円谷プロダクション製作のウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマンタイガ』が、2019年7月6日よりテレビ東京系で放送されることが明らかとなった。2013年に放送された『ウルトラマンギンガ』から始まる「ニュージェネレーション」と呼ばれるウルトラマン新世代シリーズの7作目にあたる『ウルトラマンタイガ』は、これまでのシリーズにない斬新なアイデアや、魅力的なヒーローキャラクターが盛り込まれている。

本作で特に注目したいのは、主人公である工藤ヒロユキ(演:井上祐貴)の肉体に、それぞれ出身の異なる"3人のウルトラマン"が宿るという設定だろう。タイトルにもなっている「ウルトラマンタイガ」は多くのウルトラ兄弟を地球へ送り出した"光の国"ことM78星雲で、1973年に地球で活躍したウルトラマンタロウの息子であるという。パワーを活かした戦いを得意とする「ウルトラマンタイタス」は、1979年に地球へ来たウルトラマンジョーニアス(『ザ☆ウルトラマン』)の故郷・U40(ユーフォーティ)出身。そしてスピード系の戦士「ウルトラマンフーマ」は、2016年のウルトラマンオーブや、2018年のウルトラマンロッソ、ウルトラマンブル(『ウルトラマンR/B(ルーブ)』)が光の戦士となる力を授かった惑星O-50(オー・フィフティ)出身であることが判明している。

4月18日夕方の情報解禁とともに、ネットでは熱心なウルトラマンファンからさまざまなリアクションが飛び出した。特に、複数の形態へとタイプチェンジするのではなく、人格の異なる3人のウルトラマンに変身するという斬新なヒーロー設定への期待や、タイガが「ウルトラマンタロウの息子」である点についての興味、そして1979年にアニメ作品としてテレビ放送され、今年(2019年)で40周年を迎える『ザ☆ウルトラマン』の「U40」設定が使われていることへの驚きが、特に大きいようだ。ここでは、来たるべきウルトラマンタイガの地球での活躍に期待を込めつつ、『ウルトラマンタロウ』と『ザ☆ウルトラマン』の概要について、極めて簡単ながらご説明してみたい。

ウルトラ6番目の兄弟『ウルトラマンタロウ』とは

『ウルトラマンタロウ』は、1973年4月6日から1974年4月5日まで、全53話が放映された特撮テレビ作品である。『ウルトラマン』(1966年)の最終回に登場したゾフィーを長男として、『ウルトラセブン』(1967年)『帰ってきたウルトラマン』(1971年)『ウルトラマンA(エース)』(1972年)の歴代ヒーローをすべて「兄弟」としてまとめた"ウルトラ兄弟"という設定が子どもたちに好評を博したことを受け、ウルトラマンシリーズの決定版として『タロウ』が生み出された。当時の雑誌記事では、ウルトラ兄弟はみな「兄弟のように仲がいい」だけで、本当の兄弟ではないことが明言されていた。『A』の第26、27、38話に登場した「ウルトラの父」は、銀河宇宙の平和を守る「宇宙警備隊」の大隊長で、隊長のゾフィーほかウルトラ兄弟の"師"といえるポジションだったのだが、『タロウ』ではさらに「ウルトラの母」を創造し、ウルトラマンタロウはウルトラの父とウルトラの母との唯一の"実子"であるという設定が作られた。

主題歌の歌詞(作詞:阿久悠)にもあるとおり、ウルトラの父、ウルトラの母の存在を強く打ち出したタロウは、まさにウルトラ兄弟最強のヒーローとして子どもたちに強い印象を与えている。タロウの全体のデザインは、ウルトラ兄弟の中でも人気の高いウルトラセブンがベースとなり、そこにウルトラの父で好評だった「ツノ」が着けられ、スマートさと力強さをあわせ持つヒーロー像が志向された。

  • 『ウルトラマンタロウ』放送開始からすぐ(1973年5月)に発行されたケイブンシャの『怪獣怪人大全集4 ウルトラマン大百科』。18枚の折り込みシート、特製ポスター、怪獣百科辞典で構成されており、現在では貴重なスチール写真が満載(著者私物)

ウルトラの母を筆頭に「ウルトラファミリー」の総登場、主人公(東光太郎)のさわやかなイメージ、ユニークかつユーモラスでありつつ怪奇性に満ちた怪獣たちの強烈な個性、ハードなSF風味ではなく"奇想天外""自由奔放"のほうに振り切った「夢とロマンに満ちた物語展開」、怪獣や宇宙人を迎え撃つZAT隊員に見られるアットホームな空気、円谷プロ生え抜きのスタッフ(佐川和夫氏、山本正孝氏、大木淳氏ほか)や東映作品でも活躍した矢島信男氏らによる"珠玉"の特撮映像、ウルトラマンシリーズ初登板となる日暮雅信氏による陽気さと不気味さを使い分けた傑作BGM群、子どもに"夢見る楽しさ"と"現実世界を生き抜く厳しさ"の両方を教えるドラマの優れたメッセージ性……など、『ウルトラマンタロウ』にはさまざまな魅力が詰まっており、当時膨大な数が製作・放映されていた「特撮・アニメ」ヒーロー作品の中でも上位の人気をキープしていた。

『ウルトラマンタロウ』のテレビ放送開始から46年が経った2019年。子どもたち、その親、さらに祖父母と、3世代にわたってウルトラマンやウルトラ怪獣のファンであるという家庭も多くなった。『タロウ』のプロデューサーを務めた故・熊谷健氏の談話によれば、ウルトラ兄弟やウルトラの父、母を登場させることで、子どもたちに「兄弟愛」「家族愛」のすばらしさを伝えたいという思いがあったそうだ。

2009年に映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説THE MOVIE』でデビューした「ウルトラマンゼロ」はウルトラセブンの息子という設定が大きな話題となり、セブンとゼロの親子の絆を感じさせるやりとりは、作品を超えて何度も行われた。今回のウルトラマンタイガも、父ウルトラマンタロウとの親子関係が何かドラマに重要な意味を与えるものになっているのだろうか。『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル』(2019年)にも登場した邪悪な「ウルトラマントレギア」が、かつてタロウの親友だったという"過去"の部分も気になるところだ。また、タロウの実父であるウルトラの父にとってタイガは"孫"にあたるわけで、すなわち「ウルトラの祖父」と呼ばれることになるのだろうかと、今から余計な心配をしてしまいそうになる。父から勇気と強さを、母から愛と優しさを与えられたウルトラマンタロウ。その息子・タイガがこれからどのような活躍をするのかが、ひたすら楽しみである。

ウルトラマン再ブーム~『ザ☆ウルトラマン』の誕生

『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』(1974年)と4年間続いてきた"第二期ウルトラマンシリーズ"は『レオ』最終回(1975年3月)で終了を迎えたが、このとき第一期シリーズ『ウルトラQ』(1966年)『ウルトラマン』『ウルトラセブン』に強い影響を受けた世代が大人に成長しており、これら第一期の作品群を中心にしたメイキング記事や作品研究記事を若者層の読む書籍や雑誌などで発表する機会が増えてきた。その一方で、同じスタッフの手によって小学館『てれびくん』『コロコロコミック』『学習雑誌(小学一年生~小学六年生)』でウルトラマンからウルトラマンレオまでの"ウルトラ兄弟"全般を取り上げ、ふたたびブームを巻き起こすという動きが見られた。

漫画家・内山まもる氏が学習雑誌に描いていたかつてのウルトラマンコミックの再録が『ザ・ウルトラマン』のタイトルで『コロコロコミック』に掲載されるとすぐに大評判となり、作品で実際に使われた音楽テープを商品化した(当時は画期的な出来事だった)キングレコード「ウルトラ・オリジナルBGMシリーズ」が好調なセールスを記録し、早朝や夕方にウルトラマンシリーズの再放送が繰り返し行われるなど、1978年から1979年にかけ、だんだんと「ウルトラマン」ブームの盛り上がりが拡大してきた。ポピー(現バンダイ)から『ウルトラマン』『ウルトラセブン』のキャラクターやメカを中心にした「新商品」が作られ、子どものコレクション欲求を高める怪獣ソフビ人形シリーズ「キングザウルス」が発売されたのもこの時期である。再放送、レコード、玩具、書籍、コミックなど、日常にウルトラマンと怪獣があふれかえり、朝から晩までウルトラマンおよびウルトラ兄弟のことを考えていた少年特撮ファンにとって非常にエキサイティングな時代だと言っても問題ないだろう。

  • ウルトラマン再ブームを盛り上げた小学館の絵本「小学館のテレビ名作/帰ってきたウルトラ兄弟」表紙。ウルトラマンタロウが大きくレイアウトされている(著者私物)

1978年から1979年にかけて子どもたちを中心に盛り上がったウルトラマン再ブームを受け、ついに「新作ウルトラマンシリーズ」の企画が立ち上がった。通常ならば従来と同じく実写特撮作品として"復活"してもいいところだが、当時は『宇宙戦艦ヤマト』(テレビシリーズは1974年放送/劇場映画は1977年に公開)に代表される、若者層を中心とした空前のSFアニメブームが巻き起こっており、これの影響もあって「アニメーション表現によるウルトラマン」が誕生することになった。

『ザ☆ウルトラマン』と題された新作ウルトラマンは、実写作品におけるウルトラ兄弟の故郷「M78星雲」ではなく、ウルトラマンレオとアストラの今は亡き故郷「L77星」でもない、まったく新しい「ウルトラの星」として「U40(ユーフォーティ)」という惑星が設定された。U40の戦士の中でも特に優れているウルトラマンジョーニアスは、地球に訪れた危機を察知していくつかの接近遭遇を試みた上、科学警備隊のヒカリ超一郎と合体。ふだんはヒカリ隊員の姿でいるが、地球を襲う巨大怪獣や侵略宇宙人と戦う際には、星型の変身アイテム「ビームフラッシャー」を額にあて、ウルトラマンに変身~巨大化する。

