フジテレビ開局60周年特別企画として、木村拓哉主演のスペシャルドラマ『教場』が、4日・5日(21:00~)に2夜連続で放送される。長岡弘樹氏の同名小説を原作に、木村演じる警察学校のカリスマ教官・風間公親が、極限状態を生き抜く生徒それぞれのよこしまな思惑を暴いていくミステリーで、『踊る大捜査線』などで知られる君塚良一氏が脚本を担当するという話題作だ。

この作品の演出を務めるのが中江功監督。木村主演でこれまで、『若者のすべて』(94年)や、『ギフト』(97年)、『眠れる森』(98年)、『空から降る一億の星』(02年)、『プライド』(04年)と数々のヒット作を手掛けてきた人物で、今作で16年ぶりにタッグを組む。そんな中江監督へのインタビューを通じて、演出のこだわりをひも解いていく。

  • 『教場』中江功監督

    『教場』中江功監督

■影響を受けた『北の国から』イズム

中江監督の特徴は“映像美”である。代表作の1つ、吉岡秀隆主演『Dr.コトー診療所』(03年・06年)も、ロケ地となった与那国島の美しい海や自然の映像が思い出されるが、個人的に特に印象に残っているのは、滝沢秀明主演『太陽は沈まない』(00年)の第1話だ。

この作品は、高校生の主人公が突然死した母親の遺骨から“手術用メス”を発見したことで、医療裁判を起こしていくというドラマで、その裁判を通じて主人公が成長していく青春物語も瑞々しく描いた意欲作。その第1話の冒頭が、主人公の“剣道合宿”のシーンで、生き生きと映し出される富士山や自転車、スーパーマーケットに並ぶ“オレンジ”の映像が、やがて訪れる母の“死”と対照的で印象的だった。

「新しいロケ地に行くと、せっかく行ったんだからそこでしか撮れない画を撮って帰らなきゃっていう使命感があるんですよ(笑)。“太陽”の自転車とオレンジのシーンはすごく時間をかけて撮りましたね。僕は第1話にすごく時間がかかるんですけど、“太陽”の第1話もすごく時間がかかりました」

映像へのこだわりは、フジテレビに入社してすぐに助監督としてついた『北の国から』が影響している。

「『北の国から』のイズムは入っていると思います。1年目に杉田(成道)監督の助監督についたんです。もちろん一番下っ端で。『’89帰郷』という、純が“泥のついた一万円札”(前作『’87年初恋』での名シーン)を奪われて、仕事場でケンカして、富良野に帰る回です。あの頃僕は会社に入って1年目で、右も左も分からなくて、しかも学生時代から監督をやりたかったわけじゃない、なんとなくドラマ部を希望して、たまたま配属された素人だったんです。でも、最初の年にこんな名作に出会えたおかげで、生意気にも脚本が面白いということは、こういうことなんだと感じたのは倉本(聰)先生でしたし、杉田監督の芝居の付け方とか、撮り方とかが印象に残っていて、このシーンは杉田組のあのシーンみたいな…という風に、自分が初めて撮るときに影響を受けたのは間違いないです」

また、映像へのこだわりは視聴者だけでなく、制作スタッフに向けたメッセージでもあった。

「“1行のト書きをどう膨らませるか”という演出を『北の国から』で教わった気がします。脚本を読んでいるスタッフにも、でき上がった映像を見て『あーなるほど、そうなったんだ』と思わせたいみたいな気持ちがあるんです」

  • 『北の国から』監督の杉田成道氏(左)と脚本の倉本聰氏

■『教場』は「面白いオープニングに」

今回の『教場』の冒頭シーンは、雪山で車が事故を起こしている映像から始まるが、「脚本には“車が雪道を下っていき、ハンドルを取られる。車はガードレールを越え、崖を滑り落ちていく”といったことが書かれているんです。脚本打合せの途中で、君塚さんから『大変ならやめましょうか?』と気遣っていただいたのに『残してください』と言った手前、今さらやめる訳にもいかず。とはいえ、このまま撮るには大変な撮影になる。君塚さんも少し驚かせたい、そんなシーンをどう撮るか、必死で考えていた」という。

この冒頭シーンは、映像としても印象的な始まり方だ。

「本編は8月いっぱいで撮り終わっていたんですけど、冒頭のシーンは11月終わりに北海道に撮りに行ったんですよ。狙っていた場所で雪が降るのを待って、新雪の道に車輪の跡をつけて、ドローンで撮りました。面白いオープニングになっていると思います」