部屋探しをしようと不動産サイトをチェックしているときに、契約事項や但し書きの欄に「定期借家契約」という文字が並んでいるのを見たことはありませんか。普通の契約とはどう違うのでしょうか。メリットや注意点についてまとめました。

「定期借家契約」はその名の通り、期間に定めのある契約

そもそも、「定期借家契約」と聞いてピンとくる人は、多くないことでしょう。国土交通省が発表した「住宅市場動向調査」(2017年調査、2018年公表)によると、「定期借家契約」について「知らない」と答えた人は 64.2%。反対に「知っている」「名前だけを知っている」とあわせた人を大きく上回る結果となりました。

  • 国土交通省が発表した「平成29年度 住宅市場動向調査報告書」より筆者作成

通常、賃貸住宅で部屋を決めたら「契約」を取り交わしますが、この契約には「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。この定期借家契約はその名前の通り、「定期」つまり、契約期間があらかじめ決まった契約のことをいいます。

認知度は今ひとつかもしれませんが複数の人で共同生活を送る「シェアハウス」や家具家電付きの「サービスアパートメント」、リノベーションした「団地」など魅力や特色のある物件では「定期借家契約」を導入しているところが多く、少しずつ身近な存在になっています。

普通借家契約とどう違うの? 借り手のメリットは?

「アレ、でも一般的な普通借家契約でも『2年』または『3年』と契約をとり決めるよな?」と思った人、するどいです!期間の定めがあるのは「普通借家契約」でも同じです。

ただ、普通借家契約では基本的に、「正当な事由がなければ更新」を前提としていて、貸し手側から「契約が終わったので、次回から更新しません」と突きつけることはできません。貸し手からみると、契約期間があるようでいて、実はないのが現状なのです。

一方、定期借家契約では基本的に期間満了で契約が終わりとなるので、(1)終了型であれば転居する(2)引き続き入居したい場合、貸し手側と借り手側、双方合意のもとで再契約を結ぶこととなります。

借り手側にとってのメリットはあるのでしょうか。

まず、(1)の終了型であれば一定期間で退去しなくてはならないため、家賃が少し割安といったメリットがあります。転勤などで一時的に住まいを人に貸したいときに用いられることが多いようです。ただ、期間満了後の退去を念頭に置いておく必要があります。

(2)の再契約型のメリットは、良好なコミュニティが保たれる点にあります。定期借家契約だと、借り手側と貸し手側、双方の合意がなければ期間終了後に退去となるというプレッシャーが抑止力となり、「騒音」「ゴミ捨て」といった入居者のマナー違反が起こりにくいのだといいます。つまり、定期借家契約で入居することで、コミュニティが荒むという心配が軽減されるのです。

一方で、マナーを守りながら暮らしている人であれば、多くが再契約を結ぶといいます。そのため、「住んでみたら普通借家契約と変わらない」という感想が一般的です。

ちなみに、複数人が1つの屋根の下で暮らす「シェアハウス」では、一般的な賃貸物件以上にコミュニティが大切となるため、住み手のマナーやコミュニティを守る方法として「定期借家契約」を導入していることが多いようです。

更新がないのであれば、「更新料はどうなるの?」と気になる人もいるかもしれません。(2)の再契約を結ぶのであれば、契約料をとらずに再度契約を結ぶ物件もあれば、「再契約の事務手数料」として、1/2カ月~1カ月分が発生するところもあるようです。このあたりは、契約時にしっかりと確認しておきたいところです。

また、契約期間中に退去したいと思った場合ですが、この点は普通借家契約と変わらず、一定期間前に予告すれば退去ができます。

最後に定期借家契約の注意点を確認しましょう。まず、契約期間ですが、定期借家契約では数日から1カ月、数年まで設定することができます。契約期間が半年なのか2年なのか、5年なのかきちんと理解・把握しておきたいところです。また、定期借家契約でも「再契約型」か「終了型」かも確認しておきましょう。

ただ、「定期借家契約」そのものは、きちんと理解しておけば借りる人にはほとんどデメリットはありません。「多拠点生活」「アドレスホッパー」など住まい方が変化するなか、今後は賃貸借期間や内容が明確になった「定期借家契約」も加速度的に普及していくことでしょう。

回遊舎

嘉屋恭子

フリーライター。編集プロダクションなどを経て、2007年よりフリーランスで活動。主に住まいや暮らしに関わる分野で取材・執筆を続ける。FP技能士2級取得。