• フジテレビ本社=東京・台場

残念なのは、こうした報道をされたことでネット上にネガティブキャンペーンのような憶測が広がっていること。現在は制作サイドが反論しにくい状況だからこそ、木村氏は何度も参加した立場から、「今後のためにハッキリさせておいたほうがいいことがある」という。

1つ目の憶測は「参加者をオーディションでちゃんと選んでいないのではないか?」。

「これまで100人を超える参加者と話してきましたが、全員オーディションを受けていましたし、参加できることを本当に喜んでいました。私も含めてテレビ番組に出ているタレントや文化人もオーディションを受けていましたし、時間と手間をかけて選んでいたのは間違いないでしょう。ただ、結果として同じ参加者が何度も出演しているので、誤解を招いてしまうのも仕方がない気がします」

ネット上を見ていて驚かされたのは、エキストラに関する不満よりも、「同じ人が出ている」という批判が多かったこと。「特定の個人を特別扱いしている」「子どもが悪目立ちしている」などの声があがっていた。

「一般参加者としては、収録が楽しい上に、前へ出て自分の愛するジャンルのクイズに挑戦したいし、待ち時間などで意気投合して友人になる人も多いため、『呼んでもらえるのなら何度でも参加したい』というのが本音。一方、制作サイドとしては、収録当日、確実に参加してくれるリピーターは100人を確保する上で貴重ですし、『せっかく問題を作ったから使いたい』という事情や『一度は前に立たせてあげたい』という優しさも感じました。また、演出の観点から、ある程度クイズが強く、キャラクターも立った人を繰り返し呼びたくなるのは当然でしょう。ただし、以前から参加者の中でも、『子どもを特別扱いしすぎる』という不満の声が出ていたのは事実です」

実際、鉄道、城、野菜、動物などのジャンルで大人以上の知識を発揮する子どもたちが番組をけん引し、佐藤二朗がかわいがるようなシーンもあった。昨年11月と今年1月には「小学生1人VS東大生99人」という企画が放送されている。

「『土曜夜に安定した視聴率を獲得しなければいけない』という理由から、ファミリー層の視聴者を意識しすぎたところはあるでしょう。昨年10月、裏番組に『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)がスタートし、一部の子どもが両方に出演したこともあって、『芸能事務所の子役では?』などの憶測が飛ぶ事態を招いてしまいました。子どもたちは好きなものを純粋に楽しんでいるだけなので、『悪目立ち』と言われたり、あらぬ憶測を招いたりしたことは、制作サイドの責任と言えます。今後は子どもに頼らない形での制作姿勢が必須でしょう」

■100人分の問題作りは無理なのか?

2つ目の憶測は、「本当は人数が集まらなかったのではなく、問題作りが大変だから人数減らしたんじゃないの?」という声。はたして本当に、100人分の問題作りが難しいからエキストラを入れていたのか。

「クイズ作家たちが徹夜で問題を作っていることを何度も聞きましたし、毎回のようにクイズ形式が変わる中、柔軟かつ熱っぽく対応していました。矢野了平さん、日高大介さん、長戸勇人さんなど、レジェンド級のクイズ作家をそろえた、あのチームなら意地でもこなすのではないかと見ています。難易度の調整こそ難しいものの、『3問目までは自分の愛するジャンルなら答えられそうな問題で正解させて、4問目の一斉早押し問題で勝った人だけがファイナルステージに進出できる』という基本パターンがありましたし、時間がかかるマニアックな問題はそれほどなかったですから」

3つ目の憶測は、「敗退した姿だけ見せてクイズをカットされてしまう人もエキストラでは?」、あるいは「他の番組や本から問題をパクっているから見せられなくてカットしていたのでは?」という声。クイズ番組であるにもかかわらず、クイズのシーンをカットすることに疑いの目が向けられている。

「タレントを起用したクイズ番組のように、解答者に空気を読ませたり、コントロールしたりできないので、見せ場がなく早々に敗退してしまう人も少なくありません。むしろカットは、『前に出て挑戦した』という事実を正直に伝え、『こんな問題も解けなかったの?』という恥をかかせないようにする誠実な編集なのです。ただ、こうした誤解を招かないためには、『放送できなかったシーンもネット上で公開する』などの工夫が求められる時代になりました。それと、クイズ作家は他の番組や本などと問題がかぶることを恥ずかしいと思うものなので、彼らのプライドにかけてパクリなどはないと思われます」