8月22日に東西の将棋会館で、第78期順位戦(主催:朝日新聞・毎日新聞)のB級1組4回戦とC級2組3回戦(後半の13局)が行われました。

午前中、千田七段の消費時間は0分! 「鬼のすみか」順位戦B級1組

  • 初白星を挙げた永瀬拓矢叡王(左)、連勝がストップした千田翔太七段(右)

B級1組で注目を集めたのは永瀬拓矢叡王vs千田翔太七段の一戦です。2人は第76期のC級1組から2期連続昇級を決めて、今期がB級1組の初参加。お互いがどう思っているかはわかりませんが、よきライバル関係といえるでしょう。

永瀬叡王は今春に初タイトルを獲得した後、9月から始まる王座戦五番勝負の挑戦権も獲得しました。ただし順位戦は、ここまでまさかの3連敗。早く1勝を挙げて巻き返しを図りたいところです。

一方の千田七段は、コンピュータを使った研究が有名な棋士です。毎年、安定した好成績を収めており、直近の10局は9勝1敗。順位戦は3連勝のスタートダッシュを決めて、この対局に臨みました。

その一戦は千田七段が先手で、角換わり腰掛け銀へと進みました。早い段階で新手が出たとはいえ将棋そのものは自然な進行だったのですが、ある驚きがありました。

昼食休憩までの消費時間は永瀬叡王の1時間32分に対して、千田七段はなんと0分! 初手からノータイム指し(順位戦B級1組は1分未満の考慮時間がカウントされない)を続け、持ち時間6時間を午後からの戦いに丸々残したのです。まるで「この辺まではすべて研究済みですよ」と言わんばかりに。

対局が再開されると局面は勝負どころを迎えて、千田七段も時間を使い始めます。夜戦に入り、盤面は難解な終盤戦。そんな中、「負けない将棋」を代名詞とする永瀬叡王が、自陣に侵入してきた相手の馬に当てて銀をビシッと打ちつけます。千田七段は馬を引き揚げるしかありませんでした。自玉を安全にして優位に立った永瀬叡王は、4戦目にして「鬼のすみか」と呼ばれるB級1組で初白星を挙げました。

この日の対局を終えて、B級1組で首位を走るのは菅井竜也七段になりました。松尾歩八段を千日手指し直しの末に破っての4連勝です。それに斎藤慎太郎王座が3連勝(1局抜け番)で続いています。

またC級2組は3回戦までが終了して、阿部光瑠六段、西田拓也四段、高見泰地七段、三枚堂達也六段、大橋貴洸五段、佐藤紳哉七段、牧野光則五段、梶浦宏孝五段が3連勝となっています。順位戦は来年の3月まで続く長丁場。最後まで目が離せません。