相模鉄道は19日、「インバウンドツアー 相模鉄道職業体験会」の第2弾となる電車運転体験会を厚木操車場(神奈川県海老名市)で実施した。

  • 「インバウンドツアー 相模鉄道職業体験会」第2弾はモヤ700系を使用した電車運転体験会(写真:マイナビニュース)

    「インバウンドツアー 相模鉄道職業体験会」第2弾はモヤ700系を使用した電車運転体験会

6月6日に行われた第1弾では、横浜駅構内で米国の学生たちが駅係員の業務を体験した。今回は米国・ニューヨークのハイスクールを中心とした学生たちが、厚木操車場で電車の運転士・車掌の業務を体験。好奇心と驚きに満ちた表情を見せた。

■モヤ700系の運転体験、操作に難しさも

まずは相模鉄道の蛯原信也調査役が概要を英語で説明。「鉄道で一番大事なことは何ですか?」と問うと、学生たちから「安全!」との反応が勢いよく返ってきた。

  • 会場の厚木操車場には8000系の姿も

  • 相鉄グループの社員たちも歓迎

  • 米国から来た学生たち。まずは車内で説明を受ける

  • 相模鉄道の蛯原信也調査役が英語で説明

説明が終わると、学生たちはモヤ700系の車内で運転体験を行う。モヤ700系は相模鉄道の車両7000系を改造し、2006(平成18)年8月に登場。計4両を2両1編成で運用し、普段は事業用車として、電車基地内の入換や架線観測作業、万が一の際の事故復旧車両などで活躍しているという。なお、運転体験を行うにあたり、線路閉鎖が行われた。

モヤ700系はいまのワンハンドルマスコンの車両とは違い、マスコンとブレーキが別々のハンドルであり、左手と右手で別々の操作を行わなければならない。運転のしくみに関する説明を受けた後、指導運転士の補助の下、学生たちが実際に運転を体験する。

  • 運転方法の説明は英文で用意された

  • 説明を聞く学生たち

厚木操車場内のJR相模線に沿った場所で、学生の運転するモヤ700系が北側から南側へ200mほど前進する。その後は本職の運転士により、元の位置に戻される。

参加者の1人、16歳のデビット君は運転した感想を聞かれ、「Great!」と発言。続いて「マスコンを戻さないといけないとは知らなかった」とコメントした。ニューヨークでは友人の家に遊びに行く際、地下鉄に乗ることがあるという。彼は「日本の風景に興味がある」と言い、「将来は日本に留学したい」との希望を持っている。

  • デビット君が運転に挑戦

  • モヤ700系のハンドルを握る

  • 運転を終えたデビット君

ブレーキの操作に関して、デビット君は「簡単だった」と話していたが、一方で17歳のアレックス君をはじめ、操作に難しさを感じた参加者もいたようだった。15歳のチャーリー君は「運転は助けてもらったので、大変ではなかった」としつつ、「もう少し速く走りたかった」と感想を話した。

■ドア開閉、車内アナウンスなど車掌の業務も体験

モヤ700系を使った運転体験の他に、学生たちはドア開閉や車内アナウンスといった車掌の業務も体験した。ドアを閉める際、足などが挟まっていると異常を検知し、確認を促すシステムがある。相模鉄道の係員が実際にドアに足を挟み、異常であることを示して再確認させ、再度ドアを閉めるといったことを行っていた。

  • 8000系とモヤ700系が並ぶ

  • 確認をしながらドア開閉

  • 脚を挟むと検知される

  • 制帽を被り、車内アナウンスに挑戦

車内アナウンスの体験では、車掌の制服を着用し、制帽を被った学生たちが英語でアナウンスを行った。中にはマイクを使って歌い始める参加者の姿もあった。ちなみに、今回参加した学生たちに話を聞いてみると、3名が学校でスペイン語を習い、1名が中国語を習っているとのこと。日本語での車内アナウンスに挑戦した参加者もいたが、なかなか難しそうだった。

6月に2回にわたって実施された「インバウンドツアー 相模鉄道職業体験会」は、駅係員や運転士・車掌の業務を実際に体験してもらい、訪日外国人に向けた認知度向上を図ることを目的に企画された。将来、日本への留学を希望する学生もいる。鉄道を通じ、日本の社会について知るきっかけとなったことは確かだろう。

  • 相模鉄道駅務サービス課の和田潤一郎課長が体験会を振り返った

同時に相鉄グループにとっても、訪日外国人とのコミュニケーションを通じた社員の人材育成を図る目的があった。取材に応じた相模鉄道駅務サービス課の和田潤一郎課長は、「社内教育の一環として、外国の人と接する勇気を持ってもらうために実施しました。言葉の壁を越えることをリアルな課題として認識できたと思います」と振り返り、「今後も運転体験プログラムを行う可能性はあります。大きな鉄道会社だとここまでできないだろうという自負もあり、機動力を生かしたい」と語った。