楽天とJR東日本は5日、都内で共同記者説明会を開催し、キャッシュレス決済事業で連携することを明らかにした。2020年春以降に「楽天ペイ」アプリでSuicaの発行とチャージが可能になり、また楽天カードからSuicaにチャージすると楽天ポイントが付与されるようになる見込みだ。

  • 楽天ペイメントとJR東日本が提携を発表した

    楽天ペイメントとJR東日本が提携を発表した

 楽天とJR東日本、両社の思惑

今回の取り組みを通じて、東日本旅客鉄道ではSuicaの利便性の向上をはかる。同社でIT・Suica事業を担当する野口忍氏は、その狙いについて「『普段はプラスチックのカード型 Suicaを交通機関で使うだけ』といったお客様も、モバイルSuicaに移行することでチャージやサービスの利用頻度が高まる傾向があります」と説明。圧倒的な会員数と国内有数のマーケットプレイスを保有する楽天と組むことで、Suicaのポテンシャルがさらに引き出される、と期待感を口にした。

  • 東日本旅客鉄道 常務執行役員 IT・Suica事業本部長の野口忍氏

    東日本旅客鉄道 常務執行役員 IT・Suica事業本部長の野口忍氏

消費者の日常生活を豊かにするサービスを目指している楽天ペイメントにとっても、毎日の通勤通学で利用されているSuicaとコラボできるのは大きなメリット。楽天ペイメントの中村晃一氏は「楽天ペイ(アプリ決済)の利用者は、Suicaにチャージすることで楽天スーパーポイントを貯められるようになります」として、楽天経済圏の活性化につながる今回の提携に手応えを示した。

  •  楽天ペイメント代表取締役社長 兼 楽天 常務執行役員の中村晃一氏

    楽天ペイメント代表取締役社長 兼 楽天 常務執行役員の中村晃一氏

なお発表の時点で、「楽天ペイ」アプリのSuicaで行えることは限定的だ。例えば、モバイルSuicaで対応している「オートチャージ」や「定期券購入」といった機能については、まだ発表されていない。

  • 「楽天ペイ」アプリの利用イメージ。電車・バスなどの交通機関、全国約60万の店舗で利用できる

    「楽天ペイ」アプリの利用イメージ。電車・バスなどの交通機関、全国約60万の店舗で利用できる

中村氏は「フィンテックのリーディングカンパニーとして、国のキャッシュレス化を牽引する」と言葉に力を込める。

「現在のペイメント事業には(非接触型、QRコード、バーコードなどを利用する)様々なプロトコルが存在している。決済手段が増えることは、利用機会が増えること。したがって、どのプロトコルが勝つかではなく、みんなで盛り上げていくことが大事。一方で、ユーザー様の利便性向上のため、アプリはひとつに集約し、ワンストップで利用できた方が良い」と説明し、「楽天ペイ」アプリの優位性をアピールした。

 楽天ポイントでチャージも可能に?

質疑応答には、野口氏、中村氏が対応した。「将来的には、楽天ポイントでSuicaのチャージもできるようになるのか」という質問に野口氏は「この先、どのようなメニューを追加するかは楽天様と検討していきたい。現段階では決まっていない」。中村氏は「今回の提携は、とても大きなトピックスとなった。人々の移動手段と絡めたビジネスの機会をいただけたことで、従来型の決済サービスから枠を広げられる。今後の展開についてはユーザー様の利用動向、ニーズを汲みながら考えていきたい」と回答するにとどまっている。