電子コミック配信サービス・めちゃコミックのアムタスと電子書籍配信サービス・Renta!のパピレスは29日、都内で会見を開き、海外への取次事業で共同出資会社アルド・エージェンシー・グローバル(AAG)を設立すると発表した。アムタスのブランド力と、すでに海外に子会社を持つパピレスのノウハウを組み合わせ、海外の読者へ日本のコミックを届けられるよう出版社を支援していく。

  • アムタス代表取締役社長・黒田淳氏、パピレス代表取締役社長・松井康子氏

    左からアムタス代表取締役社長・黒田淳氏、パピレス代表取締役社長・松井康子氏

2018年3月、アムタスの親会社であるインフォコムがパピレスの株式を取得し、主要株主になったことで両社は協業の可能性を検討。日本電子コミックの取次販売や翻訳サポートなどを行う共同出資会社・AAGを設立することで合意した。設立は7月を予定しており、パピレスの台湾、香港、米国の子会社へ取次事業を行うと同時に、台湾、中国、北米での配信先となる電子書籍事業者の開拓も実施。将来的には、ヨーロッパやその他のアジア地域でも展開することを計画している。

アムタス代表取締役社長・黒田淳氏は、「これまで協業の可能性ということで、いろいろな検討がありました。オリジナルコミック、海外取次事業、AI活用ビッグデータ解析、運用効率化など以外にもいろいろな項目がありますが、それぞれ可能性について検討し、両社で煮詰めていったのが海外取次事業」と経緯を説明。

AAGの代表取締役社長を兼任するパピレス代表取締役社長・松井康子氏は、「日本の電子コミック30万冊に対して、多言語化されている作品数はわずか2万冊しかない(パピレス推定値)」と指摘し、「アニメに関しての翻訳は進んでいると思いますが、マンガは作品数が多いので、国内ほどの規模感で翻訳が進まない。それによって何が起こるかというと、マンガ好きの海外の方は自分たちで読めるようにしてしまう。中にはお金儲け目的以外にも、『みんな読めるようにしてあげよう』という考えの人が海賊版サイトを作ってしまって、それが横行する」と背景となった問題点を挙げた。

現状のままでは、「海賊版サイトは当然ながら出版社さんから許諾を得てない。作家さんの収益にもならない。そうすると、出版社側が海賊版のリスクを考えて海外配信を許諾しなくなり、正規版が回らなくなる」という悪循環が取り巻いていると語る松井氏。AAGは「日本のコミックを世界へ」を理念とし、「代金が支払われるか分からない」「著作権が侵害されてしまうのでは」「配信先が少なくコストを回収できないのでは」「作家からの許諾取得の時間と手間がかかってしまう」「ローカライズのノウハウがない」といった出版社が抱える不安を解消しながら“海外配信の壁”を乗り越え、海賊版撲滅を推進していく。