NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、「前畑、頑張れ!」の名実況放送で知られるNHKのスポーツアナウンサー・河西三省役を演じるトータス松本。ロサンゼルスオリンピックでの水泳チームの活躍が描かれる第30回(8月11日放送)では、河西たちの実況ならぬ“実感放送”が生まれた制作秘話が明かされる。

おなじみの関西弁を封じ、標準語のアナウンサーという難役に悪戦苦闘したというトータス松本だが、現場で水泳チームの熱気を肌で感じ、大いに刺激を受けたようだ。

  • トータス松本

    『いだてん~東京オリムピック噺~』で河西三省役を演じるトータス松本

――河西三省役のオファーが入った時の感想から聞かせてください。

僕は前作『西郷どん』も観ていましたが、『いだてん』は発表になった時から楽しみにしていました。実はもしかしたら何か、オファーの話が来るんじゃないかなと勝手に思っていたんです。何の根拠もないんですが(笑)。

上方漫才師や上方落語家などの役なら、面白そうかなと思っていたんです。それで実際に『いだてん』出演のオファーをいただいて「やったー! ほんまに来た!」と喜んでいたら、まさかのアナウンサー役だったので「やれるかい!」という気持ちと、「やれそうな気がする」という両方の気持ちがありました。

――その両方の気持ちについて、具体的に聞かせてください。

「やれるかい!」と思ったのは、やったことのない標準語で話すアナウンサー役という点。「やれそうな気がする」と思ったのは、声の部分です。手前味噌ですが、僕は歌を歌っているから強い声を持っていると自負しているところはあるので、もしそこを望まれているのであればやれると思いました。でも、オファーしていただいて、素直にうれしかったです。

宮藤官九郎さん脚本の作品に出られるということと、また、大河ドラマで、やったことのない役柄をやらせてもらえるといううれしさもあり、いろいろな気持ちが一気に押し寄せてきました。

――実際にやってみて、標準語でのお芝居は大変でしたか?

今まで何回かお芝居をさせていただきましたが、すべて関西弁でのお芝居でした。しかもアナウンサーだから、一番高度な標準語を使う役。ただ、現代人が使っている日常会話の標準語だとすごく違和感があると思ったけど、アナウンサーは芝居がかっているから逆にやれるかなとも思いました。でも、それは大きな間違いで、ものすごく難しかったです(苦笑)。アナウンサー的な「こんにちは」の一言も、最初は全然OKが出ませんでした。

  • トータス松本

――ロスオリンピックは、実況放送ではなく、いかにも実況しているという形の実感放送だったそうですが、かなりユニークですね。

実況ができなかったので、実感放送になったらしいんですが、本当にそんなことがあったんや! と思ってビックリしました。この回の撮影は、めちゃくちゃ面白かったです。もちろん、当時よりもかなりデフォルメされていると思うけど、「そんなアホな」という感じが、めちゃくちゃ笑えます。そこは自分でも振り切って、面白おかしくできたんじゃないかなと思っています。

――今後の見どころについても聞かせてください。

ロスオリンピック、ベルリンオリンピックと、見どころだらけです。スポーツというものが、以前はこんなに窮屈なものだったのかと驚くし、それをなんとかしてやろうという選手のエネルギーもひしひしと感じます。また、戦争に巻き込まれ、スポーツが政治に利用されていく過程で、田畑さんや選手たちのもがきや葛藤は、脚本を読んでいるだけで、たまらない気持ちになりました。見どころは満載です! としか言いようがないです。

  • トータス松本
■プロフィール
トータス松本(とーたす・まつもと)
1966年12月28日生まれ、兵庫県出身。1992年にロックバンド・ウルフルズのボーカリストとしてデビュー。ソロ活動も行い、ドラマ、CM、映画にも出演する一方で、執筆活動も行う。NHK大河ドラマは『龍馬伝』(10)に続いて2度目の出演となる。そのほかのドラマは『家族のうた』(12)、『スニッファー 嗅覚捜査官』(16)などに出演。

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