米労働省が2020年1月10日に発表した12月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数14.5万人増、(2)失業率3.5%、(3)平均時給28.32ドル(前月比+0.1%、前年比+2.9%)という内容であった。

(1)12月の米非農業部門雇用者数は前月比14.5万人増となり、増加幅は市場予想の16.0万人を下回った。製造業の雇用者が1.20万人減少するなど、大手自動車会社のストライキ終結などで大幅増となった11月の反動も見られたが、雇用情勢の基調を示す3カ月平均の増加幅は18.4万人と小幅な減速にとどまった。

ただ、2019年通年の雇用者数は約210万人と、前年の約270万人から比較的大きく鈍化した。

(2)12月の米失業率は予想通りに3.5%となり、50年ぶりの低水準であった前月から横ばい。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率も63.2%と横ばいだった。一方、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)は前月から0.2ポイント低下して6.7%となった。U-6失業率は統計がさかのぼれる1994年以来最も低い水準に改善した。

(3)12月の米平均時給は28.32ドルとなり、前月から0.03ドル(3セント)増加。時給は過去最高を更新したものの、伸び率は前月比+0.1%、前年比+2.9%と、いずれも予想(+0.3%、+3.1%)に届かなかった。なお、前年比の伸び率が3%を下回ったのは2018年7月以来、1年5カ月ぶり。

米12月雇用統計の発表後に、ドルは小幅安となった。非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回ったほか、平均時給の伸びが鈍化したためだ。もっとも、非農業部門雇用者数は3カ月平均で、労働市場の安定に必要とされる10~15万人を上回るペースの増加となっている。

広義の失業率であるU-6失業率が歴史的水準に改善したこともあって米国の雇用情勢は好調を維持していると判断できる。発表直後のドル安はポジション調整の色合いが強く、基調として定着する可能性は低そうだ。米12月雇用統計で平均時給の伸びが鈍化したことも考え合わせると、「インフレなき好景気」の継続が示唆されており、米連邦準備制度理事会(FRB)が、やや緩和的な現行の金融政策を当面据え置く公算が大きくなったと言えるだろう。