外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年6月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。

【ユーロ/円 6月の推移】

6月のユーロ/円相場は120.783~123.163円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約1.4%上昇(ユーロ高・円安)した。

米利下げ観測などの影響でドル安・ユーロ高が進行。利下げ期待を背景に米国株が上昇したこともあってユーロは対円でも強含んだ。欧州中銀(ECB)は6日の理事会でフォワードガイダンスを修正して低金利の長期化を示唆したが、米連邦準備制度理事会(FRB)に比べると緩和余地が小さいとの見方が強く、ユーロはむしろ上昇した。

18日のECBフォーラムでドラギ総裁がハト派姿勢を強めると一時ユーロに下落圧力がかかる場面もあったが、米国株が堅調に推移する中、ユーロ/円の下値は限られた。

【ユーロ/円 7月の見通し】

欧州中銀(ECB)は、早ければ7月25日の理事会で追加緩和に動くとの見方もある。報道などによれば、利下げ(マイナス金利の深堀り)や量的緩和の再開のほか、フォワードガイダンスの再修正(より長期間の低金利維持を示唆)などが検討されている模様。ただ、ドラギ総裁の任期が10月までと残り少ない上に、次期総裁候補の一人にタカ派で知られるバイトマン独連銀総裁が挙がっていることなどを考えると、7月の段階で大規模な追加緩和には動きづらいのではないだろうか。

米中貿易戦争が一時停戦となったことや、ECB理事会が利下げ濃厚な米連邦公開市場委員会(FOMC)の前に行われるという日程上の問題からも、ECBとしては緩和スタンスを強化しつつ様子を見る可能性が高そうに思える。その意味では、7月にユーロ/円相場が下値を探る展開になる公算は小さそうだ。もっとも、欧州委員長人事に絡んで次期ECB総裁にバイトマン独連銀総裁が就任する可能性は低下している模様だ。

ユーロ加盟国の間で政治的な駆け引きが続いており予断は許さないが、欧州委員会のトップ(委員長)とナンバー2の就任にオランダ出身のティメルマン氏とドイツ出身のウェーバー氏が有力とされている。そうなるとECB総裁のポストはオランダとドイツ以外に振り分けられる公算が高まることになる。ECB総裁人事自体は9月にずれ込む可能性が示されているが、欧州委員会のポストは7月15日に臨時首脳会議が開催され、そこで決定するとの見方もある。7月のユーロ/円相場は、ECBの金融政策と次期総裁人事を争点に方向感を模索することになりそうだ。

【7月のユーロ圏注目イベント】

執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya