新型コロナ・ウィルス感染対策が世界経済に深刻なダメージをもたらしています。こういった中で、IMF(国際通貨基金)はこのほど発表したWEO(世界経済見通し)で、世界経済の成長率は、前年比マイナス3%という、「1930年代の世界恐慌以来で最悪の景気後退になる」見通しを示しました。

このように、コロナ騒動をきっかけとした世界的な景気悪化について、「世界恐慌以来」と例えられるケースが増えています。では、その世界恐慌とは具体的にどのような出来事だったのでしょうか。

  • 1930年代に起こった世界恐慌をチェック

    1930年代に起こった世界恐慌をチェック

名著「シンス・イエスタデイ」に並んだ「無情な統計」の数々

<株暴落>

世界恐慌とは、1929年9月からの米国株の暴落をきっかけに起こった20世紀で最も長く、深刻な不況です。NYダウは1929年9月の高値から1932年まで3年近くも下落が続き、最大で8割もの下落となりました。

これは、現在のNYダウに当てはめてみると、2020年2月の高値である2万9,500ドルから、2022年以降にかけて6,000ドルまで下落するといった計算になります。こんなふうに見ると、世界恐慌の株大暴落がいかに凄いものだったかがよくわかるでしょう。

そもそも「恐慌」とは、企業の倒産や失業が大規模に発生し、生産、雇用、所得が急激かつ大幅に減少する現象のことをいいます。では、株大暴落が広がった中で、1930年代の世界恐慌では、それらは具体的にどんな動きだったのでしょうか。

たとえば、株暴落が広がった1929年から1932年の間に、世界のGDPは約15%も減少したとされます。冒頭で、IMFが世界経済の成長率がマイナス3%になるとの見通しを発表したことを紹介しましたが、世界恐慌ではさらにケタ違いの劇的GDP悪化となっていたわけです。

この世界恐慌を活写した「シンス・イエスタデイ」(F・L・アレン)という名著があります。これは、やはり名著として知られている「オンリー・イエスタデイ」の続編という位置づけです。

「オンリー・イエスタデイ」、「ほんの昨日のことだった」というのは、世界恐慌前夜の「喧噪(または狂騒)の20年代」と呼ばれた米国経済の黄金時代のこと。そして「シンス・イエスタデイ」とは、まさにそんな「昨日から」として、一転して世界恐慌が急速に広がるところとなっていった時代を描いた作品となっています。

そんな「シンス・イエスタデイ」では、「統計は無情なものだ」として、世界恐慌当時の米国経済に関するいくつかのデータが紹介されていました。

<失業、給与減、賃下げ>

「1932年、不況が最も苛酷だったこの年に、全国産業会議の概算によると、アメリカの平均失業者数は1,250万を数えた。アメリカ労働総同盟の概算では1,300万人をやや上回り、さらに他の見積もりでは、850万から1,700万となっている」。

「(1932年一年間に)給料として支払われた総額は40%も減少した。また、配当金は56.6%低下し、賃金は60%引き下げられていた」。

上にも書いたように、「恐慌」とは、企業の倒産や失業が大規模に発生し、生産、雇用、所得が急激かつ大幅に減少する現象のことをいいます。その中でも、「20世紀最悪」とされた1930年代の世界恐慌だけに、改めて具体的数字を見るとゾッとするものばかり。

近年は、経済政策の発展や国際的な協調システム構築などにより、このような大規模な恐慌の発生は未然に防止できるとの見方になっていました。それでも、「世界恐慌以来のコロナ恐慌」のリスクとされるわけですから、まだまだ警戒する必要がありそうです。