強敵、渡辺明三冠を得意戦法の相掛かりで破る

1月7日に第61期王位戦予選決勝(主催:新聞三社連合)の渡辺明三冠-佐々木大地五段戦が東京・将棋会館で行われました。勝者が挑戦者決定リーグ戦に進出する大一番。今期大活躍中の両者の対決とあって、大いに注目を集めた一戦を制したのは佐々木五段でした。

振り駒の結果先手番となった佐々木五段は、迷うことなく相掛かりを選択。相掛かりは佐々木五段の得意戦法で、直近の1年でなんと20勝4敗。本局と同じ先手番に限っても15勝3敗、勝率8割3分3厘と圧倒的な成績を残しています。

相掛かりは角換わりなどの相居飛車の戦型と比べて、まだ研究が進んでいないとされています。プロ棋戦でも試行錯誤が繰り返されている状態で、序盤から前例のない戦いに突入しやすい戦型です。本局もまだ駒組段階の25手目で佐々木五段が新手を披露し、未知の局面となりました。

先に戦いを起こしたのは渡辺三冠でした。攻めの主役である飛車が敵陣に近く、反撃にあいやすい形でありながら果敢に端から動いていきます。が、これがなんと敗因に。部分的にはよくある攻め筋で、渡辺三冠も「何とかなると思った」と語ったように、先手陣が少しでも違う形なら十分に成立するのですが、今回ばかりはイレギュラーケースでした。それを相掛かりのエキスパートである佐々木五段が見逃すはずがありません。わずかな違いを生かし、仕掛けをとがめる巧みな佐々木五段の指し回しを前に、さすがの渡辺三冠も差を詰めることができませんでした。最後まで緩みなく押し切った佐々木五段が75手で勝利。完勝と言ってもいい内容で、大きな白星をものにしました。

挑戦者決定リーグは12人の棋士が紅白の2組に分かれる総当たりのリーグ戦です。それぞれのリーグ優勝者が木村一基王位への挑戦権を懸けて挑戦者決定戦を行います。初参加の第59期では1勝4敗でトップ棋士の高い壁に跳ね返された佐々木五段。翌60期も予選を勝ち抜き連続でリーグ入りを果たすと、3勝2敗で勝ち越しという成績を収めましたが、惜しくも組の上位2人に入ることができずに陥落してしまいました。徐々にリーグ成績が上向いている中で、3期目の今期はどうなるでしょうか。

1月7日対局分までの今期ランキングで、対局数、勝ち数がともに全棋士中1位と大活躍中の佐々木五段。昨年末には惜しくも敗れたものの、棋王戦でタイトル挑戦まであと1勝まで迫りました。リーグ参加棋士はまだ全員揃ってはいませんが、豊島竜王・名人や永瀬拓矢二冠などのシード棋士をはじめ、藤井聡太七段もリーグ入りを決めており、ハイレベルな戦いになることは必至です。彼らを相手に念願のタイトル戦初挑戦なるか、佐々木五段の活躍にこれからも注目していきましょう。

佐々木大地五段