会社に勤めていれば給与から引き落とされていた健康保険の保険料ですが、退職したら自分で支払わなくてはなりません。何かしら新たな仕事に従事していれば、保険料もさほど負担ではないかもしれませんが、高収入から、いきなり無職などになると保険料の負担は想像以上です。

少しでも節約するために、市区町村の国民健康保険に加入する以外に、どのような方法があるのでしょうか。

  • 退職後、保険の支払いを安くするには?

    退職後、保険の支払いを安くするには?

健康保険の制度の基礎

最初に健康保険の仕組みを再確認しておきましょう。どの健康保険に加入しているかで、退職後の対応も違ってき、原則は現在加入している保険の管轄に問い合わせることになります。

■国民健康保険
市区町村国保と国保組合を合わせて約3,500万人の加入者数がある国民健康保険。地域の市区町村が管轄するものが一般的ですが、業種や職種によって加入できる国民健康保険組合もあります。医師・歯科医師・薬剤師等の組合、建設関係の組合、その他の組合等、約300万人が加入しています。

■協会けんぽ(全国健康保険協会管掌)
2008年に政府管掌健康保険制度より移管し、健康保険適用事業所である中小企業の従業員とその扶養家族が加入する医療保険。保険料率は都道府県単位で異なり、約3,700万人の加入者があります。

■組合健保(組合管掌健康保険)
社員数700名以上の企業は国の認可を受けて、自社独自の健康保険制度を設立でき、組合健保と称されます。加入者はおよそ2,900万人です。

■共済組合
約900万人の公務員等が加入する制度です。

■後期高齢者医療制度
75歳以上の高齢者が加入する医療制度で、加入者は約1,600万人となっています。

退職後の健康保険の加入、3つの選択肢

退職後の健康保険には、「健康保険任意継続」、「国民健康保険に加入」、「ご家族の健康保険(被扶養者)」の3つの選択があり、それぞれの要件や毎月納める保険料などを比較の上、選択することになります。

■健康保険任意継続制度について

健康保険任意継続制度は、会社などを退職して被保険者の資格を喪失したとき、本人の希望により継続して被保険者となることができる制度です。上記協会けんぽの加入者は下記の要件となります。

1、資格喪失日の前日(退職日)までに継続して2ヵ月以上の被保険者期間があること。退職せず、勤務時間・日数の減少により健康保険の資格を喪失した場合も該当します。

2、資格喪失日から20日以内に、「任意継続被保険者資格取得申出書」を提出すること。

自宅住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部へ申請。保険期間は2年間で、保険料は退職時の標準報酬月額×お住まいの都道府県別保険料率となります。

会社負担分も自分で支払わなくてはなりませんので、勤務時の保険料の原則2倍となります。ただし、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていた場合は、標準報酬月額は30万円で計算します。なお、40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者に該当する方は、介護保険料が加わります。

組合健保の場合は、独自の仕組みの場合もありますので、各組合に詳細を問い合わせてください。

■国民健康保険に加入する

国民年金の保険料は前年度の所得によって異なります。また、全国一律というわけではなく、市区町村によって多少変わります。東京を例に、住宅地の世田谷区とオフィス街の千代田区で比較してみましょう。

賦課基準額とは、サラリーマンの場合は下記のとおりです。
・前年の所得(給与-給与所得控除)-基礎控除33万円

上記の最高限度額を合計すると年間96万円、月額8万円にもなります。給与が高かった方が、退職して国民年金になると、相当額の保険料を支払わなくてはなりません。介護保険制度はありませんでしたが、私も当時は上記に近い金額を言い渡されて驚愕しました。

なお、65歳未満の方が、非自発的に失業した場合などの保険料軽減措置もあります。

■家族の健康保険の被扶養者となる

配偶者等が会社に勤務しており健康保険に加入していれば、その被扶養者になる方法もあります。配偶者の社会保険の扶養に入れるのは年収130万円がラインといわれています。その範囲で被扶養者になれば、保険料はかかりません。


それぞれの年齢、前年度の収入、離職した理由など様々な要件で、保険料は異なります。離職が決まったら、最初にそれまでに加入していた健康保険の窓口に問い合わせ、任意継続の場合の保険料を算定してもらいましょう。お住まいの国民健康保険の窓口にも、年末調整の源泉徴収票などを持参して問い合わせてみてください。