――三原は番組が中盤を過ぎたころ、第33話からの登場となりました。序盤のオルフェノクに怯える三原から、デルタギアを手にして戦うようになった三原へと、見違えるような変化を遂げましたね。

初登場から最終回までのエピソード数がだいたい分かっていたので、その短い話の中で三原をどのように成長させていくかというのは、逆算して演技の作り方を考えました。井上敏樹さんの脚本がどのように書かれているのかは分からなかったのですが、段階を踏んで三原の成長を演じていけば、お話の流れもそうなっていくだろうと。改めて思いますけれど、毎回の脚本がとてもいい。自分の中で考えていたことを、ただただ脚本のセリフに乗せて演じさせていただきました。演技については、ある程度自由な形でやらせてもらえて、スタッフのみなさんには感謝しています。

――三原の初登場回を演出された長石多可男監督は『ゴーゴーファイブ』でもご一緒されていましたし、お互いにやりやすかったのではないでしょうか。

そうでしたね。何をやるにしても、僕の自由にやらせてもらった感じでした。最初に現場に入って、ぜんぜん知らない監督だとこちらもさすがに気を遣いますけれど、長石さんはずっと『ゴーゴーファイブ』でお世話になっていた監督ですから、僕が「こういう感じで」と言ったら監督が「それでやれよ」って(笑)。

――それだけ、長石監督が原田さんの存在感や演技力に信頼を置いていたってことですね。

1年間一緒にやってきたこともあって、話しやすかったですね。でもときどき、なんでこういうところを撮っているんだろうって、監督の意図が読めないときがあったんです。それでも、完成した映像を観ると「あのとき撮っていたのはこれか! こういう画面が作りたかったのか!」と気づいたりする。映像へのこだわり方は、まさに天才的でしたね。絶対に手堅い作りにはしなかったように記憶しています。その後も「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」を観ていると、「長石組」の回は画面を観るだけでわかりましたから。

――三原はデルタフォンに「変身」の音声を認識させた後、デルタムーバーにセットすることで変身を完了しますが、あの「変身」というかけ声が、最初の小声からだんだんと気合いの入った声に変化していったのがすばらしかったですね。

そういうのも、「成長していくヒーロー」としての三原を表現した部分です。第35話で三原が「やってみるさ。俺に何ができるかわからないけど」と言いながら変身するシーンがとても気に入っているのですが、この後も三原はけっこうへこたれているんですね。やっぱり人間って、決意したからと言っていきなり強くなるわけじゃないと思うんです。ただ、少し変わっていく"きっかけ"のようなものをつかんでいく。僕としては死地に赴く兵士のような悲壮感を漂わせた「変身」のイメージです。オルフェノクにやられて死ぬかもしれないけれど、それでも覚悟を決める。声を出してなきゃやってられないよ、という感覚ですね。デルタのスーツアクターをしていた押川(善文)くんや監督とも話し合って、デルタはすんなり戦いに行くのではなくて、少し"溜めて"から相手に向かっていってほしいと要望したんです。