東日本大震災前後の日本を舞台に、心に傷を抱えた人々が織りなす人間模様を描いた『そして、生きる』(WOWOW)。8月4日に放送開始となる本作で主演を務めたのは、女優・有村架純と俳優・坂口健太郎だ。これまで何度も共演を重ねている有村と坂口に、7月に開催された本作の完成披露試写後にインタビューを行い、脚本家・岡田惠和が紡ぐストーリーや、芝居を通じて感じたお互いの魅力や意外な一面、そして幸せの在り方などについて語ってもらった。

  • 有村架純(左)と坂口健太郎
    ヘアメイク:尾曲いずみ(有村)、廣瀬瑠美(坂口)
    スタイリング:瀬川結美子(有村)、檜垣健太郎(little friends)(坂口)

――東日本大震災を含む悲しい現実を描きながらも、生きることを温かく肯定するような物語だと感じました。有村さんは地元アイドルの活動を経て女優を目指す瞳子を演じられましたが、どんな面でお芝居を楽しめたのでしょうか?

有村:自分の中では、いつもだったらしないようなセリフの言い方とか、いつもだったらここで息継ぎしないけど息継ぎしてみよう、この句読点はいつも意識するけどなくそうとか、細かいことで言うと、そういうことを考えてやってみたり。そういったことで、瞳子というキャラクター像が出来上がっていく過程が楽しかったですね。あとは、ドキュメンタリーっぽく、生っぽく、監督が撮りたいということだったので、台本を読んでセリフだけ覚えて、あとは現場で。現場にいるということに徹するのを楽しんでいましたね。

――完成披露試写会の舞台挨拶で、岡田さんのことを「自分自身を超える作品をプレゼントしてくれる」と表現されていました。これまでにも映画『阪急電車 片道15分の奇跡』やNHK連続テレビ小説『ひよっこ』などでお仕事されてきましたが、本作はご自身にとってどんな面でプラスになりましたか?

有村:瞳子の身にも色々なことが起こるし、私自身の毎日にも、色々なことが起こる一か月半でした。それは瞳子を演じることに生かされていたんです。舞台挨拶でもお話ししたのですが、有村架純としてはない日常が、瞳子として生きると、そこにはあって。それを一か月半、乗り越えるだけで「(瞳子として)生きていたなあ」という実感になっていたんです。それが自分の中では達成感だったり、この作品が良い作品になっていてほしいなという思い、そういったことに繋がっていましたね。

――坂口さんは自分の生きる道を決めかねている大学生の清隆を演じられました。清隆は非常に繊細で感情の揺れ動きも大きい青年でしたが、どんな部分を大切にして演じていましたか?

坂口:架純ちゃんがお話ししたたように、現場に入ってやることといったら、本当にセリフを覚えたくらいなんですよね。そこ(=現場)で生まれるものはとっても大事にしなきゃいけないなあと思ったし、敏感に反応しなきゃいけないなとも思いました。舞台挨拶で月川翔監督も仰っていましたけど、何度も何度も繰り返して固めるというよりは、もっと柔らかく自由に。カットもそんなになかったですし。その瞬間の、その時にしかできないことをしようと思っていましたね。

今あのシーンを撮ろうと思うと、たぶん絶対に撮れないと思うんです。その時の自分だからできたんです。その時に一緒にいた架純ちゃんや知英さん、スタッフさんや環境、そういうものにアンテナを強く張っておくというか、敏感に受け取って、こっちも敏感に反応しようと心がけていました。

――瞳子と清隆は、劇中でそれぞれ非常に厳しい現実に直面しながらも、一歩ずつ人生を歩んでいきます。お二人はそれぞれ、瞳子と清隆をどんな人間だと捉えていましたか?

有村:瞳子は、どんな境遇に置かれようと、自分の中での葛藤はありますけど、いつもきっと客観的に物事を見て判断していくような、地に足がしっかりついた女性で、男前な性格をしているんです。苦肉の選択だとは思うんですけど、私自身だったらそっちを選ばないだろうなと思うような道を潔く選ぶというのは、本当に一人の女性として尊敬する部分でしたね。

坂口:男というものの弱さというか、そういうものを清隆からとても感じました。日常において、完全無欠な人なんていないし、どこか痛みは伴ってくるものじゃないですか。悲しみや痛みというのは、それ自体も、清隆の中で糧になっているというか…。そういうことを考えてお芝居していましたね。だから弱くてもいい、情けなくてもいい、悲しくてもいい、でも彼の痛みを僕もちゃんと理解してあげないといけない。それをカメラを通して見せなきゃいけないんだろうなと思っていました。