自宅はもちろん、コワーキングスペース(異なる職業の利用者たちがオフィス環境を共有し、交流できるスペース)などで仕事をする「テレワーク」。以前から導入していた企業もあれば、新型コロナウイルスの影響で通勤を避けるように、と急きょはじめた企業もあることでしょう。

  • テレワーク歴10年のライターが考える自宅での上手な働き方

「通勤がなくてストレスが減った」と思う人もいれば、「ダラダラしてしまう」「なかなかうまくいかない」という人もいるのではないでしょうか。今回は10年間、フリーランスのライターとして自宅で働いてきた筆者が、テレワークしやすい住まいと習慣についてご紹介しましょう。

日本の住まいは「働く」ことがほぼ考えられていない

もともと、日本の職人や小売店の住まいでは、職場と住まいが一体化したものも少なくありませんでした。それが戦後、会社や工場へ通勤するスタイルとなり、住まいは「寝る」「食べる」「遊ぶ」もっといえば「子育て」に特化した場所となりました。もちろん、書斎を設ける住まいもありましたが、あくまでも仕事の場所ではなく、趣味の読書などを楽しむためのもの。つまり、「仕事をする場所」は現代の住まいからなくなっていたのです。

一方、この15年、インターネットが普及したことにより自宅内でも仕事をする人が増え、自宅にデスクスペースを設けた一戸建て、共用スペースに「コワーキングスペース」を設けたマンションも増えていました。ただ、それでも「テレワーク」する人は少数派でした。しかし、2020年、新型コロナウイルスの影響でテレワークが推奨されており、今までにない広がり方を見せています。もしかすると、今後の働き方と住まい方、そのものが大きく変わる「転換点」になるかもしれません。

テレワークがうまくいく「環境」の整え方は?

ところで、筆者は自宅でライター業をしており、テレワーク歴が10年になります。途中、シェアオフィスを借りていた時期もありますが、基本的には自宅で仕事をしてきました。ですから、家で仕事をする難しさは身をもって痛感しています。ネット回線やデータ環境を整えて、リビングにPCを置いて仕事をする。これは一時的にはしのげても、長期的に継続していくのは難しいと思っています。試行錯誤の末、現在は環境面と習慣面の2つを工夫することで、「仕事スイッチのオン・オフ」が比較的スムーズにできるようになりました。まずは、環境面から解説していきましょう。

簡易でもいいので「専用の場所」を

冒頭に紹介したとおり、今の住まいはくつろぐ、食べる、寝るといった場所として最適化されています。ですから自宅で仕事するときは、まず空間を確保することからはじめましょう。部屋がなくとも、コーナーを家具で仕切る、パーティションで区切るという手もあります。セキュリティやモノの散乱を避けるためにも、子どもや家族には「このスペースにあるものは勝手に触らない」ルールを徹底、鍵付きの収納があると安心です。

また、青系の色が目に入ってくると集中できると言われているので、例えば壁紙を模様替え感覚で青色に変えてみるのもよいかもしれません。

イス、デスク、照明でモチベーションをコントロール

デスクはPCを置く場合、幅120cm~、奥行きは70㎝が多いもの。オフィスと似たデザイン・サイズだと「仕事するぞ」というスイッチが入りやすくなるので、馴染みのあるデザインがよいのではないでしょうか。イスは価格帯が広く、予算と相談になりますが、価格だけで選んでしまうと腰痛や肩こりなどの原因になるので、テレワークを長く続けるのであれば予算をかける価値があるのではないでしょうか。

照明は100ルクス程度の白っぽい光だと、集中力が増すと言われています。光が変わる調光タイプを使ってもいいですし、自分のお気に入りデザインのものにしても、モチベーションアップにつながります。また、ワークスペースこそ、集中できる・好きな音楽が聞けるようにしておくと捗ります。

プリンター、シュレッダー、コーヒーメーカーもあると便利

職種にもよりますが、ワークコーナーにはプリンターとシュレッダー、収納を設けて、より「オフィス感」を出すことで、仕事がしやすくなります。また、コーヒーブレイクは不可欠なので、お気に入りのコーヒーメーカー・ケトルを買うと、「ほっとひと息」できて、気分転換にもなります。

起床と食事、運動、雑談を上手に取り入れよう

自分自身のマネジメントが任されている「テレワーク」は、環境だけでなく習慣を整えないとなかなか維持できません。以下の内容は、一見当たり前のように見えますが、通勤と同様、筆者が考える仕事の「やる気スイッチ」です。

  • 起床時間と食事の時間を一定に保つ
  • メイクやひげそりなど出社時と同じ身だしなみで
  • 晴れた日は太陽を浴びて、軽めの運動をする

通勤がないテレワークはほっておくと、起床と就寝時間がズレ、身だしなみもだらしなくなります。1日中パジャマのまま仕事をする、なんて日もあるかもしれません。日光を浴びることも減り、あっという間に生活リズムが崩れ、仕事どころでなくなってしまいます。とにかく心身が健康でないと始まらないので、筆者は通勤代わりに「朝起きて運動」をし、健康を保つようにしています。

  • 仕事はもう少しだけやりたいな、という状態でやめる
  • 雑談は貴重な機会。タイミングを逃さず話す

テレワークでは、仕事のやる気スイッチを入れるのも難しいのですが、反対にやる気スイッチがオフにならずに眠れない、もしくは仕事をしすぎてしまうこともあります。ただ、中長期的には「もう少しだけがんばりたいな」という状態でやめるほうが、かえって長く続けることができるように思います。また、人と合うことが減るため、雑談でストレスを解消できないほか、新しいアイデア・ヒントをもらうことがなくなります。そのため、意識して話す機会をつくるようにしています。

災害が多発し、労働人口が減っていく日本では、テレワークは今後、避けて通れない「働き方/暮らし方」だと思っています。この記事がテレワークで働きたいと思う人、今まさにテレワークに取り組んでいる人の役に立てば幸いです。