新型コロナウイルスの感染防止対策に伴い総集編を放送してきたフジテレビ系バラエティ番組『ネタパレ』(毎週金曜23:40~)が、きょう15日の放送分から収録を再開した。

ネタ番組の復活は当面難しいと思われていたが、ソーシャル・ディスタンスを保ちながら、画面上はCGで通常の距離感に近づけるという画期的な手法で解決。さらに、芸人たちがグリーンバックで収録しているため、ネタ内容にリンクしてバーチャルの背景を合成させることで、漫才やコントの新たな可能性も見出している。

この試みについて、演出のフジテレビ・北山拓氏に、リモート取材で話を聞いた――。

  • EXITの漫才収録の様子 (C)フジテレビ

    EXITの漫才収録の様子 (C)フジテレビ

■芸人と一緒に何日もネタ作り

4月3日から6週連続で総集編を放送してきた同番組。収録の再開にあたっては「ソーシャル・ディスタンスを守りながらやらないとダメなので、最初は情報番組などで主流になっているリモートの形でネタを披露するというのも考えました。ただ、自分たちは別のことをやろうという話をしている中で、まずはMCの方がクロマキーでネタを見るというところから始まって、『それならネタもできるんじゃないか』となったんです」(北山氏、以下同)と、実現の経緯を明かす。

最初は、コンビやトリオが密接する漫才での展開をイメージしていたが、「背景をいろいろ変えられるから、せっかくなので今しかできないチャレンジをしてみたい」と思い立ち、コントでも導入。15日の放送では、ゾフィーのネタで脳内妄想していることが背景に広がったり、かが屋のネタで体が透明になったりと、バーチャルならではの映像表現が活用されている。

  • ゾフィー (C)フジテレビ

「芸人さんの発想があって、それに対して我々ディレクター陣ができる表現を提案するという、ネタを作っていく過程が面白かったです。バーチャルで背景を生かすネタは1から作るので、Zoomで何日も打ち合わせをするなど大変でしたけど、すごくやりがいもありました」

仕上がりを見たMCの陣内智則は「面白さ倍増」と絶賛していたが、北山氏も「やっていて可能性を感じました。新しく見せられるこの手法がうまく定着すれば『ネタパレ』の色というのが出せると思うし、一緒にネタを作り上げていくことで芸人さんとできた関係値が、普段の形に戻ったときに返ってきたら、より良い番組になるんじゃないかなと思います」と手応え。ネタを披露した本人たちは「すごい! こんなふうになったんだ」と驚いていたそうだ。

■無観客の不安よりネタができる喜び

  • かが屋のコントを収録するスタジオ (C)フジテレビ

ネタ収録では、カメラの撮影位置を決めたら、カメラマンも含めスタッフは全員スタジオから退出。つまり、完全無観客状態でのネタ披露となるが、「その部分は僕も心配していたんですが、番組はいきなり“無観客”になりましたけど、芸人の皆さんは劇場から配信もしたりして徐々にこの状況に慣れてきていたので、『全然大丈夫ですよ』という感じでした」とのこと。

それよりも、「『ネタパレ』の放送が6週なかった間、他のネタ番組も営業もないので、『1カ月ぶりに漫才の衣装を着ました』という芸人さんもいました」と、ネタが披露できる喜びが大きかったようだ。