■外見のかっこよさを捨てたかった

――放送後の感想を見ると、桃ちゃんがAくんに「顔がいい!」と内心で叫んでいるのに共感している人も多かったです(笑)。この「顔がいい」って最近よく使われる言葉ですよね。

流行ってますよね。それこそ『HiGH&LOW THE WORST』の応援上映でも言われていて、(小柳)心くんが「か〜お〜が〜い〜い〜!」って真似してました。

――私もたまに言うんですけど、結構危なっかしい言葉だな……とも思うんです。もちろん「顔だけがいい」と言っているわけじゃなくて、いろんなことをひっくるめて感情が湧き上がった結果その言葉しか出なくなった、というニュアンスを込めてるんですけど、言葉だけ取り上げると乱暴だよな、と。だから言われる側はどう思ってるんだろう? というのが気になってまして。

そう思いますよ、やっぱり(笑)。「顔だけ」みたいな感じも、受け取り方によってはありますよね。SNSとかで「◯◯さんはこういうところがいい、▲▲さんはこういうところがいい、塩野は顔がいい」みたいなことを書かれているのを見ると「おぉ……」って複雑にはなります。でもまぁ、言わんとしていることはわかります。僕も俳優界だと町田啓太くんの顔がめちゃくちゃ好きで「顔がいい……」と思いますから(笑)。あの顔になりたいなって。

――一方で塩野さんは過去に、外見のかっこよさを捨てたかった時期があると言っていましたよね。なぜ当時そう考えたんですか?

たぶん、当時勢いがあって活躍していた俳優さんで、そういう方が多かったんですよね。抗うかのように自分を表現する姿がすごく魅力的に映って、かっこいいなと思ったんです。だから、外見に対して評価されることを捨てたかった時期があった。それで捨ててみた結果、僕の経験としては大いに活かさせていただいたんですけど、結構苦しい時期ではありました。やっぱり自分の魅力みたいなものがあるのであれば、そこを活かすのは必要なんだなと思いました。

――時期的には『獣電戦隊キョウリュウジャー』が終わった後くらいですか?

終わったあとですね。正直言うと、『キョウリュウジャー』をやっている頃も悩んでいる部分はずっとありました。昔のブログを読み返しても、多分いま戦隊とかライダーをやっている子たちのSNSのほうがよほど柔軟に対応しているなと思えるところはあります。そこで柔軟にしていれば、もっとトントン拍子でいけたかな、とか。

――『来世ちゃん』のAくんもそうですが、特に『THE WORST』の小田島有剣は、自分の容姿の良さを把握しきっている人だからやれる役だな……と思っていたのですが、そこに至るまでにはいろいろな葛藤があったんですね。

僕自身はどちらかといえばシダケン(荒井敦史)のような、ドンと構えた堂々たるヤンキーキャラのほうが好きだし、男らしいなと思いますけどね。ハイローの役作りに関しては本当に特殊で、あれだけたくさんの若手がたくさんいる中に放り込まれたときに何かを残そうと思ったら、ああせざるを得なくて武装していった、くらいの感じなんですよ。先日のイベントで『THE WORST』を2回目に観たとき、僕をメディアで取り上げていただく理由が本気でわからない、と思いました。最初に試写で観た後も、マネージャーに「頑張ったけど、あんまり印象残せなかったね」って言ったんです。その意見はいまだに変わらないですよ。

――でも、今回のAくんのキャスティングもプロデューサーが『THE WORST』を観て決めたということですし(後日インタビュー掲載)、今後につながる作品になったことは確かなんじゃないでしょうか。

だとしたら、嬉しいです。もしかしたら「若手が集まった作品で人気出た俳優だろ」と思う映画界の人もきっといるのかもしれない。でもそういう方には、逆にぜひ使ってほしいです。受けて立ちたい。どんな環境でもやっていく自信はあるので。いろいろへし折られる部分もいっぱいあると思いますけど、たくさんいろいろな方に出会っていきたいですね。

■塩野瑛久
1995年1月3日生まれ、東京都出身。男劇団 青山表参道Xのメンバー。2011年に開催された第24回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに応募し、審査員特別賞およびAOKI賞を受賞、2013年『獣電戦隊キョウリュウジャー』出演で話題を呼ぶ。近年の主な出演作に『星屑リベンジャーズ』(18)、『PRINCE OF LEGEND』『HiGH&LOW THE WORST』『いのちスケッチ』(19)、W主演ドラマ『Re:フォロワー』(19)、舞台『里見八犬伝』、『ENDLESS REPEATERS –エンドレスリピーターズ-』(19)など。公開待機作に映画『貴族降臨 -PRINCE OF LEGEND-』(3月13日公開)がある。