4勝1敗で広瀬章人竜王を下し、史上4人目の竜王・名人に

広瀬章人竜王に豊島将之名人が挑戦する第32期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)は、12月6、7日に島根県鹿足郡津和野町「藩校 養老館」で第5局が行われ、豊島名人が143手で勝利。シリーズ成績を4勝1敗として、竜王奪取を決めました。

豊島名人が3連勝のあと、広瀬竜王が1勝を返して迎えた第5局。6日、先手の豊島名人は第1局、第3局に続いて、頼れるエース戦法「角換わり」に命運を託します。研究課題になっている最新形から豊島名人が新手を繰り出すと、広瀬竜王も力強く応じて、1日目が終了しました。

2日目に入ると、後手がペースを握ったように見えました。駒の損得を勘定すると、最大で後手の飛車得。しかし、「終盤は駒の損得より速度」ともいいます。手番を生かした先手の攻めも厳しく、優劣不明の寄せ合いが続きました。

やがて形勢が有利だと感じていた広瀬竜王は、捨て駒を交えながら、一気に後手玉を寄せにいきます。しかし、膨大な読みの中で、「詰みそうな先手玉がわずかに詰まず、安全になるはずの後手玉が逆に詰まされてしまう」という誤算がありました。踏み込んだあとで広瀬竜王は誤算に気付きましたが、時すでに遅く、致命傷になっていました。

最終盤になると両者8時間の持ち時間を使いきり、一分将棋に突入します。秒読みの声が対局室に響く中、最後は豊島名人が後手玉を即詰みに討ち取って、初の竜王獲得を決めました。

 

豊島新竜王はこれで「竜王・名人」となりました。将棋界の最高峰とされる二大タイトルを同時に保持することは難しく、これを成し遂げたのは羽生善治九段、谷川浩司九段、森内俊之九段しかいませんでした。豊島竜王・名人は、史上4人目の快挙達成です。

豊島竜王・名人