サマータイヤとスタッドレスタイヤの中間的な存在として近年、本格的に普及し始めているオールシーズンタイヤ。環境にもよるが、「タイヤ交換が不要」と聞いて気になっている人も多いのではないだろうか。今回はオールシーズンタイヤを装着した愛車「S124」で総距離1,000キロのロングドライブに出かけて、その燃費や乗り心地を試してきた。

  • メルセデス・ベンツ「S124」

    オールシーズンタイヤを装着した愛車のメルセデス・ベンツ「S124」でロングドライブへ(本稿の写真は原アキラが撮影)

雪の軽井沢では実力を発揮! 今回は?

昨年末からミシュラン製のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」(195/65R15 イタリア製造)を装着しているマイカー「メルセデス・ベンツ E220ステーションワゴン」(1995年製S124 2.2リッター4気筒ツインカムエンジン搭載)。すぐに雪道での性能を確かめたくなり、新雪の軽井沢で山中を走り回った時の話はすでに報告済みだ。その際、高速道路での燃費がリッター12キロを超えるという、S124にとってにわかに信じがたい数字をたたき出しているので、今回はその数字が確かなものなのかどうか決着をつけるべく、高速道路中心のロングドライブを敢行したわけである。

目的地として選んだのは、筆者の住む東京都内から約450キロ離れた宮城県三陸沿岸の松島と石巻。なぜ彼の地を選んだのかといえば、3月20日に航空自衛隊松島基地で開催される東京オリンピックの「聖火到着式」において、「ブルーインパルス」(T-4練習機)が大空に五輪の輪を描くという話を聞いたからだった。

映像でしか見たことはないが、1964年の東京オリンピックにおける「ブルーインパルス」(F-86F戦闘機)の演技はすでに伝説となっており、それが今回の式で再現されるという。ぜひ、この目で見てみたい! それは、航空ファンにとっては何物にも代えがたいイベントなのだ。

出発の前日には、いつもS124のメンテをお願いしている東京・武蔵境の後藤自動車でエンジンオイル(WAKO’S EXクルーズスペシャル6.5リッター)、フィルター、弱ったバッテリーを新品(BOSCH 7C)に交換。さらに、オイル漏れのあるヘッドガスケット周辺を清掃してもらい、ロングドライブに備えた。

  • ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」

    ミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」

強風の常磐道を北上

出発したのは、3月20日未明の午前2時半。当日の天気予報は晴れとなっていたが、気になったのは東北地方に出ていた強風注意報で、場所によっては警報レベルだという。常磐道で関東地方を抜けて福島県に入り、あたりが明るくなり始めたころには、北北西からの強風が吹き始め、道路わきの吹き流しは水平になったままビリビリと上下左右に震えているような状況だった。

サマータイヤ並みのグリップを誇るというクロスクライメートだが、さすがに秒速20メートルを超えるような斜め前方からの向かい風は厳しい。切り通しや橋上など、周りの地形によって風の向きや強弱に変化があるので、絶え間ないステアリングとアクセルの修正に神経を使う。場所によっては、時速50キロや80キロの規制区間が続いた。

さらに、広野~南相馬間は福島第1原発の近くを通るので、NEXCO東日本が道路わきに設置したモニタリングポストの放射線測定量が0.1μSv/h(マイクロシーベルト/時間)から次第に増え始め、常葉双葉付近では2.4μSv/hと最大値となる。助手席の妻にその数字をスマートフォンで撮影してもらいながら走行。この時間帯だと、前後や対面を走る交通量が極端に少ないので不安感はmaxだ。

  • メルセデス・ベンツ「S124」

    常磐道「ならはPA」付近の放射線量はまだ0.1μSv/hを表示している

  • 常磐道のモニタリングポスト

    福島第1原発に近い常葉双葉付近では2.4μSv/hに増加。強風が吹き荒れているので、走行中はステアリングの修正にとても神経を使った

  • 常磐道走行中の風景

    車外の風景。空き地に並んだ黒い袋は汚染土の仮置き場なのだろうか

仙台平野に入っても風は全く止まないばかりか、津波の堤防代わりの高い盛り土を走る構造となるため完全に吹きっさらしの状態に。そんな中、クロスクライメートのグリップを信じてアクセルを踏み続ける。オンロードでの直進性や剛性感に不安があるスタッドレスタイヤでなくて、ホントによかった。