竜巻き怪獣スパイラル(第2話)や雲怪獣レッドスモーギ(第4話)、岩礁怪獣アイランダ(第18話)のように実写ではなかなか表現するのが難しい奇抜な形状の怪獣をぞくぞくと生み出したり、日本だけでなく世界各地や宇宙空間までウルトラマンと科学警備隊の活躍する舞台を拡大したり、従来の実写ウルトラマンシリーズとは一味違った「アニメーションならではの世界観、表現方法」を打ち出した本作。その一方で、主題歌を含む音楽に『ウルトラQ』『ウルトラマン』の宮内国郎氏を起用(中盤からは、『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』『ウルトラマンレオ』の冬木透氏が参加し、追加音楽を作曲)したり、『ウルトラマン』でイデ隊員役を演じた二瓶正也が科学警備隊・トベ隊員の声優を務めたり、さらには歴代の人気怪獣たちがアニメになって登場(第8話のバルタン星人、第27話のレッドキング、アーストロン、ゴキネズラ、アボラス、バニラ)というように、かつての実写ウルトラマンを愛するファンに対するサービスもあった。

『ザ☆ウルトラマン』は「ウルトラマンは実写特撮でないと……」というファンの固定観念を打ち崩し、アニメというフィールドでそれまでにない世界観のウルトラマンを作り上げたことによって、ウルトラマンシリーズの可能性を広げる役割を果たした。「アニメによるウルトラマン」という『ザ☆ウルトラマン』の後継者としては、ウルトラヒーローと怪獣を可愛くディフォルメしたマスコットキャラクターたちの活躍を描いた『ウルトラマンキッズのことわざ物語』(1986年)や、アメリカのハンナ・バーベラ・プロと円谷プロの合作映画『ウルトラマンUSA』(1989年日本公開)、コミック作品を映像化したオリジナルビデオ『ウルトラマン超闘士激伝』(1996年発売)など、その後もいくつかの作品が生み出され、着実に成果を挙げている。近作では、ウルトラマンシリーズ史上初となる3DCGアニメ作品『ULTRAMAN』(2019年配信)がNetflix独占配信作品として製作され、日本だけでなく海外のファンからも興味を集めているという。

放送開始から40年という節目の年である2019年、『ザ☆ウルトラマン』で使われた「U40」の設定がふたたび用いられ、最新作『ウルトラマンタイガ』で活用されるというのは、『ザ☆ウルトラマン』ファンはもちろん、そうでなくとも非常に興味深い。実写特撮作品の『タイガ』に、果たしてアニメの世界から『ザ☆ウルトラマン』のU40ウルトラマン……ジョーニアス、エレク、ロト、アミア、大賢者、そして他のウルトラ戦士たちが姿を見せるチャンスはあるだろうか。すべては7月6日から始まる『ウルトラマンタイガ』のこれからに期待をかけたいところである。

  • 『ザ☆ウルトラマン』は小学館と講談社の2社が中心となって出版展開を行った。写真は講談社『テレビマガジン』1979年7月号表紙。ハリウッドの最新特撮技術で現代に甦った『スーパーマン』やリバイバル人気が高まってきた『仮面ライダー』、そして誕生25周年を迎えた『ゴジラ』の写真が大きく、現役ヒーローである『バトルフィーバーJ』や『機動戦士ガンダム』『ルパン3世』の姿も見える(著者私物)

  • 講談社『テレビマガジン』1979年8月号付録「ザ☆ウルトラマン変身超能力ブック」表紙。アニメ作品の利点を活かし、本編フィルムの分解写真を細かく見せるという趣向。渡辺正美氏の画による本誌グラビア用の迫力あるイラストも縮小掲載されている(著者私物)

  • ポピー(現バンダイ)の『ザ☆ウルトラマン』関連商品カタログ(1979年)表紙。キャンペーン用にウルトラマンのスーツが製作されている。目に電飾の入った別スーツも存在し、こちらは1979年7月公開の映画『ウルトラマン怪獣大決戦』で怪獣ベドランと格闘戦を繰り広げた(著者私物)

  • ポピー商品カタログより。放送が始まって間もないころは「ウルトラマン」とだけ呼ばれていたが、やがて「ウルトラマンJ(ジョー)」という名称が明かされた。そしてテレビ第19~21話「これがウルトラの星だ!!」3部作の中で「ウルトラマンジョーニアス」という"本名"がヒカリ超一郎の知るところとなり、以後「ジョーニアス」がポピュラーな名前として定着することになる(著者私物)

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