昨年(2018年)誕生60周年を迎えた宣弘社制作の伝説的ヒーロー『月光仮面』をモチーフに、まったく新しい世界観、新しいキャラクターを盛り込んだ舞台『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』が、2019年7月~8月に上演されることになった。月光仮面といえば、川内康範氏が原作を手がけた国産テレビヒーローの元祖であり、"どこの誰かは知らないけれど♪"という主題歌のフレーズや、白マスクにサングラス、オートバイと二丁拳銃というスタイルはあまりにも有名。映像として動いているところを観たことがなくとも、名前だけは知っているという人も多いのではないだろうか。

鷲尾修斗(わしお・しゅうと/左)1987年生まれ。東京都出身。『ミュージカル忍たま乱太郎』(2013年ほか)中在家長次役や、超体感ステージ『キャプテン翼』(2017年)三杉淳役、2.5次元ダンスライブ『ツキウタ。』(2016年ほか)葉月陽役など、舞台出演多数。GEKIIKE公演には第3回『君に降りそそぐ、天上の花』から今回の第10回『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』まで連続出演を果たす。伊阪達也(いさか・たつや/右)1985年生まれ。石川県出身。1999年にジュノン。スーパーボーイ・コンテストで準グランプリを獲得。2004年には特撮テレビドラマ『幻星神ジャスティライザー』で主役のライザーグレン/伊達翔太を演じて、子どもたちのヒーローとなる。『ロックミュージカルBLEACH』(2005年)主演:黒崎一護役、『戦国BASARA』シリーズ(2012年ほか)前田慶次役など、近年では舞台での活躍が多い。GEKIIKE公演には第9回『漆黒ノ戰花』に続いての出演となった

2019年に月光仮面をよみがえらせたのは、演劇集団「GEKIIKE」の面々。2010年に旗揚げして以来、年1回の本公演を中心に着実な活動を続けてきた「GEKIIKE」の記念すべき第10回本公演作として『光芒のマスカレード 月光仮面異聞』が上演される。この舞台版・月光仮面はなんと「大正時代」が舞台となり、弱き人々を苦しめる悪があるところにさっすと現れる正義の人"月光仮面"と、同じく正義の心を持ちながらも心に深い闇をたたえる"新月仮面"という2人のヒーローが、互いに異なる"正義"をぶつけあい、対立するというストーリー。原作『月光仮面』のマインドを受け継ぎながら、ヒーローコスチュームや時代設定などで大胆なアレンジを施したこの舞台は、従来の「GEKIIKE」ファンのみならず、"ヒーロー"を愛する幅広い年代の人々心に響くような内容になっていることだろう。

ここでは、主役の月光仮面を演じる鷲尾修斗(GEKIIKE所属)と、新月仮面を演じる伊阪達也にインタビューを敢行し、"自分にとってのヒーローとは""ヒーローを演じることへの思い"など、ヒーローというテーマに沿ったトークを繰り広げてもらった。

――今回、日本のスーパーヒーローの元祖というべき「月光仮面」を継承したことにつきまして、月光仮面役の鷲尾さんは最初にどんなことを思われたでしょうか。

鷲尾:60年以上の歴史を持つキャラクターということで、最初はプレッシャーがありましたし、その一方でとても楽しみでした。僕が1人で月光仮面を演じるのではなく、共演者の方たちやスタッフのみなさんに支えられて舞台は成立しますので、僕自身は何も考えずに、ただ役を演じることで突っ走るしかないと思いました。稽古はこれから始まるのですが、まずビジュアル撮影のときに衣装をビシッと決めると、舞台をやるんだなっていう気持ちが高まりますね。

――月光仮面の白いコスチュームを着た時のご感想をお願いします。

鷲尾:これを着たらもう、カレーは食べられないなって(笑)。

伊阪:その点、僕は黒だから大丈夫だよねって話をさっきしていたら、衣装さんから「カレーは絶対にやめて」って釘をさされたよ(笑)。

鷲尾:食べ物や飲み物はもちろん、油断するとすぐ汚れてしまうので、舞台裏とかで移動するのにも注意しないといけないって思いましたね。

――伊阪さんは、白を基調とした月光仮面とは対照的に、黒いヒーロー"新月仮面"を演じられるとのことですが。

伊阪:ヒーローと立ち位置が異なる、いわゆるダークヒーロー的存在ですね。

鷲尾:これって、ヒーローものでは絶対に人気が出るキャラクターの流れだよね(笑)。

伊阪:そうそう。これまでの特撮ヒーロー作品でも見られましたが、正義というものを突き詰めると、誰にとっての「正義」なのか?ってことを考えますよね。新月仮面は、まっすぐな正義を貫こうとする月光仮面とは違った角度から、自分なりの正義を遂行しようという人物です。2つの異なる正義が作品の中でうまく映えることができるよう、頑張って演じていきたいです。

――悪をやっつけるヒーローを演じることについては、どんな思いがありますか?

鷲尾:やはり男の子にとっては、悪と戦うヒーローというものには憧れますので、自分がそれになれることは嬉しさを感じます。公演に来てくださる方は女性が多いのですが、みなさんにも"ヒーローのカッコよさ"を伝えることができたらいいなと思います。

――ここでお2人に、「自分にとっての"ヒーロー"は誰か」という質問を投げてみます。ヒーローというのは、フィクションでも現実の人物でも構いませんので、自由におっしゃってください。

伊阪:子どものころ、テレビで観ていたヒーローとしては『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(1992年)ですね。『特捜ロボ ジャンパーソン』(1993年)や『仮面ライダーBLACK RX』(1988年)もよく覚えています。

鷲尾:僕は『仮面ライダークウガ』(2000年)が大好きでしたね。あと『星獣戦隊ギンガマン』(1998年)も観ていた記憶があります。

伊阪:クウガって、僕にとっては"最近"みたいに感じるなあ(笑)。そのころはもう中学生になっていたし。

鷲尾:僕は小学5年生だったかな。

伊阪:やっぱり、わずか2歳でも年齢が違うと、テレビの印象も変わってくるんだね。クウガ、カッコよかったよね。後になって気づいたんだけど、オダギリジョーさんがクウガ(五代雄介)やってたんですね。

鷲尾:もっと幼いころだと、テレビでヒーローを観ていたって記憶がぜんぜんないんですよ。サッカーばっかりやっていたから。

伊阪:現実のヒーローでいうと、松井秀喜(元プロ野球選手)さんは僕にとってのヒーロー像をすべて持っている方です。ヒーローという存在は、人々から称賛されるべき行動を取るんですけれど、正体を明かさず、誰からも称えられずに去って行くもの。松井さんも一緒で、ホームランを打っても派手に喜んだりしなくて、ただもくもくとベースを回っていきます。ああいった謙虚な姿勢にヒーローを感じて、憧れますね。