2024年をめどに刷新される新一万円札の肖像画に、渋沢栄一が採用されたことは周知の通り。では、その渋沢栄一の著書で、企業経営者たちのバイブルとして時代を超えて読み継がれ、また近年は若いビジネスパーソンからも注目されている、『論語と算盤』をご存知でしょうか。

『「人間学×マーケティング」未来につづく会社になるための論語と算盤』(税込1,620円)の著者の一人である、アルマ・クリエイション 池田篤史氏は、渋沢が活躍した時代同様、社会が急激に変化する変わり目である今、この「論語と算盤」を兼ね備えた会社こそが、これからの未来に続く会社であると断言しています。

前回は、これからの社会人に必要な論語(人間力)と算盤(マーケティング)の重要性を話していただきました。今回は、この二つの身に付け方を紹介してもらいます。

  • 論語と算盤の身に付け方とは?

2冊の本をかばんに入れる

論語と算盤のバランスのとれた人材になるために、具体的には何をしたらいいのでしょうか。そのひとつのアイデアとして池田氏は、「2冊の本をかばんの中に入れること」をおすすめしたいと話します。

池田氏「1冊は、目の前の仕事で抱えている課題を解決するような書籍。プレゼンや話し方、コミュニケーションについてなど、なんでも構いません。そしてもう1冊は、生き方とか、考え方とか、自己啓発的な書籍。その2冊を抱えて、自分が今何に不安や悩み、課題を抱えているのかに、常に向き合うのです。

決して複雑に考える必要はありません。純粋に読みたいと思った本を直感で選べばいいのです。選んだ本がそのタイミングで必要としていることが大半ですから。言ってしまえば、読まなくてもいいです。かばんの中に入れてふとした瞬間にパッと見られるようにしておくことが大事。そうして仕事をしていると、気づいたら成長のステップを進んでいるという状態になると思います」。

  • アルマ・クリエイション マネジングディレクター 池田篤史氏

さらにもうひとつ、「加速学習法」を身に付けるといいと話す池田氏。

池田氏「学んだことを実行実践し、気づき、できるようになる力、『知る→する→気づく→できる』のサイクルをスピーディーに回せる『加速学習法』を身につけると、確実にこれからの時代に生き残っていけるビジネスパーソンになれると思います。

これを身に付けると、組織の中でも際立った存在になっていくので、少しずつステップアップして自信を持てるようになり、やがて自分が成長していることを実感できると思います」。

人のキャリアは直線でなく曲線

ただ、成長の途中に、自分でそれに気づくというのは難しいもの。うまくいかないことが続き上司に怒られると、気持ちのベクトルが自己否定の方向に向き、辞めるという選択肢が目の前にちらつきがちです。それに対し池田氏はこう言います。

池田氏「特に入社3年目くらいまでの若手ビジネスパーソンは、キャリアを直線上に考えている方が多いです。右肩上がりに順風満帆に成長していくものだと思っています。

しかし実際には、キャリアは曲線なんです。上がったと思ったら落ち、それを超えてまた上がっていく。右肩上がりになっていたとしても曲線なんです。そういう認識や視点を、早いうちから持っておくことが大切です」。

「辞めたい」と思っているときは、曲線が下がっているところにいる。その状況を理解し、会社や自分を客観的に分析できると、納得のいく選択の上でキャリアを形成できるでしょうと池田氏は言います。

新一万円札に渋沢栄一が採用されたことには、暗に、「論語と算盤を兼ね備えた人材になって、日本を元気にしていきましょう」というメッセージが込められているのではないかと話す池田氏。

これを機に、論語と算盤をキーワードに、自分自身を客観的に見つめなおしてみてはいかがでしょうか。

取材協力:池田篤史(いけだ・あつし)

アルマ・クリエイション
マネジングディレクター
事業創造コンサルティング部 事業部長
『「人間学×マーケティング」未来につづく会社になるための論語と算盤』の共著者である神田昌典主宰、400社の中小企業の経営者が集う次世代マーケティング実践会「The実践会(通称)」を含む、中小企業、中堅・上場企業の経営コンサルティングを行う、事業創造コンサルティング部事業部長。経営トップ・幹部の意思を組織に浸透させていくプロセス構築・実行支援で、多数の実績を持つ。