若い間はいろいろやりたいことも多く、またトライするだけのエネルギーに満ちています。反面、給与もまだ少なく、貯蓄は必要と分かっていても、そう簡単に貯まらないのが実情ではないでしょうか。「そろそろ貯蓄も必要かなあ」と思いつつ、先送りしていませんか? 貯蓄がいくら必要かは、自身の置かれた状況によって様々です。ここでは一般的なサラリーマンで考えてみましょう。

  • 貯蓄をはじめる年齢の限界は?

    貯蓄をはじめる年齢の限界は?

貯蓄を考えなくてもいいケースってあるの?

そもそも、さほど貯蓄を意識しなくても、自然と貯蓄されていくケースはあるのでしょうか。親などの資産と関係なく、自分自身の力でやりくりする若いカップルで考えてみましょう。皆さんはそれぞれの条件にいくつか当てはまりますか。当てはまらないものは、「貯蓄」を意識して取り組むべき部分となります。

  • ともに少なくとも定年まで働く予定のライフワークがあり、正社員として現在働いており、水準以上の収入がある。贅沢には興味がなく、ごくつつましく生活していきたい。

  • 結婚式にお金をかける予定はなく、入籍のみで済ます予定である。現在それぞれにローンはあるが、自分用の住まいがあり、結婚後は安い社宅などに移って、現在の住まいは貸す予定である。最終的には賃貸収入を老後の生活費に充てる予定だ。

  • 親は自立していて、今後も金銭的支援は必要ではない。

  • 子供は2人くらいを考えているが、自力で大学へ行けるような独立心の強い子供に育てたい。自分たちもアルバイトしながら国公立で通したので、子供たちもその路線で考えている。

  • 老後はどちらかの所有のマンションに暮らすか、田舎の空き家などを借りて生活したい。

以上のようなケースは、老後の資金のための貯蓄はさほど必要ではないかもしれません。片方の収入で生活していければ、もう片方の収入はおのずと残っていき、教育資金の苦労もさほどないでしょう。

ここで重要なポイントは、働いて収入を維持したり、早くから住まいを手に入れたりするには、それなりの準備や努力が必要ということ。先々へのしっかりした見通しをたて、より早くから取り組んだ結果なのです。

結婚準備はいつからスタート?

サラリーマンが貯蓄を始めるにあたり、意識するひとつに結婚資金があるでしょう。これも豪華な結婚式や新婚旅行を望むのと、入籍のみの場合では大きな違いがあります。日銀の情報サービス機関である金融広報中央委員会の『暮らしと金融なんでもデータ』によると、結婚に伴う資金は下記のとおりとなっています。

結婚資金は約3/4、新生活の準備資金は約1/2の割合で親から支援を受けています。50人程度の招待客として、恩師2人、上司2人、友人・同僚23人、親族23人とすると、結婚祝い金は約234万円となります。自分たちで用意しているのは差額約120万円という結果となります。一人当たり60万円です。仮に30歳ごろに結婚すると、卒業と同時に準備しだして、年間7~8万円、1か月7千円近くを結婚資金用の貯蓄として必要となります。

もちろん貯金ゼロで新婚生活をスタートするのは不安ですので、その分の貯蓄も必要です。すでに親元から独立して生活していて、奨学金の返済も行っているとすると、相当大変でしょう。

  • 結婚に必要な資金

    結婚に必要な資金

  • 結婚資金等支援、祝い金

    結婚資金等支援、祝い金

貯蓄をスタートするのが遅れると、その分月々の必要準備資金が増えるだけで、余計に苦しくなるだけです。上記の金額、親の支援があったとしても、1年後の結婚が決まってから貯蓄を始めたのでは、毎月5万円の貯金が必要なのです。

その後は何の準備が必要?

結婚の次はマイホームでしょうか。子供を転校させるのはかわいそうなので、入学するまでには欲しいと考える家庭は多いはず。少なくとも5~6年の間に頭金と諸費用分の貯蓄が必要です。さらにその次は、子供の教育資金と老後の資金を準備しなければならなくなるでしょう。

マイホームも子供の教育資金も、人生設計によって大きく違ってきます。親からの資金提供が期待できないのであれば、自力でマイホームを取得できるよう頑張らなくてはなりません。その他にも、転勤族で将来は田舎の親の家に帰るので、マイホーム不要というケースもあるでしょう。

教育費も一人っ子と4人兄弟姉妹では当然違いが生じます。

前述した結婚資金のように、統計値を参考に、自分のライフスタイルと合わせて、いついくら必要かを考えて準備してください。いつから開始すべきかの判断は、月々に準備できる金額にもよります。少しずつしか拠出できないのであれば早くから取り組む必要があるでしょう。今回は取り上げませんが、マイホーム資金、教育費、老後の生活資金等の詳細は、過去の記事を参考にしてみてください。

老後の生活費はどうなる?

年金の支給開始が60歳から65歳となり、今や70歳支給という話も上がっています。「最終的にはいくつになるの? 」と言いたいところですが、現在70歳以上でも相当数が働いています。総務省の『労働力調査』によると、2016年の65歳~69歳までの就業率は44% であり、70歳以上は13.8% となっています。

私は基本的には、65歳~75歳までは、それまで蓄積した資産には手を付けず、年金と仕事の報酬などでやりくりすべきだと考えています。もちろん若い時のように長時間は働けませんし、報酬もごくわずかになるかもしれません。それでも年金と報酬で生活を維持し、わずかばかり月々から余剰金を出して、旅行や耐久消費財の買い替えなどに蓄えることをお勧めしていています。

つまり「貯蓄をはじめる年齢の限界は? 」という命題に加えて、75歳までは貯蓄を続けるべきではないかと考えています。月に2万円ずつ貯蓄すれば年間24万円となり、ちょっとした旅行や家電の買い替えも可能です。

75歳を超えれば、さすがに特別なケースを除いて、収入を得ることは難しくなるでしょう。それまでの蓄えを取り崩して生活する時期となります。

貯蓄をはじめる年齢は、働いてすぐからがベストなのは言うまでもありません。そして75歳までは、少しでも余力を作り貯蓄すべきだと思います。つまり、貯蓄をはじめる限界は、必要とする資金が用意できる限界の年齢となるでしょう。