それを実現していくうえで課題となるのは、休業に伴う「補償」の問題です。今回、東京都が業種・施設を明示して休業要請を実施しようとしましたが、国が一部の施設について休業要請の対象とすることに難色を示すなどで国と都の間で意見が食い違い、調整に時間がかかりました。

  • 図表3 東京都の休業要請施設

    図表3 東京都の休業要請施設

最終的には、東京都の当初案にあった理髪店やホームセンターなどは休業要請対象から外し、その代わり居酒屋などは時間短縮を条件に休業は要請しないことになりました。また国は「まず外出自粛要請の効果を見てから休業要請」と主張していたそうですが、休業要請は都の主張通り(当初予定より少し遅れましたが)11日から実施されました。併せて都は休業要請に応じた事業者に対し協力金を支給することも決めました。これは率直に言って、東京都の主張のほうが妥当と言わざるをえません。本来は居酒屋も休業要請の対象にすべきだったと思います。

国のそうした対応の背景には休業補償要求が広がることへの警戒があったとの見方があります。欧米などと違って、今回のように強制力を持たない「要請」に対して「補償」を行うのは本来的には適切ではありません。その点は国の立場も理解できます。しかし事は急を要します。今回の休業要請は強制力を持たないとはいえ、緊急事態宣言以前の外出自粛要請と違って法的根拠を持つものです。したがってここは思い切って、休業補償と同等の代替措置を講じるべきではないかと思います。

補償できない理由の一つに財政事情を挙げる人もいます。しかし今は「平時」ではありません。何万人という人の命がかかっている緊急事態においては、財政事情を優先させることは適切ではありません。

休業要請については東京都に続いて他の6府県も実施の方針ですが、各知事とも「東京都のように休業補償や協力金を出すことは財政的に難しい」としています。ここは政府が実施すべきところではないかと思います。

ここで経済的不安から休業に踏み切れない事業者が多くなれば感染拡大が長引き、かえって経済的損失が長引く結果にもなりかねません。休業要請の効果を確実なものにするためにも、こうした措置が必要な局面を迎えたと言っていいでしょう。

財源がないなら、通常の赤字国債とは別枠で、たとえば「危機克服支援国債」とでもいうような国債を発行してはどうでしょうか。それによって国債発行の目的を明確化し、広く国民に対しても協力を呼びかける効果もあると考えられます。

医療従事者への支援を

最後に一つ提案です。コロナ危機による経済的打撃や「休業補償」などが議論の的になる中で、行政もメディアも、そして多くの人たちが少し置き去りにしていることがあります。それは医療従事者への具体的な支援です。医師や看護師、および彼らを支える医療関係者は毎日24時間、感染リスクを背負いながら体を張って、自らを犠牲にして最前線で頑張っています。それらの人々に対して私たちは敬意と支援が少し足りないのではと感じるのは、私だけでしょうか。

英国では、医療従事者が帰宅したときに近所の人たちが拍手で出迎える動画がアップされています。私もそれを見て感動しました。多くの市民が医療ボランティアに応募したというニュースもありました。

日本ではこの点でもまだ危機感が薄いように思います。それこそ医療従事者への具体的支援こそ急務です。せめて「危険給付金」というか、何らかの手当などを支給すべきではないかと思います。これについては大阪市の松井一郎市長が市独自に検討すると発言しました。これに賛成ですが、ここは自治体任せではなく、国として医療従事者を守り支援するという形をきちんと示す必要があると思います。

いずれにしても、この1カ月が勝負です。もしこのまま感染拡大を許せば、欧米のような、いや強制力行使がない分、欧米以上に悲惨な状況になりかねません。

今こそ「危機を乗り越えるために何が必要か」「自分が何をすべきか」を考え、行動を変えるべきときです。コロナとの戦いに勝てるかどうかは、私たち自身の意識と行動にかかっているのです。

日本中がすべての力を結集して、オール・ニッポンの力で危機を乗り切りましょう! 私たち日本人はそれを達成できるはずです。

筆者プロフィール: 岡田晃(おかだあきら)

1971年慶應義塾大学経済学部卒業、日本経済新聞入社。記者、編集委員を経て、1991年にテレビ東京に異動。経済部長、テレビ東京アメリカ社長、理事・解説委員長などを歴任。「ワールドビジネスサテライト(WBS)」など数多くの経済番組のコメンテーターやプロデューサーをつとめた。2006年テレビ東京を退職、大阪経済大学客員教授に就任。現在は同大学で教鞭をとりながら経済評論家として活動中。