山陽電気鉄道は5日、3000系3030号のツートンカラー(旧標準色)復刻を記念し、貸切列車の運行イベントを実施した。約30年ぶりという懐かしの車体塗装を施した3030号は7月6日から営業運転を行い、引退予定の2021年春頃まで運行されるという。

  • ツートンカラーを復刻した山陽電気鉄道3000系3030号(写真:マイナビニュース)

    ツートンカラーを復刻した山陽電気鉄道3000系3030号

同社の3000系は鋼製車・アルミ車に分けられ、3両固定編成・4両固定編成もあるなどバラエティに富んだ系列だが、現在は6000系新造車両による置換えが進む。1968~1969年に製造された3030号(1号車から「3030」「3031」「3505」「3615」)は、鋼製車の中でも更新工事の行われていないオリジナル鋼製車。最後の定期検査を受け、営業車両として運用するにあたり、鉄道ファンを中心に根強い人気のある旧標準色の車体塗装とした。昭和の時代を駆けた山陽電車の姿で、引退まで営業運転を行う。

ツートンカラー復刻を記念した貸切列車の運行イベントでは、応募者の中から約140名を招待。クリームイエローとネービーブルーの塗装を施し、復刻記念のヘッドマークを掲げた3030号が山陽姫路駅の1番線に入線した後、ホームで出発式が行われた。

  • 3030号が山陽姫路駅へ。出発式ではテープカットや担当運転士への制動弁ハンドル授与などが行われた

山陽電気鉄道の安全推進・企画部長兼鉄道営業部安全担当部長、井上俊行氏は挨拶の中で、「このツートンカラーは、戦後間もない昭和23(1948)年に登場した820形から採用されました。陽光煌めく播磨灘の海の色と砂浜の色を表したと伝えられています」と説明。1990(平成2)年に塗装変更されて以来、約30年ぶりとなる3030号のツートンカラー復刻に、「いままでの歴史をご存じない一般のお客様がこの電車を見たら、さぞかし驚かれるのではないか。いまから楽しみです」とコメントした。

老朽化の目立つ3000系を置き換える計画も大詰めを迎えているとのことで、「3000系未更新車の定期検査が最後となることを記念し、登場当時の塗装を再現して引退への花道にしようというのが(ツートンカラー復刻の)趣旨。つまり、この3030号が引退する2年後の春かその先頃までに、未更新の3000系はすべて廃車の予定です」と井上部長は言う。「ただし、3000系のうち更新済みの電車やニューアルミカーは当面残る予定なので、安心してください」とも話していた。

また、井上部長は「このようなイベント列車が注目を集めることは非常にありがたい」とした上で、「ご承知の通り、一部ファンの危険な行動、一般のお客様にご迷惑をおかけする行動が非常に目につくのも事実。当社も含め、各鉄道事業者が頭を痛めています」「『人が集まるのが嫌なら、こんなイベントはやらなければいいじゃないか』といった意見も頂戴しており、ごもっともだと思っています。それでも今回、このイベントを決行する当社の心意気を汲み取っていただき、3030号が再来年の春まで無事に走りきれるように、皆様のご協力をお願いしたいと思います」と述べた。

出発式ではテープカットや担当運転士への制動弁ハンドル授与などが行われ、3030号の貸切列車は11時45分頃、山陽姫路駅を発車した。

3000系は現在、各駅に停車する普通を中心に運用されるが、貸切列車として運行された3030号は迫力ある走行音を響かせつつ、特急並みの速度で本線を走行し、飾磨駅・大塩駅・高砂駅以外の途中駅は通過。速度が100km/hに達したことを伝える車内放送もあった。飾磨駅では網干線の列車として運行される6000系が見られ、大塩駅ではドアカットが行われてきた上りホームを延伸する予定との説明も。高砂駅を発車した後、進行方向右側に旧国鉄高砂線の廃線跡が見え、加古川を渡り、尾上の松駅の東側で廃線跡の道路が山陽電鉄本線と立体交差する様子も確認できた。

  • 山陽姫路駅でアルミ車と並ぶ場面も。3030号の貸切列車は特急並みの速度で本線を走行した

  • 東二見車庫で記念撮影会。ツートンカラーで活躍した当時の方向幕も再現された

3030号の貸切列車は12時10分頃、東二見駅に到着。参加者らは駅から徒歩で東二見車庫へ移動し、車庫内に展示された3030号の記念撮影会に臨んだ。ツートンカラーの旧標準色で活躍した時代の方向幕も再現され、姫路方先頭車(3615)は上下とも白地に黒で「普通」「姫路」と表示。神戸方先頭車(3030)は白地に赤で「=急=」、白地に黒で「神戸」の表示に続き、赤地に白で「特急」、白地に黒で「姫路」、さらに「S特急」「阪神神戸三宮」の表示も。車体側面の方向幕でも「特急」「S特急」などの表示が見られた。車両の前にパネルが置かれ、3030号と参加者の記念撮影も行われた。

クリームイエローとネイビーブルーのツートンカラーを復刻した3000系3030号は7月6日から通常運行となり、同日の東二見駅5時29分発・阪急神戸三宮駅6時23分着の普通から営業運転を開始する。その後は阪神・阪急神戸三宮~山陽姫路間にて、普通を中心にS特急でも運用される予定。ツートンカラー復刻車両の運行スケジュールは山陽電気鉄道の公式サイトに公開されている(運転時刻は予告なく変更される場合がある)。

なお、3030号はしばらく復刻記念のヘッドマークを掲げて運行されるが、引退予定の2021年春まで、四季折々のヘッドマークを復刻させて掲出する計画もあるとのこと。他にもグッズ製作販売をはじめ、さまざまな企画が予定されている。

  • ツートンカラー(旧標準色)を復刻した3030号の外観・車内