続いて、自転車保険の加入内容や方法などについてご説明します。被害者だけでなく加害者にもなりうる自転車事故に備えるためにも、ぜひ参考にしてください。

  • 自転車事故の増加、高額な賠償請求も

自転車保険とは

自転車保険は以下のリスクに備えることができます。

  • 自分が自転車事故でケガをしたときに補償してくれます。
  • 自転車事故で相手にケガを負わせたときの賠償責任を補償してくれます。
  • 他人の物を自転車事故で壊してしまったときの損害賠償を補償してくれます。

また保険会社によっては、賠償責任が発生した際に話し合いを代行してくれる「示談交渉サービス」や、示談交渉ができない場合に弁護士に依頼する際の費用を負担してくれる「弁護士費用特約」があります。他にも、自転車事故で走行できなくなった場合に自転車を運搬してくれる「自転車ロードサービス」なども追加で付帯できます。

自転車事故の賠償金額が高額化している

自転車保険への加入が国で推奨されている背景には、自転車事故による加害者側への高額な賠償金額の請求が発生していることがあります。自転車と歩行者の事故は近年あとを絶たず、被害者が死亡または重い後遺障害が残るなど重大な事故になり、賠償請求額も高額になってきているからです。

過去に、当時11歳の小学生男児が乗った自転車が高齢女性と正面衝突し、小学生の保護者が9,500万円の賠償を命じられました。この被害女性は今も意識が戻っておりません。

高額すぎるのではとの声もありましたが、男児の普段からのスピードを出して坂を下るなど交通ルールに反した行為や、ヘルメットの未着用などに対し、保護者の監督義務が問われた結果とも考えられているようです。

自動車には対人事故による損害賠償が補償される自賠責保険の加入の義務化が強制的に定められており、この保険に入っていないと車検も受けられません。また自賠責に加入せずに運転した場合は罰則があります。

一方自転車は、自動車の自賠責保険のように強制ではないものの、自転車保険の義務化の地域は徐々に拡充しています。対歩行者の事故が増えつつある今、国としては自転車保険の義務化拡大に向けて動いています。

保護者としては加害者が小学生の場合でもその責任があることから、きちんと交通ルールを教えるのと同様に、自転車保険の加入を考えるべきでしょう。

自転車保険の加入方法

自転車保険は地域によって義務化されています。ご自身のお住まいが義務化、または努力義務化なのか一度確認してみてください。保護者の方は学校などから案内があるはずです。自転車保険は多数の保険会社でも扱っていますが、保険会社の代理店などにわざわざ行かなくても、簡単に加入することができるのがいいところです。

1. 自転車購入時に加入

自転車保険はサイクルショップや自転車安全整備店などで、自転車を購入した際や点検に出した際にお店で加入できます。

自分の自転車に自転車向け保険が付帯されていることを示す「TS」マークのシールが貼っている方もいるのではないでしょうか。有料で整備を受けた際にはこの「TS」マークのシールをもらえ、青色か赤色かで補償内容が違います。保険料は整備料金に含まれているため、別途支払う必要はありません。

  • 「TS」マーク、公益財団法人 日本交通管理技術協会より

2. スマートフォンを活用して加入

各保険会社は、契約手続きも簡単で時間も短縮できるため、スマートフォンを使ってwebでの加入をおすすめしているようです。

3. コンビニエンスストアで加入する

今や、コンビニエンスストアでも保険の契約が可能です。自転車保険だけでなく、気軽に入れる1dayゴルフ・レジャー保険・そしてバイク保険なども加入ができます。自転車で走行中に「保険に入ってなかった!」と気づかれたときは、コンビニでササっと契約ができますね。

4. その他

他には、保険会社の窓口などに行き加入する方法があります。補償内容などを詳しく聞きたい・疑問・質問がある方は、しっかりスタッフさんに聞いてから加入したほうがいいでしょう。

重複加入に注意

自転車事故は自転車保険でしか補償がされないわけではありません。自転車事故のケガに備えるため必要なのは「傷害保険」、事故の賠償に備えるのは「個人賠償責任保険」が必要です。

これらの保険は、自動車保険や火災保険へ追加できたり、クレジットカードの特約などに付帯されていたりします。また、共済などでも取り扱っています。ですので、ご家族が車を所有されている方や賃貸住宅の方、共済に入られている方は、自動車保険や火災保険の契約内容を一度見直してみてください。

もし損害の補償が重複してしまった場合、ひとつの保険会社からしか保険金がでませんので注意が必要です。無駄に保険料を払わないためにも確認しましょう。

  • 自転車保険の種類 国土交通省より


長く親しまれてきた自転車ですが、近年の自転車事故の状況や、加入の義務化が広がるにつれ、利用する私たちも危険な乗り物だという認識を持たなければならなくなりました。

これからサイクリングに最適な季節になりますから、自転車を利用する際にはリスクに備えつつ、交通ルールをきちんと守り、気持ちよく走行しましょう。

執筆者プロフィール:荻野 奈緒美(おぎの なおみ)

(株)ライムライト所属・フリーアナウンサー/CFP認定者

WOWOW契約アナウンサーを経て、その後フリーに。テレビ番組や講演会・イベントでのMCなど多方面で活躍。経済番組に出演したのをきっかけにFP資格を取得し、FPとしても活動中。現在(株)MILIZEにてシニアファイナンシャルコンサルタントとして携わっている。

監修:株式会社 MILIZE

金融機関向けのソフトウエア開発やコンサルティング業務を手掛けるほか、個人向けの人生シミュレーションプラットフォーム「MILIZE」を提供。給与や生活費のデータを入力すれば、現時点の生活費などの診断に加えて、将来の収支予測なども提示する。