超低金利が続いて久しい昨今、投資にチャレンジする人は増えています。とはいえ、多くの場合は株主優待が目当てだったり、預貯金だけではお金が増えないという理由からでしょう。巨額に資産を膨らませようと考える人は多くないと思います。

そんな中で「億り人」という言葉をよく耳にするようになりました。投資で1億円以上の金融資産を築き上げた人のことを指して用いられる言葉ですが、1億円という巨額な資産を形成できる人とは、一体どんな人なのでしょうか。

金融資産1億円ってどんなにすごい?

そもそも、投資で1億円の資産を作るためにはどれだけの元手や時間が必要なのでしょうか?

投資の中でもメジャーな株式投資では、買ったときより株価が10倍以上に上がる銘柄もあるのは事実です。しかし、仮に株価が10倍になるとしても、1億円に到達するには投資資金(元手)が1,000万円必要ということになります。

金融広報中央委員会が発表している「家計の金融行動に関する世論調査・二人以上世帯調査(2018年)」を見ると、金融資産を保有している世帯のうち、「債券」「株式」「投資信託」を合わせた投資商品の平均保有額は292万円です。1億円どころか、元手の1,000万円にもほど遠い金額ですね。1,000万円の元手を用意するのは、ほとんどの人にとっては非現実的なことだと考えられます。

では、100万円を元手に年利回り8%で複利運用できると仮定して計算してみましょう。この場合、1億円に到達するには59年10カ月かかります。入社してからコツコツ貯めた貯金の100万円を元手に、80歳を過ぎるまで運用し続けて1億円に到達するイメージでしょうか。

では、コツコツ積み立てながら投資するのはどうでしょうか。仮に年利回り8%で複利運用できるとして、30年後の1億円を目標にした場合、毎月7.1万円積み立てていかなければなりません。生活費も必要だし、月々の給料から7.1万円を投資に回すのは厳しいという人は多いのではないでしょうか。

投資で1億円を手に入れるには、判断力とマイルールが必要

そもそも投資にはリスクがつきもので、せっかく投じたお金がゼロになってしまう可能性もなくはありません。先に挙げた仮定では、年利回り8%が30~60年間続くものとして計算しましたが、実際には想定通りになるとは限りません。

やはり、投資で1億円を手に入れるのは、優れた選択眼や独特の高い投資技術を持ち合わせた特別な人に限られるというイメージを持ってしまいます。

たしかに選択する銘柄や、買ってから売るまでの保有期間などの投資スタイルは人それぞれですが、実際に投資で1億円以上の資産を作った人の話を見聞きしていると、いくつかの共通ポイントが浮かんできます。

1.投資のマイルールを持っている
一口に投資のルールといっても様々です。銘柄選びの基準、PER(株価収益率)や配当利回りなどの投資指標、株価の上限・下限、保有する銘柄数、投資に回す金額、値下がりしたときに損失を確定させる損切りルール、etc……。1つでも2つでも、自分なりのルールを決めたら徹底的に守る人が多いようです。

2.冷静な投資判断ができる
どんなに慎重に選んでも、相場が好調なときもあれば不調なときもあります。かつてのバブル崩壊やリーマンショック級の相場の大暴落が起これば、保有資産へ大きなダメージを受けることに冷静ではいられなくなるのが通常です。1億円を超える資産を作れる人は「己の感情と相場は真逆」であることを知り、常に冷静に投資の判断をしているそう。先に挙げたルールを作っておくのも冷静に投資を行える秘訣かもしれません。

3.時間を味方につける
投資でお金を増やすための基本として、得た利益を再投資してさらなる利益を得るという複利効果があります。つまり、お金がお金を生み出す効果です。前述した1億円を作るための仮定の計算では、「利回り(パフォーマンス)」と「期間」を用いましたが、複利効果の大小はこれら2要素の大きさで決まります。つまり、

「複利効果」=「利回り(パフォーマンス)」×「期間」

と表すことができます。1億円を作っている人は、利回りはさることながら、時間も味方につけています。投資判断に迷わない、長期投資をするというのも時間を味方につけることに繋がるようです。

4.投資で大きな利益を出しても生活スタイルを変えない
投資で1億円以上の資産ができたと聞くと、さぞかし豪勢な生活をしているに違いないというようなイメージを抱くのではないでしょうか。しかし実際は、贅沢は控えめ。普段から節約に気をつかっている人が多いような印象を受けます。根っからのお金好きの人が多く、儲けたお金を贅沢品に変えるよりも、お金の価値を増やしていくことに喜びを感じる人が多いのかもしれません。株主優待品も多くもらう人がほとんどですから、これらの優待品で満足しているようですね。

1億円にも挑むためのカギは、長期投資と社会の変化を感じ取る力

節約に励み、ルールを決めて、迅速に判断しながら長期投資をすることが1億円という巨額な資産形成に挑むためのセオリーだと言えそうです。

ただし、「長期投資」の意味については正しく知っておきましょう。長期投資は同じ対象に投資し続けることではありません。相場や価格の変動の様子を見ながら、状況に合わせて売買を繰り返して資産を作り続けていくのが長期投資の本来の意味。社会の変化を感じ取り、一歩先を読んで「今後伸びそう」と感じる銘柄を選んで投資を続けていけば、1億円にも挑めそうですね。

とはいえ、高いパフォーマンスを得られても30~60年間という長い期間がかかるのが通常ですから、投資でお金を増やそうと思ったら、時間を無駄にすることなく「まずはやってみる」ことが最も大切なのかもしれませんね。

著者プロフィール:續恵美子

女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」認定ライター
ファイナンシャルプランナー(CFP)

生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢見て退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに――。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。生きるうえで大切な夢とお金のことを伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などで活動している。エフピーウーマンでは、女性のための無料マネーセミナー「お金のmanaVIVA(学び場)」を無料開講中!