鉄道総合技術研究所は28日、パワーを従来の1.5倍に高めた新しい燃料電池ハイブリッド試験電車が完成したと発表した。搭載機器の小型化・高性能化によって起動加速度を高め、より実用に近づけた。

  • 新しい試験電車の外観

鉄道総研では、2008年から燃料電池とバッテリーのハイブリッド構成とした試験電車を用い、所内試験線での走行試験などを実施している。ただし、この時点では搭載機器が大きく、一部は室内に設置しなければならない状態で、加速性能もディーゼル車並みにとどまっていたという。

今回完成した新しい燃料電池ハイブリッド試験電車は、燃料電池の高出力密度化と冷却装置の分散配置などにより、室内空間を確保するとともに出力を向上。従来の試験電車の編成出力が460kWだったのに対し、新しい試験電車は690kWとなり、1.5倍に増えた。これにより、出力あたりの体積は20%減少。燃料電池用電力変換装置も、SiC(炭化ケイ素)素子や小型遮断器の採用で体積を45%減少できたという。停止した状態からの加速性能を示す起動加速度も、従来の1.5km/h/sから2.5km/h/sに向上している。

  • 試験電車に搭載した機器の配置

  • これまで搭載していた機器がなくなった室内

今後は所内試験線での走行試験を行い、エネルギー効率向上をめざしたハイブリッドシステムの制御方法の改良や、燃料電池への負担が小さい制御方法などの研究開発を行う予定としている。完成した試験電車は、8月30日まで開催される「鉄道総研技術フォーラム2019」でも展示される。