材させていただいた頃と比べると、かなり頼もしい印象を受けますが、ご自身も、自分の成長を感じたりしますか?

感じます。役者じゃなければ、こんなことは考えないだろうなと思うこともたくさんありますし、役者をやっていて良かったと思うことが多いです。でも、そういう手応えは簡単には手に入らないし、苦しいことや、つらいことも多いけど、役者じゃなかったら、今見ている景色も絶対に違うだろうなと思います。だから、役者の道を志したときの自分に、「よくやった!」と言いたくなります。今回の現場でも、本当にたくさんのことを学ばせてもらいました。

――特に、どういう点で学びがありましたか?

現場では、僕と同世代の方々との共演が多かったのですが、みなさんがとても繊細なお芝居をされていて、こんなにも自分とレベルの差があるのか、と思い知らされたことが良かったなと思いました。繊細さの中に強さがある堀田さんや望月(歩)さん、笠松(将)さんのお芝居があったからこそ、 僕は厚志役で思い切って振り切ることができました。撮影期間はすごく短かったですけど、密度はすごく濃かったです。

また、僕はもともと独りよがりな人間で、自分で全部を背負ってしまいがちなんですが、今回は監督のお2方(楢󠄀木野礼氏と中田博之氏)が現場で一緒に考えてくださいました。監督さんとの出会いも、僕の財産となりました。

●岡田健史
1999年生まれ、福岡県出身。18年にドラマ『中学聖日記』(TBS)で俳優デビューし、『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』(19年、FBS)でドラマ初主演、『大江戸もののけ物語』(20年、NHK BSプレミアム)でも主演を務める。映画は『弥生、三月-君を愛した30年-』の後、『奥様は、取り扱い注意』(近日公開)や『ドクター・デスの遺産 -BLACK FILE-』(11月公開予定)が控える。