元タレントの田代まさし氏が6日、覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕された。田代容疑者は、覚せい剤を所持していたとする現行犯逮捕については容疑を認めているものの、宮城・塩釜市内のホテルでの逮捕容疑については否認しているという。逮捕者が報じられる際、氏名に付く「容疑者」とはどのような立場の者を指すのか。また、著名人の逮捕報道でもよく目にする「書類送検」とは、どのような手続きなのか。井上圭章弁護士(弁護士法人グラディアトル法律事務所)に解説してもらった。
――メディアで報じられる「容疑者」とは、どのような立場の人を指すのでしょうか。
よくテレビや新聞などのメディアで聞く「容疑者」という言葉ですが、一般に容疑者とは、犯罪の疑いをもたれた人のことを指す言葉として使われていることが多いようです。実は、刑事捜査や刑事裁判手続きを定めている刑事訴訟法では、この「容疑者」という言葉はなく、「被疑者」や「被告人」という言葉を使います。
この「被疑者」は、犯罪の疑いをもたれた人で、まだ起訴されていない人のことを指す言葉です。犯罪の疑いをもたれた人という意味では「容疑者」と同じですが、起訴前の人に限っている点で「容疑者」とは違ってきます。
なお、「被疑者」が検察官によって起訴されると、「被告人」という呼び方に変わります。
――「書類送検」とは、どのような手続きなのでしょうか。
「書類送検」とは字義どおり、書類を送検すること、すなわち、警察が捜査段階で集めた証拠などを検察官に送る手続きを指す言葉として使われています。
どのような処分にするのか最終的に決定する権限をもっている人は検察官ですので、警察は事件とともに証拠などの捜査資料や身柄(被疑者)を検察官に引き継ぐ必要があります。このような手続きを「検察官送致」といいます。
ただ、事件によっては、逮捕までは必要ないと判断されることもあります。このように逮捕されておらず、任意での捜査を続ける場合、身柄は取っていませんので、警察は事件と捜査資料だけを検察官に引き継ぐこととなります。
このように、捜査資料などの書類だけが検察官に引き継がれることから、「書類送検」という言葉が使われているようです。
監修者: 井上圭章(いのうえよしあき)
弁護士法人グラディアトル法律事務所所属。弁護士法人グラディアトル法律事務所所属九州国際大学法学部卒業後、京都産業大学法科大学院修了。大阪弁護士会所属 。「労働問題」「男女トラブル」「債権回収」「不動産トラブル」などを得意分野とする。