キャッシュレス化が進み、最近ではクレジットカードの「タッチ決済」も見かけるようになりました。

タッチ決済とは、読み取りリーダーにカードをかざすだけで決済ができる「非接触決済」のことで、日本ではSuicaなどの交通系ICカードでお馴染みですが、各社が提供しているクレジットカードでも「タッチ決済」が利用可能です。

  • クレジットカードの「タッチ決済」とは? いまさら聞けないキャッシュレス

端末に「ピッ」とタッチするだけでクレジット決済できるこのシステムは、実に使い勝手がよく、今も世界中で利用者が増え続けています。今後、ますます普及していくと思われますが、日本のクレジットカードの「タッチ決済」の普及は、世界的に見れば遅れているのも事実。ですが、とても便利な決済方法ですので、これを使わない手はありません。

本稿では、クレジットカードの「タッチ決済」について詳しく紹介していきます。

メリットその1:圧倒的な「スピード」! 現金よりもずっと速く、スマートに支払い可能

すでにSuicaやiD、楽天Edyなど、電子マネー機能を搭載したクレジットカードを使っている人も多いと思います。これらのカードでもタッチ決済はできるので、一見するとクレジットカードのタッチ決済と同じ支払い方法のように思えます。しかし、電子マネーの場合は、定期的に電子マネーをチャージして決済したり、電子マネー利用分として後日まとめてクレジットカードに請求される「ポストペイ方式」での決済だったり、あくまで電子マネーを媒介した決済方法となります。

クレジットカードのタッチ決済の場合は、利用金額をダイレクトにクレジットカードで決済するので、タッチ決済とは似て異なる仕組みとなります。クレジットカードのタッチ決済は電子マネーと違い、いちいちチャージしなくていいだけでなく、PayPayやLINE PayなどQRコード決済のように、QRコードを読み込んだりする手間も省けますので、よりスピーディな決済が可能となります。

メリットその2:クレカのタッチ決済で得られる「安全性」

クレジットカードは、現金を管理する手間が省けるという点でとても便利ですが、紛失した際のリスクが少ないのも特徴です。というのも、現金は紛失すれば戻ってこない可能性が高いのに比べ、クレジットカードは速やかに停止手続きをすることで金銭的損失は防げます。

一方、クレジットカードには、常に不正利用の危険性が伴うのも事実。こうした被害は、「スキマー」と呼ばれるスキミング機器がATMに設置されていたり、精算時に店員がカード情報を盗むことで被害につながると言われています

しかし、クレジットカードのタッチ決済は、カードを端末にタッチするだけで決済ができ、一定額(カード会社や端末によって金額は異なる)であればサインや暗証番号の入力も不要。スキミングの暇を与えません、店員の手にカードが渡ることもなく、しかもカード情報は複雑に暗号化されているので、セキュリティ性はより高まります。

メリットその3:世界中で使えるクレカの「タッチ決済」! 利便性と先進国の普及事情

クレジットカードは、海外で使いやすいというメリットもあります。現金は外貨への両替や管理が大変ですし、日本で使える電子マネーやスマホ決済は海外でほとんど使えません。また、海外でクレジットカードを利用する際は為替手数料が発生しますが、ほとんどの場合は現金を両替する手数料よりも安くなっています。

しかもタッチ決済の登場で、より快適に、より安全に利用できるようになるでしょう。実際に、これから本格的に普及する日本と違い、世界ではすでにタッチ決済が当たり前になっている国も少なくありません。

対面取引に占めるVisaのタッチ決済の割合は、オーストラリアではなんと92%(!)にも上り、カナダや英国でも60%を超えています。

オーストラリアでは、2011年にオーストラリアの大手スーパーマーケットがタッチ決済を導入。100豪ドル以下であればサインや暗証番号の入力が不要で、その手軽さから着々と支持を拡大。今の利用者の増加につながりました。

