望月:興味深かったのは、塚田さんが打ち合わせのとき「昨日、『インディ・ジョーンズ』を観たんだけど……」と、次のストーリーを『インディ・ジョーンズ』風にしようと思い立ったときのことです。

塚田:僕としては、次のエピソードの参考になると思って『インディ・ジョーンズ』を観たのに、脚本の三条(陸)さんはどうも、僕が気まぐれで観た映画のネタを自分に押し付けてきたなと思っていたふしがあるんだよね(笑)。

望月:結局その『インディ・ジョーンズ』は第45、46話の設定に活かされました。この時以外にも、塚田さんが「○○(作品名)みたいな……」と具体的なタイトルを出してやりたいことを説明されていたのは印象的でしたね。誰もが知っている作品だと、タイトルを出せば一発でイメージが伝わります。こういう雰囲気にしたいんだ、という思いがビジュアルと共に最初から明示されている。これがチーフプロデューサーとして大事なことなんだなと思いました。特に自分が『宇宙戦隊キュウレンジャー』(2017年)でチーフをやったとき、改めて感じたことですね。

塚田:それはいい話だねえ!

望月:実際にそのポジションについたことによって「先輩たちはやっぱりすげえなあ」と思ったわけです。

塚田:プロデューサーという仕事はいろいろなことをやらなければなりませんが、チーフプロデューサーについては、"作品のビジョンを示す"という部分が大事だと思っています。まず「これをやりたい」という明快なビジョンを示して、それを実現するために必要なもの、必要な人材をいかにして「連れてくる」ことができるか。それがプロデューサーの能力なんですね。最初のビジョンをうまく伝えられずにブレてしまうと、うまくいきません。ディスカッションをしていくうちに、この部分は太くするべきだとか、ここはオミットしようということが"見えてくる"んです。

――そんな塚田さんと望月さん、そして『仮面ライダービルド』(2017年)の大森敬仁さんたちがプロデューサーを務めた映画『GOZEN -純恋の剣-』の話題に移りたいと思います。以前の取材では塚田さんと大森さんにお話をうかがいましたが、望月さんも企画の初期から携わっていらっしゃったそうですね。

望月:そうですね。最初の段階から参加していまして、「時代劇」で行こうと方向性が固まる前から、いくつか企画案を出しています。

――『GOZEN』ではまず、「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」の各シリーズに出演していた俳優さんたちが大勢キャスティングされているのが目をひきます。

  • 上段左から武田航平、犬飼貴丈、矢崎広、元木聖也、下段左から井俣太良、前山剛久、井澤勇貴、松本寛也

塚田:キャストについては、主に大森が手がけた『仮面ライダービルド』や『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)のカラーが強いですね。"大森門下生"というか(笑)。

望月:映画の方のキャスティング方針として、主演の犬飼(貴丈)さんをはじめ、今まで東映の特撮ヒーロー作品で活躍した方にお声がけしようというのは、企画の初期段階から構想されていたことでした。ただ、ヒロインについては「特撮ヒーロー」の流れから外れて、ほかのところから連れてきたい、という話になりまして。がんばった結果、優希美青さんという素晴らしい方が出演してくださいました。もうスタッフ一同、大絶賛。声を大にして「僕が連れてきました!」と言っていいかなって(笑)。

塚田:キャスティングに関しては、『ビルド』の面々を軸にして組んでみようということになり、犬飼さん、武田(航平)さんにお声がけをして、今回の「映画」のメインに据えました。また「映画」と「舞台」が連動する企画「東映ムビ×ステ」なので、舞台『GOZEN -狂乱の剣-』でのメインキャストも映画に出てきます。矢崎広さんや松村龍之介さんのように、舞台で人気のある俳優さんに出ていただいたのも、狙いのひとつです。

望月:さらに、特撮作品の出演経験があって、なおかつ舞台でも活躍している俳優を起用も狙っていきました。『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)の元木聖也さんや、『仮面ライダーウィザード(2012)』の前山剛久さんなんて、理想的ですよね。

塚田:特撮作品や舞台で活躍している魅力的なキャストが大勢集まって、今回「御前試合」というシチュエーションで互いの技を競い合うのですが、キャッチコピー「戦いの数だけ秘められた物語がある」のとおり、映画『純恋の剣』では犬飼さんが演じる青山凛ノ介の戦いに焦点を当て、そのバックボーンにあるドラマを描きます。ストーリーは『ロミオとジュリエット』を下敷きにして、障害を乗り越えて惹かれあう男女のお話で行こうと決まりました。ヒロインは病に身体を冒された「儚さ」や「可憐さ」を備えた女性なのですが、そんな中で優希さんの名前が出て「ああ、『あまちゃん』の小野寺ちゃんか!」と(笑)。それはアリだね! いいね!と石田(秀範)監督にプレゼンしてみたら乗ってくださって、彼女で行こうとなりました。

望月:話題先行のキャスティングだったらいくらでもできるんですけれど、芝居のウエイトが高い大事な役ですので、優希さんにヒロインを演じてもらえてよかったです。