KDDIは10月10日、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)についての説明会を開催した。

同社のSDGsは、投資家、アナリスト、メディア関係者を対象に同社が今年5月に発表した新中期経営計画において掲げられたもの。

会場では、同社のSDGsの目標設定とその具体的内容と中期経営計画で事業戦略のひとつとして掲げられたサステナビリティ(持続可能性)方針に基づく企業価値向上の努力についての説明が行われた。

  • KDDIが取り組むSDGs、解決する社会問題とは?

    KDDI 取締役執行役員専務 村本伸一氏

KDDIは新中期経営計画の事業戦略において、社会の持続的な成長に貢献する会社であることを同社の「目指す姿」として重視。今回その柱として事業部門、役員、社外有識者と連携し「KDDIが目指すSDGs」の策定をいったという。

同社の取締役執行役員専務 村本伸一氏は、SDGsの策定について、根底に「社会インフラを担う通信事業社としての強い使命感」があるとコメント。また、同社の取締役会においても社外役員などから「事業の目指すべき方向性だけでなく、自分たちの社会的使命をしっかり示すべき」という提案があり、今回のかたちになったという。

同社のSDGsでは、事業を通じて解決する社会問題として「通信」「グローバル」「地方創生」「教育」「金融」を、企業活動を通じて解決する社会課題として、「人材育成」「女性活躍推進」「人権・D&I」「地球環境」の九つテーマを掲げている。そして、課題解決には、自社のみならず関係企業とのパートナーシップも重要なものとしている。

これらのテーマの中でも、特に同社が強調した解決するべき社会課題として掲げたテーマが、「通信」と「地方創生」の2つだ。

「通信」に関しては、「安全で強じんな情報通信社会の構築」というコンセプトにサステナビリティ目標として、4G LTE人口カバー率99.9%超とすること。全都道府県での5G商用サービスの提供。通信局での浸水、耐震対策、そして通信ルートの強じん化対策の実施を目標として提示している。

  • KDDIの事業を通じて解決する社会課題

  • と企業活動を通じて解決する社会課題

特に通信に関しては、9月上旬に発生した台風15号において、同社がこの災害において、どのような対応をしたのかついて具体的な説明があった。

内容は、au基地局復旧対応として復旧要員約4,000人を動員し電源車、ポータブル発電機約330台を用意。通信の確保には車載型や可搬型基地局、約50台を用意して対応したという。

加えて、同社の船舶型基地局KDDIオーシャンリンクを活用。館山市洲崎地区、大島龍王崎でもエリア支障の解消に成功している。また、被災地支援活動として、auショップ充電サービスを84カ所で、通信機器の貸し出しを37カ所で実施、約1,200台の無料Wi-Fiの解放もいっている。

同社では、これらの災害対策(BCP:Business Continuity Plan)について、「社会のインフラを支える、いかなる災害でもサービスを提供し続ける」ことを果たすべき重要な責任と位置づけ、全社版事業継続計画を策定。500人体制の強固なBCP体制を構築し運営しているという。

  • KDDIの車載型基地局と船舶型基地局KDDIオーシャンリンク

そして、もうひとつ強調するのが「地方創生」への取り組みだ。

KDDIでは、福井県でのIoT活用による「鯖、復活」養殖効率化プロジェクト、長野県での山間地域における買い物弱者へスマートドローンで日用品を配送するプロジェクト、同じく長野県での5Gを用いた除雪車運行支援の実証実験など、2019年から2021年度の累計で、IoT、ICTを活用した地域との課題解決の取り組みを60件以上実施している。

そんな活動の中で同社は、現地で支える企業、人材がいないこと実感。地方問題の解決のため、地方の企業や新規のベンチャー企業を育成、支援するため2019年4月に「KDDI Regional Initiative Fund 1号」を組成。ファンドを通じて出資、支援することで地域の成長を促す活動をいっている。また、人材の育成に関しては、地域教育機関やパートナー企業と連携し地域人材の育成を推進。同社でもICTリテラシーがある人材を派遣するなどの取り組みや5Gテクノロジーを使った遠隔教育なども検討しているという。

同社では、これらの活動を通してサステナビリティ方針に基づく企業価値の向上を目指していくことを説明。今回紹介はできなかったが、通信や地方創生以外にも様々なサステナビリティ活動をいっている。

同社では「通信というものを事業の柱としながら、様々な分野で新しい価値を生み出し、社会の持続的な成長に貢献する」ことを企業理念としており、今回のSDGsの策定もその理念実現の延長線上にあると言えるだろう。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsにより、これらからの時代の企業は、自社の発展だけでなく、社会や環境に対する持続的な発展と様々な社会問題解決への貢献を強く求められるようになってきている。KDDIの今後の活動に期待したい。