ジンズホールディングスはこのほど、慶應義塾大学発のベンチャーである坪田ラボと共同で「バイオレットライト」に着目した共同プロジェクトをスタートさせた。近視になる人が世界規模で増えている中、かけるだけで近視を抑制できるメガネを開発し、2020年以降に商品化したい意向を持っているという。

  • JINSと慶應大学発のベンチャーが「近視進行抑制メガネ」を開発する。写真はジンズホールディングスの田中仁氏(左)と慶應義塾大学の坪田一男教授

バイオレットライトとは

はじめに慶應義塾大学 医学部 眼科学教室の坪田一男教授が登壇して概要を説明した。

バイオレットライトとは、近視進行の抑制に効果があると考えられている光。太陽光に含まれる波長360~400nmの紫色の部分が、このバイオレットライトにあたる。

人は眼軸長の延伸により近視になるが、バイオレットライトを浴びることで、それを抑制できるという。「外でよく遊ぶ子どもは近視になる率が低い」という海外の調査結果がきっかけになり、この光についての研究が進められることになった。

  • 太陽光の波長360~400nmの紫色の部分が、バイオレットライト

そこから一歩、飛躍して「バイオレットライトを照射するメガネ製品」を開発してはどうか、というアイデアが生まれた。JINSでは、まず近視が進行する6歳~12歳を対象にしたメガネの開発を目指す。なお、すでに近視になってしまった大人にもバイオレットライトは一定の効果があるとのこと。ゆくゆくは、大人向けのメガネの開発にも着手したい考えだ。

  • バイオレットライトで眼軸長が伸びないことを発見した、坪田教授ら慶大眼科のチーム

かつて坪田教授と共同で開発した、ブルーライトをカットするメガネ製品で成功しているジンズホールディングス代表取締役CEOの田中仁氏は、今回のコラボの成果にも大きな期待を寄せている。この日、報道陣には「バイオレットライトを自ら照射するアイウエア」という商品コンセプトのイメージビジュアルを公開した。

  • この日、公開されたコンセプトビジュアル。フレームの上側からバイオレットライトが発光する。JINSでは、世界初の近視進行抑制 メガネ型 医療機器と説明している

「子どもが年間に浴びるべき太陽光の量から逆算して、日々の照射量、照度などを定める。メガネのフレームからバイオレットライトを照射することで、室内にいながらにして、屋外で遊んだときと同じ効果を期待できる」と田中氏。ライトが視界に入って邪魔にならないよう、子どもがかけやすいように配慮された、軽量で弾力性もある製品になりそうだ。ちなみに製造販売の承認が得られる時期は、2023年頃とのことだった。

  • メガネが「視力補正」という役割から、近視進行そのものを抑制するソリューションへと拡大する、と田中氏

大人の近視に効果は見込めるのか

質疑応答で、記者団から質問が寄せられた。

価格について田中氏は「まだ決まっていません。なるべくたくさんの子どもが使えるよう、リーズナブルなものにしたい」と回答。保険が適用できるのか、という問いには「いまだメガネにもコンタクトレンズにも、保険が適用できる製品はありません」。

まだ近視が進んでいない(目が悪くなっていない)子どもが使う製品になるのか、という質問に坪田教授は、そうした使い方もあるとしつつ「ほかの供給方法として、デスクトップスタンド型にしてバイオレットライトを照射する、といったことも考えています」とした。

  • 製造販売承認までのロードマップ

JINSの紫外線をカットするメガネをかけていると、バイオレットライトもカットするのか、という問いに田中氏は「バイオレットライトだけ通すメガネも発売しています。それをかけていても、屋外に行く必要は生じるので、次の世代に向けて、屋内にいてもバイオレットライトを浴びることができるメガネを開発しているところです」と回答した。

大人の近視への効果について聞かれると、坪田教授は「昔は、近視は年齢を重ねると止まると言われていました。でも、進行し続けてしまう方もいることがわかった。バイオレットライトは、大人の強い近視にもプラスに働くことが発見されています。そこで大人向けの製品の開発も進めていく。しかし、もうひとつ新たな研究が必要になります。したがって、子ども向け製品を開発した後になりそうです」と説明していた。