気候変動問題を背景に電動化が進む自動車業界で、はたしてスーパーカーメーカーは存続できるのか。そんな命題に対するランボルギーニの答えを、同社の本拠地であるイタリアはボローニャ郊外のサンターガタで見てきた。ランボの工場は、環境に配慮したエコなプラントとして、今日も稼働しているのだ。

  • ランボルギーニの工場

    イタリアはサンターガタにあるランボルギーニの工場に行ってきた(本稿の写真は原アキラが撮影)

ランボは常に環境を意識する

「アヴェンタドールSVJ」「ウラカンEVO」「ウルス」というランボルギーニの最新3モデルでイタリア北部のアルプスを走り回るイベント「クリスマスドライブ」に参加したのが2019年の暮れ。6.5リッターV12、5.2リッターV10、4.0リッターV8ターボという大排気量高性能エンジンを搭載したスーパーカーをとっかえひっかえしながらのドライブが、貴重かつ素晴らしい体験だったことはいうまでもない。しかし、それを素直に喜んでばかりもいられないのは、近年の地球を取り巻く環境問題が気にかかるからだ。

  • アヴェンタドールSVJ
  • ウラカンEVO
  • ウルス
  • クリスマスドライブでアルプスを走った3台(左から「アヴェンタドールSVJ」「ウラカンEVO」「ウルス」)

ほかにも要因はいろいろとあるが、自動車の排気ガスに含まれるCO2などの温室効果ガスが増え、世界のあちこちで異常気象が頻発したり、極地の氷が解けたりと、地球温暖化が確実に進んでいる。それは、16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの「怒りのスピーチ」を引用するまでもない。当然、温室効果ガス削減で重要な役割を持つのは自動車産業であり、製品だけでなく、製造工程においても何らかの対策を講じていくのは、各社の必修科目となっている。

イタリアのボローニャ郊外サンターガタにあるランボルギーニの工場見学では、同社がいかに環境問題に注力しているかについて、製造部門責任者のラニエリ・ニッコーリ氏がたっぷりと時間を割いて説明してくれた。同社の現在と今後の方向性が見えてくるような話だった。

「地球(の環境)、人、製品に対して責任と義務を持つランボルギーニは2010年、本社近くに1万5,000平方メートルという広大なバイオパークを設けました。そこに植林した1万本以上の樫の木は、工場で排出するCO2を吸収してくれます。ボローニャ、ボルツァーノ、ミュンヘンの各大学と共同で、地元の生物多様性に関する研究も行っています。大気汚染とミツバチの喪失に関する研究はその一例で、実際にそこではミツバチを飼っており、製造したハチミツは従業員の手に渡ります」

  • ランボルギーニの工場
  • ランボルギーニの工場
  • サンターガタ工場を見学

  • ランボルギーニのニッコーリ氏

    製造部門責任者のラニエリ・ニッコーリ氏

2015年にはバイオガスを利用した第3世代の冷暖房システムを導入し、年間1,800トンのCO2削減を達成するとともに、イタリアで初めて工場全体がカーボンニュートラルとなる認証を獲得。2018年にはウルスの好調な販売状況にあわせて工場を2倍の16万平方メートルに拡張し、新たに500人の従業員を雇い入れたという。2019年には95%水性の塗料を使用するペイント工場を新設。さらに、従業員が利用するカフェテリアは、今年から100%のプラスチックフリーを実現しているそうだ。

ランボルギーニで人事部門の責任者を務めるウンベルト・トッシーニ氏は、「今日の、そして未来の経済と社会に貢献するため、常にエコロジーに目を向けています。そのためには教育が重要で、具体的には、ランボルギーニパークで地元の小学生向けのイベントを開催するとともに、高校や大学で授業を開催しています。そこでは、水の大切さやプラスチックフリーについて教えます。従業員とその子供たち全てに携帯ボトルを配布したのもその一例です」と話していた。

  • ランボルギーニのトッシーニ氏

    人事部門責任者のウンベルト・トッシーニ氏

  • ランボルギーニの携帯ボトル

    ランボルギーニの携帯ボトル

工場拡大に伴い、新たに採用した従業員は、各部門で必ず先輩とペアになって作業を行い、技能を習得していくのだという。こうした様子は、見学した工場内のあちこちで見ることができた。