日本の学校ではほとんど教えてくれない「お金」のはなし。欧米では小学校のうちから投資や金融について学ぶ機会があるといいます。「日本の学校でもお金の教育を取り入れてくれたらいいのに……」。そう話すのは、2児の母であり、ファイナンシャル・プランナーの竹谷希美子さん。


なぜ、12歳までにお金の教育をするのがいいのか。その理由をファイナンシャル・プランナーの竹谷希美子さんにうかがった前回。今回は、竹谷さんが実際に家庭で取り組んだ「おこづかい制」について、おすすめの方法をお聞きします。

■前回のおさらい
・日本の学校はお金のことを教えてくれない
・キャッシュレス時代に子どもを送り出す前にお金の教育を
・親の言うことに素直に耳を傾けてくれる12歳までがおすすめ
・お駄賃制は「アルバイト生」、定額制は「正社員」というやり方
・子どものうちに使いすぎや借金も経験させる
・収入と支出のバランスを身に付ければ、お金に振り回されにくい大人になる
・「クレジットスコア」が子どもの人生に影響する時代に!?

「おこづかい制」を上手に取り入れるには

――前編では、子どもたちになぜお金の教育が必要なのかを説明していただきましたが、後編では竹谷さんがおすすめする「おこづかい制」の方法について聞かせてください。まず、アルバイト生から始めた方がいい理由は何でしょうか。

竹谷希美子さん(以下、竹谷さん):少し話は逸れますが、私はこれまでファイナンシャル・プランナーとしてたくさんのお客様のお宅にうかがいました。その経験から痛感していることは、家の整理整頓ができていないご家庭はお金の管理もだらしない傾向があるということです。

生活もお金も「習慣」です。お金のことだけを教えても、整理整頓ができなければお金の管理はできません。

――それが「正社員」からではなく、「アルバイト生」から始める理由ですか。

竹谷さん:そうなんです。アルバイトは店内やトイレの掃除をしたり、物をあるべき位置に配置したり、決まった時間に出社したり、お金の扱い方を知るといった基本を学びますよね。

アルバイトの仕事は子どもが自ら仕事を探して、親と契約をします。そして、アルバイトをとおして、お金をもらえるありがたみと一緒に、例えば洗濯物を畳んだら10円、トイレを掃除したり、自分の部屋を片付けたりしたら20円など、整理整頓の大切さも一緒に教えてあげてください。

――「正社員」へ移行するタイミングはどう判断すればいいでしょうか。

竹谷さん:我が家の娘は小学校2年生のときにアルバイト生になり、半年ほどお駄賃方式のおこづかいを続けました。そして自分の仕事を持ち、お金のありがたみを感じられるようになった3年生で正社員になりました。

一方で、息子はお金をもらったら散財してしまう子だったので、アルバイト生と正社員を繰り返しました。親の焦りは禁物です。急がず、その子に準備ができたタイミングを見計らってください。「あぁ、もう正社員になっても大丈夫だな」と思うタイミングは、子どもにアルバイトの仕事を任せられると思ったときです。

――おこづかい制を取り入れるのに適した年齢はありますか?

竹谷さん:一人ひとりに適したスタートがあると思いますが、分かりやすいのは「小学校1年生」だと思います。自分の足で歩いて学校へ行き、自分の足で帰ってくる「自立」する年齢ですよね? 小学校に慣れてきたら、「お金について一緒に勉強してみない?」と提案するのはいいと思います。

でも、3年生でも5年生でも中学校に入ってからでも大丈夫。おこづかいを通したお金の教育は、いつ始めても必ずその子にとってプラスになります。

――昔なら1年生は100円、2年生なら200円という暗黙の基準があった気がしますが、適した金額設定はありますか?

竹谷さん:環境にもよりますが、1~3年生の場合はまずアルバイト生として、お花に水をあげたら10円、お風呂を掃除したら10円を渡すくらいがちょうどいいと思います。1カ月で300円くらいになるように。

お駄賃でもらったお金の使い道は子どもの自由です。とはいっても、買う目標が達成できているか、つまり何に使っているか、は親が見守ってください。例えば、娘の毎月のミッションは月刊マンガ雑誌を買うこと。そのためには、毎日休まずにお風呂を洗わなければいけませんでした。

小学校の高学年になるとお金を使う場面は多くなりますよね。マンガを買ったり、友達とお菓子やジュースを買ったり。おすすめなのは、その子が1カ月にだいたい何にいくら使うのかを、まず洗い出すことです。

例えばマンガやお菓子、ジュースや学校で使うノート、塾へ行っている子どもなら交通費があるかもしれません。友達への誕生日プレゼントもあるでしょう。子どもにかかっているお金の一覧をまずは一緒に作って、「じゃあ、ここは◯◯ちゃん、自分で管理してみようか」「交通費はママが管理するね」など、子どもが管理できる範囲を決めて任せてみてください。

――竹谷さんのお子さんが正社員になった3年生のときは、いくらからスタートしたのですか?

竹谷さん:正社員になった長女への最初の支給額は月500円でした。その後、5年生からは月1,000円で、月刊誌の少女マンガや趣味で集めている文具、お友達へのプレゼント代などを娘はこの中でやりくりし、親は服代や友達と行く遊園地の入園料、昼食代などを負担しました。

最初のうちは子どもに任せる費目は少なめに設定することがポイントです。任せすぎると、管理するのが難しいですから。親と子どもがそれぞれ管理する範囲を一度決めたら、徹底するのも大切です。