感染症対策と経済対策はほぼ真逆の関係。要するに、COVID-19(新型コロナ・ウイルス感染症)対策で、外出規制や営業活動自粛を強化すればするほど、それは経済的には悪影響となる。かといって、感染症に無対策なら、感染者急増で医療崩壊、さらなる感染者拡大といった最悪の循環に陥りかねない。

さて、そんな「進むも地獄、引くも地獄」みたいな状況に反応したように、株式市場は3月以降、これまでにないほどの異常なボラティリティー(変動率)の乱高下が続きました。では、そんなコロナ・ショックが、「コロナ大恐慌」に向かっていくなら、株式相場、そして為替相場はどうなるのか?

【株式相場1】=1987年10月、2008年10月と類似!?

そんなことを思っていたところ、世界的な株安は、最近にかけて反転が目立ってきました。世界の株価の代表的な位置付けといってもよさそうなNYダウは、3月23日の安値、1万8,000ドル程度から、もう約2割も反発しました。ただし、ここまでのところは理屈抜きで、「そういうもの」といった範囲の動きかもしれません。

  • 【図表1】NYダウの90日MAからのかい離率(2000年~)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表1】NYダウの90日MAからのかい離率(2000年~)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

NYダウの90日MA(移動平均線)からのかい離率は、3月下旬にかけてマイナス30%以上に拡大しました(図表1参照)。こんなふうに、同かい離率がマイナス30%前後まで拡大したのは、1980年以降でもこれまで2回しかありませんでした。1987年10月、米国発世界同時株暴落、「ブラックマンデー」と、そして2008年9月以降広がった「リーマン・ショック」(図表2参照)です。

  • 【図表2】NYダウの90日MAからのかい離率(1980~2010年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表2】NYダウの90日MAからのかい離率(1980~2010年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

ただ、この2例とも、さすがに90日MAを3割前後下回ると、米国株の下落は一巡しました。以上のように見ると、「コロナ・ショック」の米国株下落が、3月下旬で一巡したのは、過去3カ月(90日)の平均を3割前後も下回ってくると、株安も一息つくといったこれまでのパターン通り、つまり「そういうものだった」ということではないでしょうか。

では、もう株安は完結したのかというと、それはちょっと怪しい。上述のように、今回と同様に90日MAを3割前後下回り、下落一服となった1980年以降の2例は、その後もいわゆる「V字」での急反発に向かわず、安値圏での一進一退が続きました(図表3、4参照)。

  • 【図表3】NYダウと90日MA(2008~2009年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表3】NYダウと90日MA(2008~2009年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

  • 【図表4】NYダウと90日MA(1997~1998年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

    【図表4】NYダウと90日MA(1997~1998年)(出所:リフィニティブ・データよりマネックス証券が作成)

以上から想像できるのは、過去3カ月の平均を3割前後も下回る暴落となった相場は、さすがに下がり過ぎで一旦下げ止まるものの、かといって当面の反発も限られるということなのではないでしょうか。

そういったことを踏まえて、改めて「もう株安は終わったのか、それならコロナ大恐慌シナリオも消えたのか!?」といったことについて考えてみましょう。 前編と同様に、まずは今回と引き合いに出される、2008年のリーマン・ショック、そして1930年代の大恐慌における株安を、米国株、NYダウについて見てみましょう。前者における株安は、最大1年5カ月で54%でした。一方、後者における株安は、同2年3カ月で80%でした。

さて、これまでのところNYダウの最高値は、今年2月の2万9,500ドル程度でした。「恐慌相場」は、それから1年半~2年半続き、その中で株価は5~8割下がるということなら、NYダウは2021年夏~2022年春にかけて、6,000~1万5,000ドルへ続落するといった見通しになりますが、果たしてどうでしょうか?

最後に私自分の専門の為替についてですが、まだ固定相場だった大恐慌時代はともかく、リーマン・ショック不況では、リスクオフの円高が拡大しました。では、今回もそうなるのか。それは、また別の機会で述べたいと思います。