イギリスの場合は、2012年のロンドン五輪を機に、タッチ決済が広まりました。五輪会場内でのキャッシュレス決済がすべてVisaカードかVisaのタッチ決済とされ、以降はバスや電車、タクシーなどの交通機関にも導入。今のロンドンでは、交通機関の運賃の約半分がタッチ決済で支払われているそうです(2018年時点)。

日本でも、2019年末までにタッチ決済対応のVisaカードの発行枚数は1,900万枚を超えました。ただし、そのすべてが実際に使用されているわけではなく、利用できるシーンもマクドナルドやセブンイレブン、一部の百貨店などに限られており、利用店舗の拡大がタッチ決済普及の絶対条件となっています。

タッチ決済対応のクレジットカード会社は?

続いて、「タッチ決済」を導入しているクレジットカード会社を見てみましょう。

「Visaのタッチ決済」

「Visa」は、日本でもメジャーなカードブランドです。タッチ決済の正式名称もそのまま「Visaのタッチ決済」で、最大のメリットは、何と言っても使えるエリアの広さです。

日本ではまだまだ使用できる場所は限られていますが、世界の展開エリアはオーストラリア、台湾、シンガポール、イギリスなど、なんと約200の国と地域に及びます。Visaのタッチ決済さえあれば、それだけで世界中で手軽に旅が楽しめる、これは展開範囲の広いVisaカードならではのメリットにして、最大の特徴だと言えるでしょう。

「JCB コンタクトレス」

日本を代表する国際ブランド、JCBもタッチ決済を導入しています。その名も「JCB コンタクトレス」。JCBはVisaほど利用可能店舗が多くありませんが、日本ブランドであるが故に、海外で何かトラブル等が起きたときでも心強い味方になってくれます。

「Mastercard コンタクトレス」

Mastercardも「Mastercard コンタクトレス」というタッチ決済を導入しています。日本ではVisaやJCBほどメジャーではありませんが、世界ではVisaに次いで2位のシェア率を誇る国際ブランド。特にヨーロッパでは加盟店が多く、エリアによってはVisaを凌ぐとも言われています。

「American Express コンタクトレス」

American Express(アメックス)も、「American Express コンタクトレス」というタッチ決済を展開しています。アメックスは年会費が高いというイメージがありますが、そのぶん、持っているだけでステータスになることで有名です。Visaほど使用できる店舗は多くありませんが、空港のラウンジサービスや海外旅行保険など、旅行に関するサービスが充実しているので出張の多いビジネスパーソンなどにも人気です。

世界標準のNFC「Type A/B」を普及させ、インバウンドの取り込みを

クレジットカードのタッチ決済には、NFC(Near Field Communication=近距離無線通信規格)という技術が使われています。これは電子マネーなども同様です。

この無線通信技術によって、カードとリーダーが離れていても情報のやり取りが可能となっています。NFCにはいくつかの通信規格が存在し、クレジットカードのタッチ決済ではNFCの「Type A」と「Type B」が採用され、これが世界標準となっています。

日本の電子マネーで使われているのは、Suicaでも採用されている「FeliCa」と呼ばれる通信規格で、ガラケー時代に広く使われた「おサイフケータイ」でもこの技術が用いられました。「Type A/B」に比べて通信速度は速いのですが、そのぶんコストも高く、アジア圏の一部での展開にとどまっています。

日本も国際規格の「Type A/B」の導入を急いでおり、東京五輪会場でもVisaのタッチ決済が導入される予定でした。残念ながら大会自体が延期になってしまったため、機を逸した感は否めません。しかし、インバウンドの需要をさらに取り込むためにも、タッチ決済の普及は目下の課題です。

日本ではキャッシュレス決済にもさまざまな選択肢があるので、今のところクレジットカードのタッチ決済がなくても不便は感じません。しかし、国外で大きなメリットが感じられるはずです。このグローバル時代、タッチ決済が付帯した世界標準のクレジットカードを一枚でも持っておけば、いつかその効果を実感できる日が来るに違いありません。