外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年12月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ドル/円 12月の推移】

12月のドル/円相場は108.426~109.728円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約0.7%下落(ドル安・円高)した。前月の流れを引き継いで2日には109.728円まで上昇したが、米11月ISM製造業景況指数が予想外に悪化したことで109円台を割り込んだ。ただ、108.50円台を割り込むと押し目買いが入り108.40円台で下げ渋った。

その後、米中通商協議・第1段階の合意がほぼ確実となった12日には109円台を回復。中旬以降は109円台で高止まりとなったが、クリスマス休暇が明けた月末にはポジション調整と見られるドル売りが強まり108円台半ばに押し戻されて2019年の取引を終えた。

なお、12月の米国株は主要指数が揃って史上最高値を更新するなど大幅に値上がりしたが、ドル/円の支援材料にはならなかった。一方、米下院はウクライナ疑惑などを理由にトランプ大統領の弾劾決議案を19日に可決したが、これがドル/円の圧迫要因になることもなかった。

【ドル/円 1月の見通し】

ドル/円は、2019年末から2020年始にかけての約1週間で2円近くドル安・円高に振れている。年末のポジション調整と見られるドル売りに加え、年始の米軍によるイラク空爆(イラン司令官殺害)を受けたリスク回避の円買いで、6日早朝にはおよそ3カ月ぶりに107.70円台まで下落する場面もあった。イランによる報復措置への警戒も高まる中、「1月のドル安・円高アノマリー」が今年も再現される可能性が意識されている。当面は、中東情勢ウォッチが必須となりそうだ。 

一方で、米中の対立が和らいでいる点はドル/円にとってポジティブ要因だろう。トランプ米大統領は、米中通商協議の「第1段階」合意について、1月15日にホワイトハウスで署名式を行うことを明らかにした上で、「第2段階」の協議に向けて訪中する意向も示している。足元で中国の製造業PMIが持ち直していることもあって、米中の対立緩和は世界的な製造業の景況感底入れ期待につながりそうだ。 

中東の地政学リスクによる円高と米中の対立緩和による円安のせめぎ合いで、どちらに軍配が上がるかが1月のドル/円相場の見どころとなろう。現時点では、中東情勢よりも米中関係のほうが世界経済への影響が大きいと考えられるため、ドル/円の下値リスクは限定的と見ている。

【1月の日米注目イベント】