子どもの教育費、中でも大学費用は多くのファイナンシャル・プランナーが400万円程度は準備しておきたいと提案する大きな負担。それを裏付ける調査はいろいろありますが、ほとんどは回答者が学生本人であること、対象が全国といった理由からやや実感値と離れたデータになることがあります。

その点、東京地区の私立大学教職員組合が実施する『私立大学新入生の家計負担調査』は首都圏、さらに保護者を対象に行っていることから、リアルな調査結果が出るようです。先日公表された2018年度データから、最新の大学費用事情を探ってみましょう。

受験から入学までの費用は自宅通学と自宅外通学で大きく違う

ここ3年、受験費用と私大初年度納付金は下図の通りあまり変化がありません。しかし詳しくみていくと、自宅通学者は1万2602円の増加なのに対し、自宅外通学者は5万502円も増加しています。さらに受験費用については、自宅通学者は4000円減っているのに対し自宅外通学者は1万800円の増加。入学時の住居費も2万2800円増えています。

費用の差を生む最大の要因は、入居時の住居費であることがわかります。費用を抑えることが可能な生活用品費は減っているのに対し、経済状況などの影響を受ける家賃や敷金・礼金は増加。

受験費用についても、遠方からの受験であるにも関わらず費用が大きく変わらないということは、自宅外通学者は受験校数を絞っていることが推察できます。これらのことから自宅外通学者は自身でコントロールできる費用については、極力抑える工夫をしている姿が見えてきます

仕送り額は右肩下がり。家賃の増加で生活費も右肩下がり

入学直後で費用がかさむ5月を除き、6月以降の仕送り額(月平均)のピークは1995年の12万4900円。ところが、それ以降は下図の通りずっと右肩下がり。とうとう2018年は過去最低の8万3100円となりました。

仕送り額が減っているのに対し、最も大きな支出である家賃は右肩上がり。1990年に4万8300円だったのが2000年には5万9600円、その後は微増減を繰り返し2018年はとうとう6万2800円になりました。

仕送り額が減って家賃が上がったということは、家賃の占める割合が増え、家賃を除いた生活費が減るということ(下図)。2018年は仕送り額の75.6%が家賃で、1カ月を30日として生活費を算出するとなんと677円。全国大学生活協同組合連合会の『第54回学生生活実態調査の概要報告』によると2018年のアルバイト収入は4万920円で7年連続増加していますが、それもうなずける状況です。

入学費用を借り入れる家庭は減っているが借入額は増えている

奨学金を安易に借り入れると将来、社会人になってからの返済が大変といった報道が各所でされたこともあり、最近は奨学金を受給する人が少しずつ減ってきています。受給する場合も給付型と併用するなど、腐心の様子がうかがえます。

大学費用が足りない家庭にとって、奨学金と並んで頼りになるのが借入れ。しかし、これも住宅ローンと2本立てなどになると家計に大きな負担となることが周知され、計画的に準備している家庭が増えてきているよう。

下図のように自宅通学、自宅外通学ともに減少しています。ところが、借入額は2000年度に比べ2018年度はいずれも約1.3倍に増加。「入学の年にかかる費用」に対し、自宅外通学者は約8割、自宅通学者は平均以上の額を借りています。

せっかく志望大学に入学しても、生活費不足を補うためにアルバイトばかりしていては卒業に関わります。また親の方も大学費用の返済に追われて老後資金の準備が遅れ、将来、子どもを頼るようでは本末転倒です。早い時期から親子で話し合い、親は事前の準備、子どもは目的意識をもって進路を選ぶことがマネープランを考えるうえでも重要といえそうです。

  • 鈴木弥生

鈴木弥生

編集プロダクションを経て、フリーランスの編集&ライターとして独立。女性誌の情報ページや百貨店情報誌の企画・構成・取材を中心に活動。マネー誌の編集に関わったことをきっかけに、現在はお金に関する雑誌、書籍、MOOKの編集・ライター業務に携わる。ファイナンシャルプランナー(AFP)。