社会に出て働くようになってから、頻繁に耳にするようになった「元請け」「下請け」という言葉。みなさんは、両者の違いをご存知でしょうか。

  • 元請けと下請けの意味の違いを理解していますか?(写真:マイナビニュース)

    元請けと下請けの意味の違いを理解していますか?

本稿では、元請け、下請けとは何なのか、そのメリット・デメリットとあわせてお話しします。

元請けと下請けの違い

元請けとは、発注者から直接仕事を請け負うことです。元請けした業者・人を「元請業者」「元請負人」といい、それぞれ単に元請けとも呼ばれます。

これに対し、下請けは、元請業者あるいは元請負人の引き受けた仕事の全部または一部を、さらに請け負うことです。下請けする業者・人のことを「下請業者」「下請負人」といい、それぞれ単に下請けとも呼ばれます。

つまり、元請けと下請けの違いは、誰から仕事を請け負っているかという点になります。元請けは発注者から、下請けは元請けから仕事を請け負っています。

例えば、ホームセンターに水回りのリフォームを依頼すると、実際に家に来るのはホームセンターの従業員ではなく、町の設備屋さんだったりしますね。ホームセンターは、必要な資材等をそろえることはできても、その従業員では水回りの工事はできません。

そのため、その専門的知識と技術を持った職人さんに依頼するのが一般的です。この場合、ホームセンターが元請け、設備屋さんが下請けという関係になります。

また、大手電機メーカーA社が、マンションのエアコン設置工事300台を受注したとします。A社は、エアコンや工事資材をそろえることもできますし、技術者もいます。しかし、期日までに完了するだけの人員が足りないため、うち100台分についてはB社に依頼しました。この場合は、A社が元請け、B社が下請けです。

元請けのメリット・デメリット

元請け・下請けの関係は、元請けに多くのメリットをもたらします。その一部をご紹介しましょう。

まず、依頼者への請求価格を自由に決められる点です。例えば、資材や下請業者に支払う工賃などの費用が15万円かかるとします。5万円の利益を出したい場合には、依頼者に対して20万円の価格を提示すればいいのです。

また、依頼者から「20万円でお願いします」と依頼された場合には、下請けに支払う工賃を抑えれば抑えるほど利益が生まれるのです。

さらに、前述のエアコン工事の事例からもわかる通り、自社だけでは無理な規模の工事を引き受けることができるのも、下請けを持つ元請けのメリットといえるでしょう。下請けがいなければ、希望に添えない旨を依頼者に申し出なければならず、結果、受注できなかったかもしれません。

一方、元請けのデメリットとしては、自社だけでなく、下請業者の仕事に対しても責任を負わなければならないことです。下請けに出した以上、「それは下請業者がやったことなので、うちには関係ありません」という道理は通りませんね。

下請業者に頻繁にミスをされては困るため、下請業者の選定は慎重に行う必要があるでしょう。

下請けのメリット・デメリット

下請けの最大のメリットは、営業に要する労力と費用を抑えることができるという点です。仕事を受注するためには、営業マンによる直接的な営業活動はもちろんのこと、広告を出したりCMを流したりして、多くの人に自社を知ってもらう必要がありますが、それには莫大な費用を投じなければなりません。

そのため、どうしても有名な企業や規模の大きな会社に仕事の依頼が集中しがちで、小さい会社に直接依頼が来ることは少ないのが現状です。しかし、大きな会社の下請業者となることで、一定の業務量を確保することができるのです。

一方、下請けのデメリットは、常に価格競争を強いられてしまうことです。元請けのメリットでもお話ししましたが、元請けは少しでも安い価格で請け負ってくれる業者を求める傾向にあります。

そのため、仕事を貰う立場にある下請けは、元請けの言い値で請け負わざるを得ないわけです。いかに、下請けが価格面で不利な立場にあるのかが分かりますね。

元請け・下請けという関係性による注意点

元請けは、依頼者に対する請求価格を自由に決めることができますが、ある程度の相場を意識して決める必要があります。

元請が下請けに対して安さを求めるのと同様に、依頼者もまた、少しでも安い業者に発注しようと考え、数社からあいみつを取るのが一般的です。そのため、金額が高いと他の業者に仕事が回されてしまいます。あまり欲を出すと受注できなくなってしまうので、注意しましょう。

また、下請けとなる工事業者を依頼主が自ら指定してくる場合もあります。こういったケースでは、元請けは依頼主から安さを求められる上に、安い下請業者を選ぶことができず、価格面で厳しい立場になることもありますので、頭に入れておきましょう。

日本の下請業者の現状

ものづくり大国日本を支えてきたのは、言うまでもなく、下請業者として働く小さな町工場です。どんなに小さな部品であっても、正確かつ丁寧に仕上げる高い技術力は、日本が世界に誇れるものであり、それなりの対価が支払われるべきなのです。

しかしながら、元請けとなる大企業は、費用を少しでも安く抑えるため、日本よりも物価や賃金の安いアジア諸国の工場へと下請け先を移行するようになりました。その結果、日本の町工場も価格を下げざるを得ず、度重なる値引き要請から採算が取れないような仕事も引き受けなければならないことも。

安さを求められる社会である以上、下請業者の厳しい立場を変えるのは困難なことかもしれません。それでも、その高い技術力と発想力でもって唯一無二のモノを生み出し、成功を収めている工場もあると聞きます。そんな町工場が少しでも増え、その成果に相応しい評価がなされる社会になることを期待したいですね。