フジテレビのバラエティ番組を制作する編成局(現・編成制作局)制作センター第二制作室による「第4回企画プレゼン大会」が、3月29日に東京・台場の同局本社で行われた。公開イベント形式で行われるこの大会では、第1回で、現在ゴールデンでレギュラー放送される『超逆境クイズバトル!!99人の壁』が優勝企画(金メダル)に選ばれ、その後も『ロケ芸人最強決定戦 外王』『BACK TO SCHOOL!』といった単発番組が生まれている。

果たして、今回はどんな企画が番組化されたのか。イベント終了後、放送を勝ち取った制作者と、プレゼン大会の立案者である坪田譲治第二制作室担当局長(現・番組審議室担当局長)に話を聞いた――。

  • 「13階クリエイター企画プレゼン大会」ファイナリストの面々(前列左・右は、司会を務めた坪田譲治担当局長と内田嶺衣奈アナウンサー)

    「13階クリエイター企画プレゼン大会」ファイナリストの面々(前列左・右は、司会を務めた坪田譲治担当局長と内田嶺衣奈アナウンサー)

第二制作室のオフィス階数にかけて「13階クリエイター企画プレゼン大会」と名付けられるこのイベントは、会場に集まったフジテレビ社員らの投票で上位に入った企画を、編成部が枠を空けて番組化を即決定。今回は上位2本に加え、編成部に推薦される“トライアウト枠”の計3本が放送される。

集まった企画数は過去最高の171本と、前回の59本から約3倍増で、その中から8本(フジ社員7本+外部スタッフ1本)がファイナリストとして登壇。観覧客数も過去最高レベルの盛況で、坪田氏は「『99人の壁』から第二制作で若い人の下剋上の感じ、いい意味でガツガツした闘争心が芽生えてきたので、それを今日も期待したいと思っています」と発破をかけた。

■テレビで扱われない笑いになる裁判

『実録スクープ!その時、裁判官は言った』(7月27日 16:25~17:20) (C)フジテレビ

この結果、第2位(銀メダル)に選ばれたのは、前回『学べるミュージカる』でトライアウト枠に選ばれ、『ダウンタウンなう』で総合演出を担当する田村優介氏(07年入社、現・編成部)の『実録スクープ!その時、裁判官は言った』(27日 16:25~17:20)。実際にあった裁判官が被告人にかけた言葉に着目し、裁判記録・当事者のインタビュー取材・再現ドラマで描く。

以前、報道局時代に司法クラブで記者をしていた田村氏は、その経験を生かして立案したといい、「皆さんが思ってる以上に裁判というのはすごくドラマチックで、法廷の中で裁判官と裁かれる被告人の間に、人情ドラマが実はめちゃくちゃあります」と説明。

重要文化財に放火した男に対し、「刑務所に入りたいなら、放火のような重大な犯罪じゃなくて窃盗とか他にもあったでしょ…」と諭した事例(93年・甲府地裁)などを紹介し、「泣きもあれば笑いもある。いろんな要素が詰め込める面白い番組になるんじゃないか」と、想像をかきたてた。

イベント終了後、田村氏は「笑いになる裁判って実はあるんですけど、テレビでは扱われていないんです。それに、人間臭い、説教臭い、しゃべり好きの裁判官が結構いるので、どこかでネタにできるかなというのを、この7~8年思ってたんです」とコメント。「“人情”というキーワードが重要だと思っているので、どバラエティではなくて、事件を煽(あお)るところに寄らず、かといって裁判官の言葉を茶化したりせずに、フラットに作ろうかなと思ってます」と、新たなジャンルの開拓に意欲を示した。

  • 銀メダルに選ばれた田村優介氏

■ゆくゆくは27時間テレビの通し企画へ

『日本列島ローカルスクープ なんてニュースだ!もういいゼ!』(7月13日 16:25~17:20) (C)フジテレビ

そして、1位(金メダル)に選ばれたのは、『関ジャニ∞クロニクル』の総合演出を担当する角山僚祐氏(09年入社)の『日本列島ローカルスクープ なんてニュースだ!もういいゼ!』(13日 16:25~17:20)。全国のローカルタレントたちが、人脈・情報網を駆使して地元の仰天スクープを紹介するという番組だ。

このプレゼンのために、水戸まで行って茨城のローカルタレント・ジェームス英樹に会ってきたという角山氏。制限時間が迫る中、大型フリップの扱いに混乱しながら、ジェームス英樹から送られてきた写真付きで「女子高生の行列ができる立ち飲み屋」「バラック小屋が立ち並ぶキャバレー」というネタを事例として挙げ、「ゆくゆくは27時間テレビの通し企画へ成長させたい」と意気込んだ。

会場からの感想で、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』演出の中川将史氏に「昨日の夜、自分たちのADをすごい稼働させていろいろ(プレゼン用の小道具を)作らせていたのを見たけど、それは自分でやったほうがいいんじゃないかな(笑)」と暴露されながらも、汗をかいたプレゼンが実を結んだ角山氏。優勝が決まり、「フリップ作ってくれたADさん、本当にありがとうございました。一緒にいろんな地方ロケ行きましょう」と呼びかけていた。

イベント終了後、角山氏は「最初は地方紙の記者が表に立つとか考えたんですけど、ローカルタレントばかり扱っている番組ってあんまり見たことないというのと、彼らが一番情報を知っているというところをうまく組み合わせることができるんじゃないかと思ったんです」と、企画のきっかけを紹介。『秘密のケンミンSHOW』との差別化を尋ねると、「みんなが知らないローカルタレントが紹介するというところと、あと彼らがゆくゆくは全国区になっていけば」と狙いを語った。

  • 金メダルに選ばれた角山僚祐氏

■彼女にフラれたショックを企画に

後日選考した“トライアウト枠”には、『痛快TVスカッとジャパン』ディレクター・佐々木崇人氏(12年入社)の『移動式チャペルCARが行く』(9月以降)が決定。全国の街を訪れ、そこで出会ったさまざまな夫婦のために、どこでも結婚式が挙げられる「移動式チャペルカー」を使って式を開催するというロードムービー企画だ。妻に対して、サプライズの要素も盛り込む。

トライアウト枠に選ばれた佐々木崇人氏

佐々木氏は「昨年の12月に彼女にしっかりフラれまして、結婚まで考えていて場所も探していたんですね。正直めちゃくちゃ落ち込んだんですけど、そのとき僕の心を潤してくれたのが移動式チャペルカーなんです」と紹介。「僕が幸せになれなかった分、これを使ってみんなを幸せにしてあげたい。とにかくハートフルな企画をやって、その徳が僕にちょっとでも返ってくればいいなと思っております」と、転んでもただでは起きない精神を見せていた。