4月からレジ袋が有料化するなど、世界中で脱プラの動きが加速していますが、プラスチックって本当に悪者? 「用途によっては積極的に活用する方がかえって資源と環境を保護することになる」という説もあると聞き、資源・環境保護とプラスチックの問題を再整理してみます。

  • 環境保護にプラスチックは役立つ?

紙ストローの製造コストはプラスチックより高い

今回も、プラスチック問題に詳しい高分子材料技術者の並木陽一さんにお話を聞いてきました。最近は紙のストローやカップが話題になっていますが、やっぱりプラスチックは紙に置き換えるべきなのでしょうか?

並木さん 「ストローは古くからプラスチック製でした。その理由は、プラスチックがストローには最適な材料であるからで、今回のような社会からの要請がなければ紙に置き換わるようなことはなかったはずです。

実際、紙製ストローの製造コストはプラスチック製の4~10倍になるという説(※)もあります。その一つの要因は、製造時、紙に接着剤を含浸(薬剤を浸して含ませる)するなどの工程があるからです。

また、マイクロプラスチックを気にするなら、紙製ストローについても主に切断部分から生じる紙粉や接着剤由来のマイクロプラスチックが体内に入ることも考えなければなりません」。
※日本のストローメーカー「シバセ工業」が発言

プラスチックについては誤解が多いということですね。

並木さん 「石油が節約できるという点だけでなく、プラスチックは木工製品などに対しても利点が少なくありません。実際、この半世紀でガラス・金属・木・紙からプラスチックに置き換わってきました。

例えばガラスや金属の製品。プラスチックよりはるかに高い温度で加工するので、まずその時点で多くの電力を消費します。また、内容物がなくても畳むことができず、重さもあるので輸送時に多くの石油を消費します。

これに対し、例えば食品や飲料の包装なら、包装材料メーカーから軽量のプラスチックフィルムの状態で納入された包装材料に自社で製袋・充填することにより、輸送の効率を格段に上げることができます」。

なるほど、石油から作るプラスチックが、総合的には石油を節約するという事実があるということですね。エコの視点からプラスチックを考えてみたいです。

プラスチック製品はリサイクルの仕組みが確立

並木さん「プラスチック製品はリサイクルの仕組みが確立しています。自治体のルールに従って捨てる、不法投棄をしないなどは守っていただきたいですね。そもそも、『プラスチック』という言葉には『熱などで変形させて自由に形を作れる』というような意味があります。つまり、不要になったら次は別の形にして再利用するのが本来の姿なのです。そうすることで、さらに石油を節約できます。

また、飲食に使った容器は一回限りで捨てず、洗って別の液体や料理の保管に使用するなど『リユース』をしていただければ、さらに環境負荷を小さくできます。紙コップやプラカップは使い捨てが前提となっていますが、プラスチック製のものは耐久性があり、何度も使えます。1回しか使わないのはもったいないです」。

プラスチックの利点がよくわかりました。プラスチックを過剰に悪者扱いせず、正しく利用するべきということですね。

プラスチック製品に限らずものを買う前によく考える、使い捨て製品に依存しないなどしていこうと思います!

並木陽一(なみき・よういち)

高分子材料技術者。東京農工大学工学部繊維高分子工学科卒業後、6社の企業を歴任しプラスチック・接着剤・ゴム・フィルム関連の研究開発に従事。接着剤メーカー在職中に光硬化性樹脂の研究で博士(工学)を取得。また、大学非常勤講師を兼任し、材料・接着・分析の3つの授業で講義している。